声優・石黒千尋に聞く“異色のVTuberデビュー”の裏側 マルチな活動の軌跡と根底にある「ものづくりにかける想い」
石黒千尋が“VTuber”として紡ぐストーリー
ーー独立というご自身の変化だけでなく、コロナ禍による動画プラットフォーム全体の盛り上がりなど環境の変化もあったかと思います。その辺りも踏まえて、どのように現在の活動に至ったのかお聞かせいただけますか?
石黒:事務所に所属している時は、ファンの方と直接顔を合わせてのイベントができていたんですが、コロナ禍で一気に難しくなりましたね。独立してからは「結月ゆかりMμ(ミュー)プロジェクト」を立ち上げて動いていたのですが……。
ーーリアルなライブイベントがなくなってしまった。
石黒:はい。リアルなライブとVRライブを予定していたのですが、リアルなライブが二回キャンセルになってしまい、まずはVRライブをメインで作っていくという事になりました。この事でしばらくは対面で活動できる機会が少なくなるなと肌で感じましたね……。そのころ、実況者さんだけでなく、芸能人、声優がYouTubeに動画をアップし始めていて、「この先はインターネット配信やVRを通して世界へ発信するのも当たり前になるんだ」と感じました。
また自分自身、結月ゆかりMμのVRライブの制作に携わるうちに、自分の表現に使えるようなアイディアがたくさん出てきたり、いろんなクリエイターさんとも知り合えたことで、やりたいこと・できることが増えてきたんです。ノウハウが蓄積されてきたし、自分の環境も整ったので、一念発起してVTuberとしてデビューさせていただきました。
ーー配信でもお話しされていましたが、VTuberという文化が好きだからこそ、今回の“VTuberデビュー”も「バーチャルYouTuber」ではなく「VoiceTuber」としてのVTuberだそうですね。
石黒:そうなんです。私はバーチャルの姿に名前がついているわけではなく、自分自身の「石黒千尋」という名前にバーチャルのアバターがついた状態なので、これは「バーチャルYouTuber」ではないだろうと(笑)。しかも声優として活動してきて、自分の名前のそのままでVTuber活動というのは前例もあまりないことなので、これまでにない名乗り方をしようと思いました。声優でもあり、VTuber文化が好きだからこそのVoiceTuberですね(笑)。
ーーそうしてバーチャルの姿を得た現在の石黒さんは一人のタレントでもあり、経営者でもある。今後について色々なことを考えられていると思いますが、そのあたりはどうでしょうか。
石黒:今回の“VTuber化”は、以前から私を知ってくださっている方、またこれから知ってくださる方に、飾らない石黒千尋自身を届けたいという気持ちから始めました。アバターを身にまとうことで、より親しみやすさを感じて頂けたらと…!会社を立ち上げてから私自身は黙々と制作を続けていて、世間から見ると「石黒千尋ってどんな人なの?」「何をしてるの?」という状態。でも、これからの時代は知ってもらう事に価値が生まれる時代。私の人となりを知ってもらって、そこで信頼を得て、商品を買ってもらう時代になっています。
私が現在制作しているVRライブや歌なども、どれだけ思いを込めて作っているか、というのをリアルタイムで見てもらい、そこから興味や関心をもって頂けたらと思います。結月ゆかりMμのVRライブや、音楽制作、動画など、みなさんに届けたいものが沢山ある。そういった発信の場を確立するために今後YouTubeチャンネルをホームとしてしっかりと築き上げようと思いました。
ーーなるほど、石黒さんにとってYouTubeは自身のストーリーを作る場所なんですね。今回VTuberの姿を得ることで変化した部分はありますか?
石黒:いままでは立ち絵で配信をしていたのですが、VTuberになることで瞬きや目の動き、表情の変化を見てもらえるようになりました。ファンの方からのコメントに対して笑ったり反応したりできるので、以前より意思疎通できているなぁと感じています。そういった意味でもVTuberデビューして良かったなと思っています。
ーー今後VTuberになったからこそ出来ることやコラボなど、やってみたいことはありますか?
石黒:以前、リアルでガッチマンさんが出演されていたゲーム実況の番組に出させていただいたことがあって、またいつかガッチマンさんとゲーム実況をしてみたいというのが一つの目標です。
ーーお二人とも活動を経て、最近になってVTuberの姿も獲得した、共通点がありますね。
石黒:ニコニコ動画ゲーム実況の先駆者さんであるガッチマンさんがVTuberの世界でも活躍されて、歌も歌って、イベントを開催して……という一連の流れ……素晴らしいですよね! 個人勢の方だと犬山たまきさんも佃煮のりお先生という社長・イラストレーターの顔も持ってらっしゃって、本当に尊敬できる方なので、いつかコラボさせていただければ嬉しいなと思っています!
石黒千尋の”ガワ”に込めた決意とは
ーーリアルなイベントができるようになったら、考えていることはありますか?
石黒:コロナ禍が落ち着いてきたら、結月ゆかりMμのリアルライブをやるというのはもちろん、石黒千尋自身もリアルのライブやイベントをやっていきたいですね! 現在のVTuberのアバターは私が衣装を着て、歌うことを想定して、現実世界でも実現できるように、あえて人間離れしていないデザインにしてもらいました。私もいつか、このデザインの衣装を着てみなさんの前に立って、顔を合わせてお話をするのが目標ですね! 庭師さん(ファンの名称)と思いっきりハイタッチしたいです!
ーー今後はどのように活動していきたいですか?
石黒:通常どおりの雑談配信やゲーム実況はそうですが、今回のVTuberデビューを機に、リアルな肉体では表現できなかったことにもチャレンジしていきたいですね! VTuberだからこそできることも沢山あると思うんです! 魔法をつかったり、空を飛んだり、変身したり(笑) 。あと、VTuberさんのお友達も沢山増やしたいですね! 大手事務所のVTuberさん、個人のVTuberなどなど、みなさんとも分け隔てなくコラボもできるようになりたいです。
いまの時代だからこそできる事を、楽しくのんびりふんわり発信していく。2次元と3次元を行き来しながら日々進化し続けていく石黒千尋を、これからも一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです!