「誹謗中傷ツイートを印刷するのは辛くて……」 SNS誹謗中傷の裁判例がズラリ並ぶサイト「TOMARIGI」開発の背景を聞いた

SNS誹謗中傷の裁判例が並ぶサイト、開発の背景

 SNSでの振る舞いが問題視される昨今、株式会社カヤックはwebクリエイターの関口舞氏と協働し2月8日、SNS誹謗中傷体験・裁判例の共有サイト「TOMARIGI」をリリースした。SNSの誹謗中傷における裁判例がズラっと掲載。さらには、SNSに関する悩みや不安を投稿できるスペースもあり、各投稿には「気持ちわかるよ」「わたしは味方だよ」といったボタンが設置されているのも秀逸である。

 まさにSNSに疲弊する人たちの“止まり木”なる本サイトがリリースされた背景、思いについて、同社の西植弘氏、株式会社プールサイド代表の関口舞氏に話を聞いた。

誹謗中傷ツイートを印刷

――TOMARIGIをリリースした背景をお聞かせください。

関口舞氏(以下、関口氏):いままでSNSやコミュニケーションサービスを作ってきた立場として、ネットの誹謗中傷に対しては長く問題意識を持っていました。そんな折、自分自身がTwitterで誹謗中傷を書かれました。同じアカウントから複数回にわたって容姿への中傷などが書き込まれて怖い思いをしたのですが、実際自分の身にそうしたことが起こると、どうしたら良いのかわかりませんでした。

――いざ直面すると、どう動いていいのかわかりませんよね。

関口氏:はい。ツイッターの違反報告をしても投稿は削除されず、ネットで調べても「弁護士に相談しましょう」といった記載ばかり。私はいますぐ法的対処をしたいわけではなく、「同じようなことを書かれた人は過去にどうしているのか?」「法的手段をとった場合はどうなったのか?」といった実例を知りたい一心でした。最終的には「これは自分だけの問題ではない」と思い、弁護士さんに連絡をしました。相談のためには、当該ツイートを印刷して事務所に訪問しなければならず、自分への誹謗中傷が書かれたツイートを印刷するのは辛かったです。

「気にしすぎでは?」と自問自答

――必要な行動であってもそれは辛そうですね……。

関口氏:弁護士さんにツイートを見せるとすぐに「これだったら、過去に同じような文言で裁判所が侮辱行為と認めて、開示請求が通っている裁判例があるので、今回も大丈夫ですよ」と言われました。私はこの時まで、「自分は誹謗中傷を必要以上に気にしているのではないか」「自分の心が弱いのもいけないのではないか」といった気持ちがありました。ですが、「私は裁判所が過去に侮辱行為と認めたような行為をされたのか」とわかると、悪いのは傷ついた自分ではないということが改めて実感されて少し気持ちが楽になりました。

――そこで「自分は悪くない」と実感できたと。

関口氏:そうです。また、過去に上手くいった類似事例があることを知り、「いざとなれば法的手段をとることができる」と安心したのと同時に、「もっと早く似た裁判例を知っておきたかったな」とも感じました。後々調べると、裁判例は一般人にも見る権利があることを知り、そこで「困っている人がまずは他の人の事例を見て参考にできるよう、裁判事例を確認できる場所を作ろう」と考え、TOMARIGIを企画しました。

誹謗中傷に関する裁判例

クリエイターからの感謝の声多数

――TOMARIGIをリリースして2~3カ月経過しましたが、感触はいかがですか?

関口氏:SNSでは大きな反響をいただき、「誹謗中傷を受けてしまったときに他の人の事例が見られるのは嬉しい」といった声も多くいただきました。特に創作活動や表現活動をしているクリエイターさんから、「今後活動をしていくうえでTOMARIGIを覚えておきます」といった声が散見された。また、体験談も日々書き込まれており、“共感ボタン”を押してくれる人も多く、「辛い気持ちを打ち明けあって寄り添い合う場所になりつつある」と感じています。

――反対に課題も見えてきましたか?

関口氏:やはり「まだ知名度が足りない」という点です。今後もこうして積極的な発信活動を行いつつ、自治体との連携を進めていくなど、いろいろな形でサイトの認知拡大に取り組んでいきたいです。とは言え、各自治体のSNS誹謗中傷に関する独自条例化などの後押しもあり、各種メディアからの取材依頼もいただいています。地道な活動ではありますが、少しずつ認知されて行くように活動していきます。

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