『スターフォックス64』は、なぜ“象徴的名作”なのか? 発売25年のいま、その地位を盤石にした変化球続きのシリーズに言いたいこと
それでも変化球を投げ続け、名作は不動の存在になるのか
正直なところ、『スターフォックス64』はこれからも数年、シリーズ全体の象徴的名作として君臨し続けるかもしれない。シューティングゲームにおいて、次のマスターピースと言える新作が登場しない限り、10年後も変わらず盤石な可能性すらある。
本稿執筆時点における、最後の新作は2016年にWiiUで発売された『スターフォックス ゼロ』と『スターフォックス ガード』になっている。
ちょうど、4月21日には2作の発売から6年が経ち、それに合わせて前述の今村氏が自身のTwitterにて『スターフォックス ゼロ』のNintendo Switch移植の要望を綴ったツイートをする出来事もあった。
WiiUで発売され、Nintendo Switchへと移植されたゲームは『マリオカート8』(マリオカート8 デラックス)に『ドンキーコング トロピカルフリーズ』など、結構な数に及んでいて、多くが売上面で成功を収めている。『スターフォックス ゼロ』にそれが求められるのは、まさに「むべなるかな」といったところだ。
しかし、筆者個人としては「それはどうだろう?」という意見だ。
そもそも『スターフォックス ゼロ』は、よくも悪くもWiiUゲームパッドを前提に設計された作品。それによって実現した、唯一無二の魅力も多い。とりわけWiiUゲームパッドから仲間の無線通信が流れる立体音響は、特筆すべきものと言えるだろう。
Nintendo SwitchにはWiiUゲームパッドの代わりになるものが存在しないため、当然ながら移植となれば、一連の魅力はほとんど失われてしまう。また、それゆえに抜本的な作り直しも避けられず、移植というよりはむしろリメイクになる。そのような”大改造”が施された『スターフォックスゼロ』は、本当に『スターフォックス ゼロ』なのだろうか?
その弊害を思うと、どうなのだろうと思えてしまうのである。
とはいえ、移植するのが一概に悪いとも言い切れない。そもそも、ここしばらくは”普通の操作”で(コントロールスティックとボタン中心に)遊ぶ『スターフォックス』の新作が出ていない。リメイク、復刻を含めた場合だとそうでもないが、完全な新作としては『スターフォックスアサルト』が現状、最後の”普通の操作”で遊べる新作だ。
なので、Nintendo Switch版『スターフォックス ゼロ』を”普通の操作”で遊ぶ新作として、文字通りゼロから始めるのもありだろう。加えて、賛否の分かれた高めの難易度をもう少しマイルドに再調整すれば、より広範に受け入れられる作品に化けるかもしれない。
変化球のパターンに関してもひとつ、期待が持てる可能性が示されている。ユービーアイソフトより2019年に発売された『スターリンク バトル・フォー・アトラス』だ。
Nintendo Switch版には『スターフォックス』とのコラボレーション要素が独自にあり、『スターリンク』仕様に改められた「アーウィン」を操縦し、オープンワールドの広大な宇宙空間と惑星を自在に飛び交う冒険と戦闘が楽しめた。
専用のミッションとストーリーも用意され、そこでは宿敵「スターウルフ」チームとの戦闘イベントも展開されるなど、手の込み具合も相当なものだった。このコラボレーションは、『スターフォックスアドベンチャー』とは似て非なる、アクションアドベンチャーゲームとしての『スターフォックス』の可能性を示している。ゆえにまだ今後も変化球を投げていくつもりなら、これを突き詰め、新境地を開拓するのもいいのでは、と思うのだ。
『スターリンク』自体、ゲームとしての課題もそれなりに見受けられたが、化ける素質もあっただけに挑む意義はあると思える。究極的にはユービーアイソフトと共同で作る可能性も含めつつ、なんらかの未来に繋がることを願いたい限りである。
発売から25年が経ったいまも、確固たる名作としてあり続ける『スターフォックス64』は現在、Nintendo Switchの「NINTENDO64 Nintendo Switch Online」を通して遊べる。2023年初頭には購入できなくなることが報じられているが、WiiUのバーチャルコンソール版も選択肢のひとつだ。
また、初代『スターフォックス』と幻の続編『スターフォックス2』も『スーパーファミコン Nintendo Switch Online』にて遊べるようになっている。
すでにフォックスシリーズ黄金期が結集しているような状況だが、ここにいまの時代を象徴する新たなマスターピースは加わるのか。ゲームの内容と人気、支持ともに安定する時の到来をシリーズを初代から遊び続ける人間としては願ってやまない。
そろそろ、直球を投げてもいいころでしょう?