『スターフォックス64』は、なぜ“象徴的名作”なのか? 発売25年のいま、その地位を盤石にした変化球続きのシリーズに言いたいこと

『スターフォックス64』は、なぜ“象徴的名作”なのか?

相次ぐ変化球が『スターフォックス64』の名作の評価を盤石にした

 なぜ、そのような状況がいまなお続いているのか。

 推測される中で最も可能性が高いのは『スターフォックス64』以降、シリーズは変化球を投げることにこだわりすぎてしまったためだろう。

 3Dシューティングゲームとしての正統進化を『スターフォックス64』でやり尽くしたためか、ジャンルを変更したり、ゲームシステムを根本的に改めたり、果ては特殊な操作スタイルの採用も試み、徹底して前作とは別のゲームになることに固執した。

 元々、その布石は『スターフォックス64』の時点で存在していた。プロデューサーの宮本氏は公式ガイドブックのインタビューで次のようなコメントを残している。

「本当は同じメンバーで続きをつくったらいいんですけど、いまは違う仕事をしているんで、それが終わって余裕ができたら考えようかな、と。ただ、一応ある目標のところまでは来たので、今度やるとしたら、もう少しマップの部分とかストラテジーの部分に新しい展開がなかったら、ただ敵が豪華になるだけのものは、あまりつくりたくないなと思っているんですけどね。だから、やり残したことも含めて新システムで3~4年後にやろうというのが、まあ、今のところの考えなんです」

 

「敵のつくりこみに関しては、ぼくは、まだかなり心残りがあって、単純につくり直してももっと面白いことができると思うんですけどね。ちょっとデータをつくりかえたぐらいでシリーズの次のを作るのはうちらしくないんで、もっと違うものでやります」

(※任天堂公式ガイドブック『スターフォックス64』開発者インタビュー、133ページより抜粋・引用)

 その結果、現れたのが2002年発売の『スターフォックスアドベンチャー』。3Dシューティングゲームでもない、『ゼルダの伝説』風のアクションアドベンチャーゲームだった。

 この『スターフォックスアドベンチャー』は本来、『スーパードンキーコング』シリーズで知られるイギリスのゲーム開発会社「レア」がNINTENDO64向けに制作していたオリジナルの作品『ダイナソープラネット』。それが後に『スターフォックス』を冠する新作に改められ、発売される形になった。

 当然ながら、ジャンルが変わったために前作『スターフォックス64』からゲームシステムから遊び心地は全くの別物に。出来は及第点に達していたが(特に謎解きの難易度は適度な塩梅に調整されている)、『スターフォックス64』を楽しんだファンから見れば、困惑するのも無理はない作品だったのは否めない。

 なぜ、シューティングゲームを止めたのか? それについてはシリーズの主要開発者のひとり、元任天堂の今村孝矢氏が「2002年当時はシューティングゲームは時代と共に消えつつあるポジションだったため、アドベンチャーになった」と『スターフォックスアサルト』発売時のインタビューでコメントしている。

 その『スターフォックスアドベンチャー』の次に発売された新作『スターフォックスアサルト』では一転、シューティングへと回帰した。

 前述のインタビューでの今村氏の発言によれば、シューティングの『スターフォックス』をやりたいという声が沢山あったことが影響したようだ。しかし、ゲームシステムは白兵戦パートの導入などもあり、『スターフォックス64』とは似て非なるものになっている。

 ここまでなら順当な変化であり、進化と言える。だが、肝心の中身は1人用ではなく、複数人参加の対戦モードが本編であるかのように設計されており、作り込みに顕著な差が現れていた。そのため、1人用を求めていたファンからは当時、厳しい意見が相次ぐことに。対戦モードに1人で遊べる機能(AIとの対戦機能)がなかったことも、それに拍車をかけた格好だった。そのため、いまなお『スターフォックスアサルト』は対戦モードだけなら名作との声が根強い。どこが一番惜しまれたのか、非常に分かりやすい評価である。

 『スターフォックスアサルト』以降には『スターフォックスコマンド』、『スターフォックス64 3D』、『スターフォックス ゼロ』と『スターフォックス ガード』、そして『スターフォックス2』の新作3本、リメイク1本、復刻1本の計5タイトルが出ている。

 だが、新作の3本はどれも評価が割れてしまっている。

 いずれもタッチスクリーン&タッチペン、WiiUゲームパッドという特殊なデバイスに強く依存した特殊な操作スタイル、ゲームシステムがその要因となってしまっている。裏を返すなら、その特殊な操作を受け入れることができれば、十分に遊べる作品である。特に『スターフォックス ゼロ』はその傾向があり、高く評価する声もある。しかし、『スターフォックス64』ほどの幅広い支持を得られているのかと言われれば、大変際どいというのが実態だろう。

 こうした直球ではない、変化球に次ぐ変化球を投げ続けたのが、『スターフォックス64』以降のシリーズだった。前述の宮本氏が『スターフォックス64』当時に残したコメントを思えば、まさにその通りな展開になった訳だ。好意的に捉えれば、マンネリ化を回避し、常に刺激的な体験を追求し続けていると言えるが、代償として開発側とファンの間に大きな溝ができ、シリーズ全体を不安定にさせてしまった感は否めない。

 また、『スターフォックスコマンド』以降の特殊な操作スタイルで遊ぶタイトルは人を選ぶ色合いも濃く、取っつきにくいゲームという印象が付いてしまっている。

 前述の任天堂公式ガイドブックに記された宮本氏のコメントのひとつ、「本当にシンプルなゲームなので、シューティングゲームと恐れないでください。女の子にも遊んでもらいたいのです」(※任天堂公式ガイドブック『スターフォックス64』134ページより一部引用)を思えば、あまりに本末転倒だと言える。

 そのような取り組みの数々が結果、正統派で直球の『スターフォックス64』の評価を盤石にし、文字通り象徴そのものにしている。ある意味、「むべなるかな」と言える状況だが、こうも長い年月、そのイメージが熟成され続けている状況は、続編を出し続けているタイトルとして健全ではないのではないか、と筆者個人としては思ってしまう。

 現在に至るまでの間、方向性は異なっても名作と明言できる作品が存在するなら、その必要はないかもしれない。しかし、評価の割れるもの続きで、ファンの溝が広がる現状では、『スターフォックス』シリーズは”素直になる”必要に迫られている気がするのである。

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