特集「プロゲーマーになる方法と、そのセカンドキャリアについて」(Vol.2)
新たなチャレンジのために必要なものは“好奇心” or “危機感”! 『スマブラDX』現役プロゲーマー・aMSaと考える「セカンドキャリア」
海外プロゲーマーのセカンドキャリアとは? 現地のファン・選手と交流してわかったこと
――そのほか、セカンドキャリアとして興味・関心のある職業や分野はありますか?
aMSa:最近は、いわゆるRTA(リアルタイムアタック)――スピードラン競技(※3)にも興味があります。間近に対戦相手がいなくても成立しますし、また自分との闘いによって完結する競技性に改めて魅力を感じたんです。
過去、個人的にスピードラン競技に取り組んだ時期もあったのですが、今後『スマブラDX』の一線から退いた暁には、本格的にスピードラン競技者としての実力を高めていくという道もアリだなと思っています。
そして、スピードラン競技を配信活動の軸にすることで、同じように「もっと実力を高めたい」、「テクニックを身につけたい」と考えているプレイヤーに対して、情報や知識を共有していけるようになれれば、とも思ってます。
(※3)RTA、スピードラン……ゲームを開始してからクリアーするまでの実時間の短さを競う、プレイスタイルの一種。近年はさまざまなタイトルを題材に、多種多様なレギュレーションに沿って開催されており、競技総人口は全世界で28万人とも言われている。
――現在、aMSaさんはYouTubeなどで海外ファン向けに英語での発信を積極的に行われていますが、海外進出などの展望はありますか?
aMSa:まさにいま、コロナ禍が落ち着くころを見計らって、1年間のカナダ留学を計画中です。カナダからであれば北米で開催される『スマブラDX』の大会にも参加しやすくなりますし、いま以上に英語力を高めて、ゆくゆくは海外のゲーム会社に就職したいとも考えています。
――海外のプレイヤーやコミュニティとも親交の深いaMSaさんですが、日本と海外のプロゲーマーのセカンドキャリアに関する考えかたを比較して相違点などはありますか?
aMSa:私が知り得る限りの話ではありますが、海外の『スマブラDX』界隈では 専業だけでなく兼業のプロゲーマーも多い印象です。IT関係の社員と兼業でプロゲーマーをしている方も多く、本業を聞いてみたら「じつはGoogleの社員なんだ」とか、「じつはYouTubeのLive機能を開発したのは僕なんだ」といった返答があって何度も驚かされたことがあります(笑)。
どちらかというと日本よりも海外のほうが兼業に理解がありますし、兼業しやすい土壌があることも助けになっているのかな、とも想像します。いずれにせよ、そうやって副業的にさまざまなことに挑戦することはとても大切だと思います。
私もプロゲーマー活動を始めてから2年ほどは会社員との兼業でした。「背水の陣で臨むべき」という意見もあるかもしれませんが……私の場合は「最悪の場合、プロゲーマーとしてやっていけなくなっても生計は立てられる」という安心感が、プロゲーマーとして活動していくうえでの大きな心の支えにもなっていましたから。
――aMSaさんにとって英語力は非常に大きな武器になっていると思います。英語を勉強しようと思ったきっかけや、勉強するための原動力となったものは何でしたか?
aMSa:『スマブラDX』は海外のファンが多いので、現在は動画投稿やライブ配信時もすべて英語を使うようにしています。やはり、英語は最低限話せるようになっておいて良かったなと思いますね。
そのきっかけとなったのは、6年ほど前に初めての海外大会『Smash Summit』に招待されたときのことです。そこで「現地のプレイヤーともっとゲームについて深い会話がしたい!」と強く思い、英語の勉強をがんばろうと決意したんです。
それまでも、受験勉強としての英語はそこそこやっていたのですが、そのとき初めて“好奇心がある→英語を勉強する”という順番で、能動的に勉強できるようになったんです。
私は、何か新しいことに挑戦し、それをモノにするためには“好奇心” or “危機感”のどちらかを持っていることが大切であると考えています。英語の勉強を始めたのは現地プレイヤーともっと深いやり取りをしたいという“好奇心”を持ったからで、カナダ留学を計画したのも英語を話せないと生活できないという“危機感”を持ちたかったからです。
――「“好奇心” or “危機感”」というお話は、あらゆる物事に通ずる極意だと感じました。
aMSa:そうですね。やはり、“プロゲーマーになること”をゴールにしてはいけません。プロゲーマーとしての自身の“価値”を高めるため、そしてセカンドキャリアを見据えるためにも、“好奇心”や“危機感”を持って、常に新しいことにチャレンジしていくことが重要だと思います。
メイン写真撮影=(C)Jason Halayko / Red Bull Japan
※写真提供・協力:RedBull.com