コラージュアーティストとアドビクリエイターサポートが考える、2022年のアーティスト仕事論

2022年のアーティスト仕事論

 WEBやテクノロジーの発展が目覚ましい昨今、アーティストの働き方も多様化している。NFTやWeb3の台頭も語られる中で、アーティストはどのように活動していけばよいのか、そして企業はそれをどのようにサポートすることが望ましいのか? 現代におけるアーティストの仕事論について議論は尽きない。

 アドビはアーティストの支援プログラム「Adobe Creative Residency」において、アーティストが自身のクリエイティブに集中できる環境を支援する、という取り組みを行ってきた企業の一つだ。今回は、Adobe Creative Residencyプログラムマネージャーの川西亮太氏と、このプログラムの一環として行われた「Community Fund」に参加したアーティストであり、アドビ主催のコンペなどでは幾度も賞を受賞しているコラージュ・アーティスト、カズシフジイ氏の対談をお届けする。現代におけるアーティストの働き方について、様々な視点から議論が交わされた。

ーー まずはカズシさんの簡単な自己紹介をお願いできればと思うのですが、コラージュとの馴れ初め、アーティストとして活動を始めたのはいつ頃なのでしょうか。

カズシフジイ(以下、カズシ):アートに特化し始めたのは最近のことですが、もともとはグラフィックデザイナーとして働いていて、2年前にフリーランスとして独立しました。その際に、フリーランスとして生活していくための武器を増やそうと、さまざまなコンテストに応募していたんです。

そのうちの1つがAdobe Stock主催のコンテストで、コラージュを使った作品を作るという内容のものでした。この時がコラージュに触れた最初のきっかけになっています。幸いにもこのコンテストで賞をいただくことになり、それを機にコラージュという領域に力を入れるようになったのが、現在の活動にもつながる原体験になっています。

 
 
 
 
 
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ーー続いて川西さんにお伺いしたいのですが、コラージュのコンテストというのはどのようなものだったのでしょうか。

川西:定期的にグローバルで音楽アーティストとコラボするキャンペーンのコンテストもあれば、ローカルで展開するコンテストもあります。クリエイターの方に画像やビデオなどのストックサービスであるAdobe Stockの素材を知ってもらう機会の創出や、素材を使ってどんなクリエイティブな作品が生まれてくるのか、パートナー企業さんとコラボレーションをして、クリエイティブチャレンジを開催するなどしています。

プロのクリエイターの方にCreative Cloudを使ってもらうことはもちろん、最近はモバイルアプリやウェブ上のサービスでデザイン初心者の方でも簡単に使えるツールを知ってもらう機会になればと、さまざまなコンテストを企画しています。

ーー アドビはクリエイティブ活動をする人を助ける手段として、コミュニティ運営にも力を入れてますよね。

川西:そうですね。私はアメリカ本社のコミュニティチームに所属しているのですが、アドビがコミュニティをサポートできることは何だろうと考え、クリエイターにヒアリングしたとき、「キャリアなどを支援してほしい」という声が多く上がりました。たとえば、フリーランスのデザイナーにしても、「どうやってにステップアップしていけばいいのか」というのを具体的に明示するのが難しく、考えた末に生まれたのが2015年の「Adobe Creative Residency」でした。

クリエイターが食べていくための仕事に追われるのではなく、自分のクリエイティブにおけるスキルアップを図っていくためにアドビが生活費を支援し、自分のクリエイティブと向き合ってもらうのが大まかなプログラムの内容です。特徴的ところとしてはクリエイティブを追求し、作品を作っていく過程もコミュニティにシェアしていくこと。自分の作品はこんな風に考え、こうやって作っていくというのを共有することで周囲のクリエイターにも気づきや学びを得るきっかけにもなるんです。

こうしてアドビがサポートしたクリエイターが、ほかのコミュニティにも還元できるような循環を生み出し、クリエイティブの世界を盛り上げていくことが大きな目的になっています。また、クリエイター向けのSNS「Behance」では、世界中のクリエイターとその作品を見つけることができます。いろんなクリエイターの仕事の裏側が見られるというか、仕事を進めていくなかでの過程やワークフローも詳細に知ることができるわけです。このように、クリエイター向けのプログラムやプラットフォームを通じて、クリエイター支援につながるような取り組みを継続して行っています。

ーー 実際にAdobe Creative Residency Community Fundに参加したカズシさんは、どのような感想をお持ちですか。

カズシ:アドビから仕事として依頼を受けて作品を制作する経験を積めたのは非常に大きかったですね。ほかの企業へポートフォリオを見せる際も、アドビと一緒に仕事をした実績は結構なインパクトがあるからです。クリエイターとしてのアドバンテージにもなるような支援をいただいたことで、またひとつ自分の活躍の場が広がったと感じています。

ーー Behanceと他のSNSの違いについてはどう感じていますか。

カズシ:Behanceに関しては、これまでの仕事で制作した作品を掲載しており、そこから興味を持ってもらえるような使い方を現在していますね。ほかのSNSと違うのは、Behanceがデザインに特化したプラットフォームであること。他のSNSはクリエイティブ以外の内容も投稿されていく世界なので、そこでクリエイターを探すということになると埋もれてしまう懸念があるわけです。Behanceはクリエイターだけが見つかるSNSなので、そこが長所になっているのではと思っています。

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