電動マイクロモビリティシェア「LUUP」急成長の理由 「当初は“おもちゃ”扱いされ、話を聞いてもらえなかった」

電動マイクロモビリティシェア「LUUP」急成長の理由

視認性向上やブランド価値を高めるために行ったロゴや機体のデザイン刷新

「LUUP」
新しくなったロゴ、機体・ポートデザイン

 そんなLUUPだが、2022年2月にはロゴのリニューアルと、機体デザイン・ポートデザインの刷新を行った。

 ロゴに関しては、これまでブランドカラー「LUUP GREEN」を基調にしたものだったのを、交通工学の分野で使われる緩和曲線から着想を得たデザインへ変更。

 枠線は、LUUPの機体が置かれるポートの線に着想を得たという。

 機体もロゴになぞらえて、黒から白ベースの色味に変更し、ブランドカラーが映えるような設計を心がけたそうだ。

 今回の一連の刷新にはどのような経緯があるのだろうか。

 岡井氏は「夜道での視認性向上や他の電動キックボードと見分けをつきやすくするため」と語る。

 「昨年末、2021年4月から参加していた実証実験における安全性の検証に伴う数十万人のデータを政府へ提出し、その次の取り組みとして行ったのが今回のロゴや機体のアップデートでした。政府の認可によってLUUPの電動キックボードの位置付けは小型特殊自動車となり、走行時のヘルメット着用が『義務』から『任意』とする特例が出されました。街中でLUUPを使うユーザーはヘルメットを付けなくても利用可能になったにも関わらず、保安部品を付けず原付としての基準を満たしていない違法な電動キックボードなどと混在して『ヘルメットを装着していない』と警察に呼び止められたユーザーも散見されました。

 こうした課題を解決するため、公道を走っていれば一目でLUUPだとわかるようなデザインへ変更しました。また、今年の6月には約30年ぶりに改正される道路交通法の施行が予定されていて、新しいルールメイキングを見据えながら、LUUPの認知度やブランド価値を高めるために、このタイミングでリニューアルに踏み切りました」

 電動キックボードのルール整備が今年半ばに控えているなか、法改正を機にさらなるLUUPの利用者数の増加が見込まれるだろう。

 その際に焦点となってくるのが、交通ルールの遵守や安全面の問題だ。

 LUUPでは、初めて使うユーザーに対して道路交通法テストの満点合格を必須としたり、安全な走行ルールを周知する講習会を開いたりするなど、安全性の担保に努めてきた。

 一方、利用者が増加することで、今よりも事故を起こさない走行や公道を走る際のマナーが求められるのは言うまでもない。

 こうしたサービスの拡大に合わせた安全性向上の施策としては「ルールブックの作成や定期的な機体のアップデートを行い、対策を講じていく」と岡井氏は説く。

「LUUP」

 「LUUPの乗り方や禁止事項を利用者に広く知ってもらえるよう、東京海上ホールディングスとルールブックを共同制作し、Web上に公開しました。また、電動キックボード自体も過去に11回のアップデートを重ねてきているので、今後もユーザーの声に応えながら、乗り心地や操作性の向上を追求し、機体の改善も行っていく予定です。そして、LUUPにアンバサダーとして関わってもらっている人たちを通して、SNSでLUUPの正しい使い方を発信することも行っています。こうした取り組みを重ねていきながら、利用時の安全性を周知できればと考えています」

最終的にはひとつのプロダクトに集約し、全年齢が乗れる公共交通インフラを目指したい

「LUUP」
「LUUP」に乗る際の交通ルール
「LUUP」
「LUUP」に乗る際の走行における注意事項

 道路交通法が改正される頃には、現在のような実証実験段階だからこその不安感やネガティブな印象が払拭されることも予想される。

 そうなれば、これまでLUUPに興味はあっても二の足を踏んでいたユーザーが、新規で使うようになることも十分に考えられるだろう。

 近未来の交通インフラとして、着実に成長を歩んでいる電動マイクロモビリティ。

 これからもっと社会実装が進んでくれば、さらに市場の可能性は広がっていくのは間違いない。

 最後に、岡井氏へLUUPの将来性や今後の展望について聞いた。

「LUUP」
未来の電動マイクロモビリティイメージ

 「いまは電動キックボードを展開していますが、最終的にはひとつのプロダクトに集約したいと考えています。というのも、現状のマイクロモビリティでは高齢者が乗れるものではないので、将来的には老若男女問わず乗れる3輪や4輪のプロダクトを開発する構想を描いているんです。ただ目下目指しているのは、今のサービスを2023年までに日本中へ広げることなので、その目標に向かって尽力していこうと考えています。

「LUUP」

 先ほどポートの数が重要とお伝えしましたが、住居側との連携も意識しておりまして、あらかじめポートが付帯された新築分譲マンションがこれからいくつも建ってくる予定です。例えば、LUUPの回数券のような仕組みを導入すれば、いまよりも気軽にLUUPに乗って街中を移動することが可能になり、都市部への人流も増えるのではと捉えています。今後も全年齢が乗れる新時代の公共交通の社会実装に向け、真摯に取り組んでいきたいと思います」

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