USB PD、MagSafe、Power IQ……結局iPhoneの充電器、どれを選べばいい?
・「QuickCharge」「PowerIQ」はiPhoneとは相性x
サードパーティ製充電器を見ていると「QuickCharge」や「PowerIQ」という単語が目に付く。これらは一体どんなものだろうか。
QuickChargeはQualcommが開発した規格で、Snapdragonシリーズを搭載しているAndroidスマートフォン向けに提供しているUSB充電の独自規格だ。QuickChargeにはバージョンがあり、現在はバージョン5。元々はAppleの独自規格と同様に、高速充電用に5V・2Aの10Wで充電できる機能としてスタートした。その後バージョン2で対応電圧に9Vと12Vが、電流に1.67Aと3Aが加わり、最大18Wでの充電をサポートする。バージョン3では電圧は3.6V〜20Vまで200mV単位でサポートし、電流は2.6Aと4.6Aに対応。トータルのW数は18Wと、バージョン2と変わらないが、より細かな制御が可能になった。
この後USB Type-CとUSB PDが登場したこともあり、バージョン4ではUSB PD規格に準拠したモードを搭載。QuickCharge対応機器が接続されるとバージョン3と同じ動作が、USB PD機器が接続されるとUSB PDとして最大27Wが供給される。バージョン5ではさらにUSB PDの3Aと5Aに対応し、最大100Wまでの供給が可能になるという。
なお、QuickChargeに非対応な機器が接続された場合はUSB本来の動作での接続になる。たとえばiPhoneがType Aポートに接続された場合、QuickChargeには非対応なので、USB BCに準拠した7.5Wで、Type-Cポートに接続されてUSB PD対応機器の場合は18Wでの供給になるわけだ。
そんなわけで、QuickChargeはUSB Type Aで接続する場合は独自規格、USB Type-CのUSB PD対応機器が接続する場合はUSB PDとして接続できるというものだ。古いAndroid端末を使っている場合は便利だが、iPhoneに限って言えば、QuickCharge 3以前には対応していないし、QuickCharge 4は実質USB PDと同じため、あえてこれに対応した製品を選ぶ必要はないと考えていいだろう。
なお、QuickCharge以外にもAndroidスマートフォン用の急速充電規格は存在する。たとえばファーウェイはHUAWEI FCPやSuperCharge、メディアテックはPump Expressといった規格を、それぞれのSoC向けに用意している。ただしサードパーティ製品でこれらの規格をサポートしたものはほとんど存在しないため、こうした規格を使いたいなら純正のアダプターを選ぶといいだろう。
PowerIQのほうは、充電器やモバイルバッテリーのメーカーとして有名なAnkerの充電器が搭載している機能で、実は充電規格の名前ではない。PowerIQ対応充電器は複数の充電規格に対応しており、機器を接続すると自動で対応する充電規格を判別し、その中で最もスピードの速い規格を選んで充電してくれる、というものだ。現在はバージョン3(Gen2)で、Type-Cポートの接続はUSB PDに準拠している。
大変便利な機能だが、もし充電器が機器側がサポートする最速の充電規格に対応していなかった場合、充電器側が判断できる範囲での最速規格を選ぶため、思ったより遅い規格で充電していた、ということが起き得る(以前は実際に起きた)。今後はUSB PD対応製品が増えるため、PowerIQの有無にこだわる必要はないといっていいだろう。
・iPhoneで使うならUSB PDかMagSafe!
さて、iPhoneに限定した場合、これから充電器を購入するなら、基本はUSB PDに対応した充電器だ。iPhoneだけであれば18W以上をサポートしていればよく、持ち歩くならコンパクトなものがいい。その他の機器を接続する可能性があるなら、より大きな容量のものを選ぼう。この場合、Type Aポートを備えたものは、より汎用性が高い。
また、自宅等で利用するなら、MagSafe対応充電アダプターも選択肢の一つに入れていいだろう。ケーブル着脱の手間が省けるし、スタンドを兼ねていて見た目におしゃれなものも多い。Apple WatchやAirPodsを持っている場合は、それらを同時に充電できるタイプのものがいいだろう。ただしUSB PDと比べてコストはやや割高になるので、予算と相談して選ぼう。