テクニカルディレクターに向いているのは“コミュ障”? narumin×清水幹太(BASSDRUM)対談

narumin×清水幹太(BASSDRUM)対談

 直感的な操作で視覚的なプログラミングができる、TouchDesignerをはじめとしたノードベースビジュアルプログラミングツールをメインとした週末ワークショップやイベントの主催、およびデジタルエンターテインメント領域のコンテンツ開発を行うクリエイティブコミュニティ『Tokyo Developers Study Weekend』(以下、TDSW)の共同創業者であるnaruminによる連載「Behind the Tech People」。

 同連載では、naruminがホスト役として、テックで世界を彩り、社会を前進させ、各々の理想を実現化させるクリエイター・経営者のヒストリーを聞き出し、これからクリエイターを目指す人たちの一助になるための対話を、全十回にわたって繰り広げていく。

 第三回のゲストは、テクニカルディレクターを中心に集めた職能コミュニティ・BASSDRUMの清水幹太氏。その異端なキャリアやテクニカルディレクターの職能、経営者としての考え方や今後のビジョンなどについて、大いに語ってもらった。(編集部)

narumin:まずは簡単に、清水さんの自己紹介をお願いします。

清水:BASSDRUMの清水幹太です。テクニカルディレクターを中心に集めた職能コミュニティ・BASSDRUMを立ち上げ、テクニカルディレクター/エンジニアとして活動しています。

narumin:清水さんはこれまでのキャリアが一風変わった方なので、まずはその辺りをうかがえると嬉しいです。

清水:話せばかなり長くなってしまうので、簡潔にまとめられるよう頑張ってみますね。キャリアの最初は……大学在学中に、アルバイトではあるのですが、社会的にも話題になったIT系の会社に入りまして。ちょっとHTMLが書けるということもあり、そこではエンジニアとして働いていたのですが、かなり態度の大きなデザイナーさんがいたんです。だから「デザイナーになることが偉くなることなんだ」と思って、デザインに興味を持って勉強を始め、そこからデザイン事務所でもアルバイトを始めました。

 ただ、Webデザインをやろうとしていたのに、入ったのが紙のデザイン、しかもグラフィックを中心とした事務所で。会社としてWebをやっていなかったわけではなかったのですが、任せてもらうことはありませんでした。そこを辞めてからは、大学を中退し、フリーランスのデザイナーとして書籍や印刷物のデザインを手がけるようになりました。

narumin:現段階でもすごい経歴なのですが、まだ新卒の年齢なんですよね。

清水:そうなんです。そこからしばらくはマガジンハウスにDTPオペレーターとして常駐しつつ、ちょっとしたHTMLなんかのお仕事も受けていました。ある日、先方にどう情報が伝わっていたのかわからないのですが、突然Flashのプログラミングの仕事を発注されて。できもしないのに「できますよ」と答えて、必死に勉強した結果、デジタルの広告賞を獲ることができたんです。そこから本格的にエンジニアとしての仕事を受けるようになっていき、29歳で初めて会社員になり、そこではデザイナー・エンジニアでもありつつ、徐々にディレクター領域の仕事をするようになっていきました。当時はWeb上のスペシャルサイトなどの効果がまだ信じられていて車系の会社か携帯会社以外のスペシャルサイト広告みたいなものも多数制作していました。この領域でも、かなり様々な新技術が活用されていました。

 そして、2011年からはPARTYというクリエイティブブティックを起業し、2013年にはニューヨークでPARTY NYを立ち上げました。ニューヨークでの活動は現在も継続しつつ、2018年にBASSDRUMを設立しています。

narumin:清水さんがテクニカルディレクターという仕事に向いている人はどういう人だと考えますか?

清水:色々あるとは思うんですが、あえていうなら「コミュ障」であることでしょうか。

narumin:それはなぜでしょう?

清水:自分も元来はコミュニケーションが得意なわけではなく、本来的には誰からも連絡がこない場所でずっとコードを書いていたいような人間なんですが、この仕事に向いているから、成り行き上いまの仕事をしているのかなと思うところがあって。自分にコミュ障的な性質があるからこそ、相手の立場に立って考えて、いかに合理的に伝えたいことを伝えることができるかを解析してコミュニケーションをしているところがあります。。そうやってコミュニケーションが元来苦手であるゆえに、コミュニケーションを因数分解して丁寧に行うのも、ある種の適性であり才能な気がしています。会社名をBASSDRUM(楽器のベースとドラムが由来)にしているのも、そうして蔭ながら支えるのがテクニカルディレクターの適性だと思っているからかもしません。

narumin:私も本質的には清水さんと近い部分があるので、よくわかります。TDSWという組織をある種率いる立場ではあるのですが、本来は率先して先頭に立つタイプの人間ではないので。

清水:気づいたら引っ張っていた、という感じですよね。私もテクニカルディレクターという職業全体のベースアップを図ろうとしていて、ふと見ると周りに人がたくさんいたから会社を作った、という状況なので。雑誌の仕事をしているとき、オンラインゲーム廃人になったことがあるのですが、そこでは白魔法士なんかは色んなパーティーから誘われているのに、モンク(武闘派の僧侶)の自分は不人気で。だからこそ、レベル上げをするためには自分から声をかけて周りを引っ張るしかなかった、みたいな状況があって、そのときにチームをつくって動く、ということを覚えました。あの経験がなかったら今の自分はありません。

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