『あつまれ どうぶつの森』ver. 2.0に感じた、任天堂の「遊ばれ続ける」ための巧みな戦略
もっとも、そもそもそういった要素をこのゲームに期待するべきではないだろう。
『あつ森』をプレイし続けるのは、何かを「達成」したことが「報酬」として得られるからなのだろうか。『あつ森』のゲーム内での目的をあえて定めるならば、「島を豊かにすること」であり、その他の「島クリエイター」やどうぶつたちとの会話、家具集めなどはその「手段」となるが、同作のプレイヤーは「島を豊かにするために、最適な攻略手段を逆算してプレイするぞ!」というモチベーションで遊んでいるのだろうか。
そうではなく、単に仮想空間内のどうぶつたちとの戯れや主人公(むらびと)の挙動にかわいらしさを感じることそのものが快楽だからだろう。どうぶつたちとのコミュニケーションや素材集めといった手段はいつのまにか自己目的化し、本来の目的であったはずの「島を豊かにする」ということを文字通り「ゲームクリアのための目的」であると強く意識するようなプレイは(たとえばアクションゲームをプレイするときに比べれば)ほぼないはずだ。
こうした手段と目的の取り違えを誘う(ことでハマらせる)工夫は、「作業ゲー」に陥らないためにあらゆるゲームが行ってきたことであり(※3)、とりわけ「キャラクター」を介在させることはその常套手段だ。たとえば単なるボールと的が描画されていただけのシューティングゲームから『スペースインベーダー』が誕生したように、あるいは「音声合成ソフト」が初音ミクとなったように、ある目的を達成するための「作業」であったはずの行動にキャラクターが介在することで、それとの戯れが自己目的化されるということを、あらゆる作品が実現させてきた。
参考:「Netflixオリジナル『ハイスコア:ゲーム黄金時代』にみた、「キャラクター」の侵略的広がり」
このことを踏まえて今回の『あつ森』のアップデート内容をみてみよう。50以上の膨大な機能が追加されたたなかで特に注目に値するのは、喫茶店「ハトの巣」(※4)が実装されたことと、アプデと同日にamiibo(※5)カードの第5弾が発売されたことに伴い、今作で初登場した新住民を含めたすべてのシリーズキャラクターをゲーム内に呼び出せるようになったことだ。
これまでもamiiboを使いシリーズの人気キャラを島内に呼び込むことは可能だったが、今作で初登場したキャラクターのamiiboは販売されていなかった。特にジャック(ネコ)やちゃちゃまる(ヒツジ)といった人気キャラクターが島に訪れてくれるかどうかは完全に運次第だったので、彼らと出会うまでひたすら粘り続ける、いわゆる「厳選」にのめり込んだプレイヤーも少なくない。またジャスティンやレックスといった住民ではないシステムキャラクターのamiiboが追加されたことに加え、ししょー(ウーパールーパー)など今作には登場しない過去シリーズの人気キャラのamiiboにも対応したことで、いつでも彼らをゲーム内に呼び出せるようにもなった。
こうして「キャラクターとの戯れ」の魅力が増すとともに、全キャラクターを(amiiboがそろえば)いつでも呼び出せるようになったことで『“あつまれ”どうぶつの森』というある種の「タイトル回収」まで実現した今回のアップデートは必見だ。