VRデバイス大手のValve、メタバースよりも「Steam Deck」に注力か

 ゲームプラットフォームSteamを運営するValveが、急速に注目を集めているメタバースに対し意外な反応を示している。同社は、メタバースより今年の夏に発表した同社肝煎りのゲームデバイスに可能性を見ているようだ。

VR元年ではキープレイヤーだったが...…

 テック系メディア『digital trends』は11月29日、Valveがメタバースではなく同社が開発したポータブルゲーミングPCのSteam Deckに注力すると報じた。この報道の情報源となっているのは、ValveやBethesdaに関する情報を発信しているYouTuberのTyler McVicker氏だ。

 36万人のチャンネル登録者を持つMcVicker氏は、投稿動画を通じて同社がVRに興味を失っていることを指摘した。理由は、Meta(旧Facebook)がかつてのVRヘッドセットより安価なOculus Quest 2(128GBモデルで37,180円)のような製品をリリースしたうえに、多くの有力VR開発業者を買収したからだ。つまり、今からメタバースに参入してもMetaの後塵を拝すると判断したと見られる。

 Valveは「Project Citadel」と呼ばれるVRゲームを開発するプロジェクトを推進していたが、現在ではSteam Deckでプレイできるように作り直しているようだ。なお、同プロジェクトで作られているゲームは、シューティングゲームとRTSが融合したもので2年以内にリリースされるという噂がある。

 Valveがメタバースの台頭を静観するのは、やや意外な印象を受ける。というのも、同社は2016年の「VR元年」から始まったVRブームの一翼を担っていたからだ。Steamには今でもVRゲームが販売されており、同社はVRヘッドセット「Valve Index」を開発・販売している。

メタバースの到来に備える

 前出のDigital Trendsの記事は、Valveとは反対に多くのテック系企業がメタバース参入に向けて動き出していることもまとめている。

 そもそもメタバースという言葉が注目されるようになったのは、周知の通り、Facebookが10月末にMetaに社名を変更したことに端を発する。社名変更を公表したMetaのニュース記事では、同社がメタバースの実現に注力することが宣言されている。

 以上の宣言を受けて、ゲームエンジンを開発・販売するUnityは映画『アバター』や『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの視覚効果を手がけたWetaDigitalを買収した。買収を発表したブログ記事には、Unityが「メタバースの可能性を最大限に引き出すツールを提供することを目指す」と書かれている。

 大手GPUメーカーNVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、11月に開催された同社主催の開発者カンファレンスGTC 2021において、「メタバースは現実世界より経済的に大きくなるだろう」と発言した。同社は、バーチャル世界に現実世界のデジタルツインを構築するプラットフォーム「Omniverse Replicator」を発表している。

 またMicrosoftは、同社のコラボレーションアプリであるTeamsに関してメタバースに対応させると発表している。

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