Metaが目指す、Facebookが実現できなかった未来とは 社名改変の狙いと米国の反応
米Facebook社はイベント『Connect 2021』にて、社名を「Meta(メタ)」に変更すると発表した。あまり聞き慣れないMetaという言葉に秘められた同社のビジョンと、今後のFacebookのビジネスがどのように変化していくのかを考察してみよう。
メタバースの実現へ
そもそもMetaとは、「メタバース」という概念から名付けられたものだ。メタバースとは現在のモバイルインターネットの後にやってくるビジョンで、ユーザー同士がデジタル世界で相互に接続され、物理的な世界ではできないことの実現が可能になる。
そもそも現在のインターネットやFacebookのサービスでも、他人とつながることは可能だ。しかしメタバースでは、そこに仮想現実(VR)や拡張現実(AR)という要素が加わることで、三次元的な広がりをみせる。ユーザーはVRヘッドセットやスマートグラスを装着することで、仮想世界で自由に友人や家族とコミュニケーションがとれるようになるのだ。
メタバースの利用が広がれば、ユーザーは仮想世界の中で会議に参加したり、同僚とドキュメントを共同編集したり、あるいは3Dモデリングなど高度なコラボレーションが可能になる。またプライベートでも、ゲームや映画鑑賞、フィットネスを友人と楽しむことができる。このように、ネットワークを通じてユーザーがさらに高度なコミュニケーションができるのが、メタバースの特徴だ。
ザッカーバーグ氏の狙いと市場の反応
FacebookでCEOを務めるマーク・ザッカーバーグ氏は今回の名称変更について、「2012年と2014年にInstagramとWhatsAppを買収して以来、ブランド名の変更を考えていた」「我々はFacebook第一主義から、メタバース第一主義へと移行する」と語っている。
今回の社名変更に関する反応はさまざまだ。モバイル広告を取り扱う米MitegralのJeff Sueゼネラルマネージャーは、「Facebookにとって新しいチャンスだ。従来のソーシャルメディアはTikTokが若い視聴者を獲得するなど競争が激しいが、今回のリブランディングによりFacebookは成長を続けることができる」と好意的に反応している。
一方で広報会社の米DvMCの創業者ことDini von Mueffling氏は、「Facebookはユーザーデータのプライバシーや民主主義への影響、若者のメンタルヘルスへの問題などを抱えている。今回の社名変更は、それらの問題から目をそらすことができる」と、否定的な見解を述べている。
VR製品ブランドが刷新へ
FacebookのMetaへの社名変更は、我々ユーザーにどのような影響を与えるのだろうか。今回の発表によれば、SNSサービスのFacebookやInstagram、WhatsAppなどのブランド名はそのまま利用されるという。
一方で2022年より、Facebook傘下のVRデバイスブランド「Oculus」はMetaブランドに変更され、VRヘッドセット「Oculus Quest」も「Meta Quest」へと改名される。またVRアプリやサービスのブランド名には「Horizon」が採用される。イベントでは、次期ハイエンドVRヘッドセットの「Project Cambria」もチラ見せされた。
Facebookの事業にとって大きな分岐点となるであろう、Metaへの社名変更。メタバースという新たなビジョンの浸透には時間がかかるだろうが、Facebookのさらなる成長にかけるザッカーバーグCEOの、新たなチャレンジの成否を見守りたいものだ。