DECO*27×松丸亮吾対談 ボカロPとリスナー、それぞれの視点から語り合う「ボーカロイド史」

DECO*27×松丸亮吾 対談

DECO*27「TikTokの台頭でまた『何が流行るのか分からない』状況が生まれた

――今のボカロシーンについては、どんなことを感じていますか?

DECO*27:コロナ禍になって大変な世の中ではありますけど、一方でインターネットで活動している人たちにとっては、ここ数年はある意味追い風になりうるような状況が続いてきた部分もあるとは思っていて。それに加えて、ボカロを知らない人が、それとは知らずに楽曲を聴いてくれるプラットフォームとしてTikTokが台頭してきたのもすごく大きいと思っています。その結果、いまはまた「何が流行るのか分からない」という状況が生まれていると思っていて。そのこと自体が、僕にとってはすごく興奮できる、楽しいことです。

松丸:「グッバイ宣言」も、それまでほぼ無名だったChinozoさんが、一気にYouTubeのボカロ曲の中でトップの再生数になったりしていますよね。こういうことが起こるというのは、いちリスナーとしても衝撃的でした。曲を一度上げたら、そこからどう伸びるかは誰も想像できないし、どう広がっていくかも分からない。それって市場としてすごく自由ですし、色んな人たちが曲をつくってくれたら、僕らも色々な曲に会えると思うので。DECO*27さんの「何が流行るのか分からない状態で興奮している」という話に、僕は今日一番興奮しました。やっぱり、みんながつくりたくてつくっているから、みんな聴いちゃうのかな、と。

――この秋には第3回目となるボカロ文化の祭典『The VOCALOID Collection ~2021 Autumn~』も開催されます。ボカコレについての印象も教えてもらえると嬉しいです。

DECO*27:僕は『The VOCALOID Collection -2020 winter -』のときに「ヒバナ」と「乙女解剖」のステムデータを公開させていただいたのが最初のかかわりで、そのときも、色んな方が色んなリミックスを上げてくれて嬉しかったです。「この人、めちゃくちゃいいなぁ」と思って曲を聴いて、「オンラインで話しましょうよ」と連絡を取った人が、実は「乙女解剖」のリミックスをしてくれていることに気付いたりして。つくり手としてもめちゃくちゃありがたいですし、みんなが楽しんでいることって、見ているだけでもすごく楽しいと思うので、このイベントをきかっけにして、ボカロに興味を持ってくれる人が増えたり、それをきっかけにして伸びた人もいたりすることがすごくいいなと思っています。

松丸:新しい人を知る機会があるのはお祭りだからこそですよね。ひとつの文化を追い続けることって、超熱心だからこそできると思うので、「今はどんな曲が流行っているんだろう?」「どんな人がいるんだろう?」ということって、あまり調べない人もいると思うんですよ。ボカコレはそれを誰でもできるようにしてくれているイベントなのかな、と思っています。僕がもともと好きで聴いていたNanaoさんが、「ボカコレランキング2021年春」でTeary Planetとして総合第3位になって、「僕、この人知ってる!」とすごく嬉しくなったりもしました(笑)。そんなふうに、新しい人たちを追うきっかけになる機会をこれからもつくっていただけたら、僕らもボカロシーンをさらに楽しめるのかな、と思っています。

――最後に、ボカロシーンの今後について楽しみにしていることがあれば教えてください。

DECO*27:僕らがボカロ曲の投稿をはじめた頃って、言葉を選ばずに言うと結構バカにされたりもしていたので、今の状況を見ていると「本当に変わったなぁ」と思います。あとは、もうひとつぐらいボカロPとしての成功例が出てきてくれたら嬉しいな、とは思っています。「プロデューサーとして成功する人」「アーティストとして成功する人」「ボカロPとしてずっと成功する人」がいるとして、あともうひとつくらい、成功のパターンが出てきてくれたら嬉しいな、と。それが何なのかは、全然思いつかないんですけど。

――松丸さんはどうでしょうか? 最近はリスナーとしてボカロ文化を楽しむだけでなく、配信番組『MYSTERY CREATORS supported by ZONe』(第一回のゲストとしてDECO*27が出演)を通して、アーティストの魅力を伝えるお仕事もされています。

松丸:僕がリスナーとして、潜在的なファンがたくさんいる中で、そこからもっと多くの人が、能動的に曲を買ったり、ライブを楽しんだり、というふうに転じていってくれたらいいな、と思います。ボカロにかかわるクリエイターの方々が活動を維持できるような環境をどのように整えるかによって、この文化の広がり自体が変わると思うので、そういう部分はリスナーとしても発信していきたいな、と思っています。僕はすごいものや面白いものをつくった人にはお金がいくべきだと思っているので。

DECO*27:間違いないですよね。そして、そうしてもらったお金を、クリエイターはさらにいい曲をつくるために使っていくべき。そういうサイクルが生まれてくれたらいいな、と。

松丸:なので、これからも色んな人たちを応援して、どんどんお金を使っていこう、というのが、僕のいちボカロリスナーとしての今の気持ちです。

■イベント情報
『The VOCALOID Collection ~2021 Autumn~』
開催日時 :2021年10月15日(金)~17日(日) / 前夜祭:10月14日(木)
開催場所 :ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか
公式Twitter:https://twitter.com/the_voca_colle
公式サイト:https://vocaloid-collection.jp/
協賛:東武トップツアーズ株式会社、#コンパス ライブアリーナ
協力:株式会社インクストゥエンター、株式会社インターネット、株式会社エクシング(JOYSOUND)、ガイノイド、カクヨム、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、産業技術総合研究所 RecMusプロジェクト、株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ、Twitter Japan、一般社団法人 日本ネットクリエイター協会(JNCA)、株式会社NexTone、VOCALOMAKETS、ヤマハ株式会社
メディアパートナー:InterFM897、MTV、『GAKUON!』、JFN、テレビ朝日ミュージック、 『バズリズム02』、『BOMBER-E!』、『RADIO MIKU』

『ボカコレステーション~2021 Autumn~』
【DAY1】 2021年10月15日(金)17:00~ https://live.nicovideo.jp/watch/lv333442908
【DAY2】 2021年10月16日(土)17:00~ https://live.nicovideo.jp/watch/lv333443057
【DAY3】 2021年10月17日(日)17:00~ https://live.nicovideo.jp/watch/lv333443082

「VOCALOID(ボーカロイド)」ならびに「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。

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