『テイルズ オブ アライズ』は、テイルズらしさを見直した意欲作だーー3つの観点から考える

仲間とのコミュニケーションでは廃止された要素も

 “テイルズらしさ”を定義するうえで重要になるのは、仲間との交流ではないだろうか。なぜなら、これまでの同シリーズが、物語に直接影響しないキャラクター達の「行間」を徹底的に描いてきたからだ。

 たとえば、それは本編と直接的な関わりのない会話が描かれた「スキット」や、戦闘終了後の掛け合いなどにも表れているだろう。同シリーズでは、本筋のストーリーを描くうえでは必要でないはずのこれらの要素に、膨大な量のテキストとボイスを収録している。そして、このように行間を濃密に描いているからこそ、仲間と旅をしているという実感が湧き、キャラクターに愛着を持ちやすいのも本作の魅力だ。

 だからこそ、仲間とのやり取りは『テイルズ』を構成する大切な要素といえるだろう。しかし、『テイルズ オブ アライズ』ではこのようなコミュニケーションの描き方にも変化を加えている。

 個人的に驚いたのは、戦闘後の掛け合いの廃止だ。これまでの『テイルズ』では、戦闘が終了するたびにキャラクターが決め台詞を言ったり、コミカルな掛け合いが描かれたりした。このいかにもアニメ的な演出こそ、同シリーズの醍醐味とも感じていた。

 しかし、本作では思い切ってこの要素が廃止された。掛け合いの廃止を嘆いたユーザーは多かったはずだが、その代わりに戦闘後はすぐ探索パートへ移行し、直後に連戦することもできるなどスピード感が担保されている。

 かといって、仲間とのコミュニケーションが希薄になった印象はない。それは、戦闘後の掛け合いを失くした代わりに、さまざまな場面でキャラクターがリアクションを取ってくれるからだろう。

 たとえば、戦闘中の会話だ。精霊術の使い手であるリンウェルが敵を撃破すると、同じく精霊術を扱うシオンが、彼女を遠回しに褒めるようなやり取りが交わされる。また、アルフェンが状態異常になった場合には、仲間が心配しているにもかかわらず本人は症状を自覚していないといった天然ぶりが披露される。

 フィールド上の行動に対して仲間のリアクションがあるのも好印象だ。牢屋に生えていたハーブや回復アイテムを拾った際には、「これは(食べても)大丈夫なのか」といったリアクションをするほか、水中から陸地へ上がれば「炎の剣は無事か」と心配するアルフェンと、それをたしなめるシオンのやり取りが描かれる。

 さらに、新たに追加された野営スポットでは、眠る前に会話を共にするキャラクターを選択し、親交を深めることができる。先述した回復コストの高さも相まって、野営地は旅をするうえで欠かせない存在となっているため、プレイヤーはよりスムーズに「仲間と旅をしている」という没入感を得られるだろう。

 また、キャラクターの表情の変化が繊細に描かれているのも見どころ。言葉では表現しきれない怒りや葛藤、切なさなどを表情だけで雄弁に語らせている。ひいても、自身の呪いにより人との距離を測りかねるシオンの表情の細やかさには、目を見張るものがある。

 このような工夫を重ね、“テイルズらしさ”を担保しつつもプレイヤーにとってよりリッチなゲーム体験となるよう進化を遂げたのが『テイルズ オブ アライズ』だ。

 本作は、近年やや停滞気味に感じられた“テイルズらしさ”を再定義し、現代にマッチした形に生まれ変わらせた意欲作といえるだろう。今後の同シリーズの展開を占う「節目」の作品にもなったはずだ。良質な和製RPGを求めている人はぜひ遊んでみてほしい。

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