月ノ美兎は、VTuberの“カッティングエッジ性”を代表し続ける

月ノ美兎が体現する、VTuberの“先端性”

「ヴァーチャルユーチューバーは、わたくしにとって天職なのかもしれない」

 これは月ノ美兎が活動をし始めた最初期、Youtube登録者数を1000人に乗せようと躍起になっているときに、月ノ美兎が友人にむけて話した言葉だという。

 それから約3年を経たいま、彼女のYouTube登録者数は70万人をこえ、自身が所属する「にじさんじ」は大きく成長し、自身はにじさんじを引っ張る存在へと成長した。何より彼女は、VTuberとは「メジャーシーンに対するカッティングエッジ」であるというイメージを多くの人に植え付けてきた、まさしくVTuberの顔役のひとりだといえよう。そんな彼女が、活動初期から現在に至るまで“カッティングエッジ”であり続けた理由を紐解いてみようと思う。

 月ノ美兎の配信と聞いてまず挙がるのは、にじさんじナンバーワンともいえよう雑談力。その後にはにじさんじ内外で「雑談配信」を好むライバー・VTuberを増やしたきっかけになっているのかもしれない。

 それまでは友達にしていたような面白体験や雑談を、YouTubeの生配信でするようになったとも語る彼女。概ね1〜2時間ほどで展開されるトーク内容は枚挙に暇がなく、体験レポートも含めても「なぜそれをしようと思った?」「どうしてその場面に遭遇する?」と思わされるようなエピソードばかりだ。

・幼少期に下北沢駅前でみた『ドラえもん』コスプレグループと警察の話
・小学校のときに雑草を食べ、花の蜜を吸っていた話。
・ジビエ料理を食べに行くなど、一風変わったものを食べることが多い。(蚕、バッタ、トド、スズメ、クリオネなど)
・断食道場へ行き4日ほど食事を抜いた話
・下北沢の路上で月ノ美兎によく似た「謎ノ美兎」と遭遇する

 下ネタを含めて大っぴらに人と話すには憚られるような話題や、オカルトめいたエピソードをいくつも持ち合わせ、自身で描いたイラストを使いながら丁寧に話し、コメント欄と会話していく。こうして広まっていったのは、「清楚なみんなの委員長」というキャラクターデザインとは真逆の、「危うさ」「ヤベー奴」というイメージだ。彼女の活動初期から現在につづく、両面性あるキャラクター性を決定づけたともいえよう。

 こういった部分に留まらず、幼少期から両親の影響で映画・アニメ・マンガなどを中心にしたサブカルチャーに浸り、中学からはパソコンを使ってネットカルチャーへと傾倒、ニコニコ動画を中心とした00年代終盤以降のネットカルチャー/サブカルチャーに大きく影響を受けている。

 ネットミームを楽しんでいた少女が、自身がネットミームとなるほどの存在へと成長していく、ネットカルチャーから得てきた素養が彼女のオリジナリティを生みだしたといえよう。

 そんな彼女がファンであることを公言しているのが電脳少女シロだ。VTuber四天王として最初期から活躍を続けていた彼女に対して、『ヤシロ&ササキのレバガチャダイパン』出演時に自己紹介のコーナーにて憧れの人物、尊敬している人にとして名を挙げているほどだ。

 TVアニメ『バーチャルさんはみている』では同じく初期から活動していたミライアカリや猫宮ひなたらと共演を果たすなど、ともにVTuberを盛り上げつづけている同志として活動し、こういった経緯もあってか、彼女の交友関係も2018年前後から活動を続けているVTuberが多い。にじさんじ内にも彼女の影響度は大きく、二期生の剣持刀也と鈴鹿詩子、卯月コウ、リゼ・ヘルエスタらは、彼女にあこがれてにじさんじの門を叩いている。

 そんな彼女によるゲーム配信というと、5時間を越えるようなFPSやRPGのアクションゲームの長時間ではなく、シナリオを重視したゲーム・アドベンチャー系のマイナーゲーム・フリーのインディゲームを配信に選ぶことが比較的多い。ゲームに多く触れることがなかったということもあり、マイペースにゲームを進めるタイプで、自分のツッコミや洞察力を活かした配信が非常に多く、リスナーからはその鋭い見識に驚きのコメントが寄せられることが多々ある。

 そういった部分がもっとも強い配信といえば、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』配信だろう。2020年4月から数か月に渡って配信し、公式サイドからの働きかけもあり、樋口楓とともに『アイドルマスター シャイニーカラーズ2.5周年記念配信』を担当。現在に至るまで多くのVTuberが同作品を配信プレイする流れを作り上げた。

【初見】”シャニマス”ってゲームをやろうと思うんだ【月ノ美兎/にじさんじ】

 彼女の「アイドルマスター」シリーズへの愛は深く、765プロが中心となった『THE IDOLM@STER』からアイマスをプレイし続けているプロデューサー(プレイヤー)であり、『アイマス』楽曲を手掛けていたササキトモコに自身のファーストシングルの作曲をお願いするほど。先日には月ノが加わっているにじさんじ内ユニット・JuvveLで、ササキトモコ作曲の「アタシポンコツアンドロイド」をカバーしている。

 現在は公式コラボ配信は視聴できなくなっているが、30回以上にも渡って各キャラクターをじっくりプレイしてきた配信はしっかりと視聴できる。彼女の高い熱量、鋭い洞察眼、オタク的な素養や見識をフルに活かした配信シリーズだといえよう。

 こうしてみると、VTuber・にじさんじの活動圏域を徐々に大きく広げるように活動してきた彼女。「にじさんじのリーダーという意識は全くない」とも「3年間にじさんじのことを考えなかった日なんて一日もなかったんですよ」とも語るように、彼女は面白配信を届ける一人のストリーマーでもあり、にじさんじを支える大黒柱でもあった。この数年に渡るジレンマや環境の変化は、彼女に多くの影響を与えてきた。



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