ハリウッドザコシショウが語る、YouTubeと向き合い続けた12年 「途中で放り出すのはダサいと思っちゃう」
多くの人気芸人がYouTubeチャンネルを開設し、それぞれにファンを楽しませている現在。そのなかで唯一無二の存在感を放っているのが、ハリウッドザコシショウの公式チャンネル「ザコシの動画でポン!」だ。
動画投稿が開始されたのは、なんと2009年9月のこと。以降、コツコツ毎日投稿を続けており、“芸人YouTuber”ブームの最中でも、まったくブレずに尖った動画を送り出し続けている。大ブレイクを果たし、多忙を極めるなかで、なぜ彼は今も動画を投稿し続けるのか。8月8日に自身初となる単独ライブのネット配信を控えるハリウッドザコシショウに、動画活動が持つ意味と、変わりゆくメディア環境についてじっくり聞いた。(編集部)
「『毎日動画上げます』と言ったら、やるのがプロだろ」
――昨年来、芸能人のYouTube参入が相次いでいますが、ザコシさんがYouTubeへの動画投稿をスタートしたのは、なんと2009年9月。当時を振り返ってもらえますか。
ハリウッドザコシショウ(以下、ザコシ):動画自体はその前から作っていて、最初はアメブロの「アメーバビジョン」という動画共有サービスで投稿していたんですよ。それが終わってしまって、YouTubeに移行したのが2009年の9月だったということで。
ーーブログもYouTubeも現在に至るまで毎日投稿を続けていて、真面目だと言うと失礼かもしれませんが、すごいことだと思います。
ザコシ:例えば芸人でも、途中でやめてしまうのがほとんど。ブログでもYouTubeでも、始めるときは「やります!」なんて大々的に告知するのに、毎日更新していたのがだんだんと週1になり、月1になり、半年に1回になって、そのままやめちゃうでしょ? だったらね、最初っからやるんじゃねえと(笑)。「毎日ブログ書きます」「毎日動画上げます」と言ったら、やるのがプロだろと思う。
――ただ、YouTubeの動画だけでも12年に迫る勢いで、これは普通じゃないことかと。
ザコシ:30分の動画を1日1本ずつ絶対上げろ、ということだったら確かに大変だけど、僕の中では1秒の動画だけでもいいんですよ。「ザコシは面白い」と思ってくれている人に見てもらいたいのはもちろんだけど、芸人だったら日々いろいろ考えて、脳を活性化しておかないといけないし、毎日1回YouTubeに動画を上げる、日々そのネタを考える、ということ自体が大事というか。そこで考えたことが日々積み重なっていって、『R-1ぐらんぷり2016』のネタになったり、『(さんまのお笑い)向上委員会』のネタになったり、『ドキュメンタル』でやるネタになったりしているから。
――確かに、YouTubeで追いかけているファンからすると、その原型を知っている、という密かな楽しみがあります。いくつか消えてしまっている動画があるのが、少し残念ですが。
ザコシ:そうそう、売れるとね(笑)。言葉狩りじゃないけど、あとで問題になったら嫌だし、仕方がないところもあって。ゲームとか音楽とか、権利関係をちゃんとしなきゃいけないものもあるしね。
「やっちゃいけないことが増えているのは悲しい」
――もともとアンダーグラウンドだったYouTubeがオーバーグラウンドになったいま、やはりコンプライアンス的なところもより繊細な判断が必要になったと。芸人さんも含め、芸能人が続々YouTubeデビューを果たしている現状については、どうご覧になっていますか?
ザコシ:始めるのはいいんだけど、やっぱり途中で放り出すのはダサいなと思っちゃいますね。僕はテレビにまったく出られない時期に、松本(人志)さんの『一人ごっつ』を観ていて、これはなんて素晴らしい番組なんだと思ったんですよ。というのは、30分の放送の中に松本さんがやりたいことがすげえ詰まっていて、アイデアが数珠つなぎで出てくる。大喜利をやってみたり、紙芝居みたいなことをやってみたり、一人コントをやってみたり。一人で視聴者を飽きさせない、アイデアと構成が本当にすごかった。だから、自分も売れていない状況の中でも、自由にできる動画でそれを毎日やってやろうと思った。
それで実際に動画の毎日の投稿を続けてきた自分からすると、忙しいからとか、再生されないからとかでやめるのはありえないし、これが面倒になったら引退の時期かなと。例えば、後輩と飲みに行って酔っ払って帰ってきて、ベロベロで眠たくても、つまんないやつでもいいから何かしらやるんですよ。
――やはり内容を自分でコントロールできるYouTubeは、ザコシさんにとっていまも大切な場なんですね。
ザコシ:だからこそ、昔と比べてやっちゃいけないことが増えているのはちょっと悲しいですよね。YouTuberの人もいろいろ叩かれていて、そりゃ法律を破っちゃいけないし、「表に出る人間は倫理観を持ってやらないと」というのも正論なんだけど、全員が全員いい子じゃつまらないでしょ? 彼らには芸人みたいな上下関係から学べるという環境もないし、そこまで言わなくてもいいじゃん、と思うことも多いですね。
まあ、本来ははみ出しものの芸人こそ、いまはめちゃくちゃ真面目に生活してますけど。同じ事務所の錦鯉が『M-1グランプリ2020』の決勝で活躍して、ようやくいい感じになっているのに、飲みに行って労うみたいなこともできないし。朝起きて、現場に行って、収録が終わったらすぐ帰ってくる……っていう本当にサラリーマンみたいな生活だから。
ーーいまは大活躍の錦鯉さんも、ザコシさんのファンはYouTubeの動画でよく知っていて、M-1ファイナリストになったときは盛り上がっていました。
ザコシ:あいつらのネタこそ、アホ丸出しで面白いですから。(長谷川)雅紀はアホやし、渡辺(隆)はちょっと賢い。そのギャップがいいのかもしれない。渡辺の方がちょっと若いといってもおじさんだし、「老人とおじさん」のコンビなのもすごいよね(笑)。