ディスカバリーチャンネルの事業部長、なぜ無人島でサバイバル? YouTube番組『WILD Allie』のアリー氏を直撃

『WILD Allie』で話題のアリー氏を直撃

 いまやあらゆるコンテンツが楽しめる一大動画プラットフォームとなったYouTubeで、異彩を放つチャンネルがある。ノンフィクション/ドキュメンタリー番組を届ける世界最大級のネットワーク「ディスカバリーチャンネル」の公式チャンネルだ。「ザ・秘境生活」「ザ・無人島生活」「THE NAKED」など、YouTube上で高い人気を誇るサバイバル系のコンテンツを中心に、ユーザーの好奇心を刺激し続けている。

 そんなディスカバリーチャンネルが昨年年末から今年2月にかけて、満を待して送り出した、YouTubeオリジナルのサバイバル番組が『WILD Allie』だ。「水なし、食料なし、テントなし、ナイフなし」の過酷な無人島生活に挑んだのは、なんとディスカバリーチャンネルのコンテンツ事業部長であり、教養番組『Dbox』でナビゲーターを務める榊原アリー氏だ。“無人島OL素人サバイバル”とのキャッチコピーがつけられた『WILD Allie』はどんな経緯で生まれたのか。アリー氏が本企画で学んだこと、ディスカバリーチャンネルが送るコンテンツの魅力とともに、次回作の構想まで語ってくれた。(編集部)

「この時期に誰かにサバイバルに行ってもらうのは申し訳ない」

――バイリンガルMCとして活躍し、ディスカバリーチャンネルのコンテンツ事業部長という立場もあるアリーさんが、あれだけ過酷なサバイバルに挑戦するという企画自体にインパクトがありました。もともとはコロナ禍で、世界で最も有名なサバイバリストのひとり、エド・スタフォード氏の来日企画が叶わなくなったことがきっかけだったそうですね。

アリー:2020年の3月には来日が決まっていて、大規模なイベントも予定されていたんです。エドさんは日本でも大人気で、初めてファンとの交流イベントができる、と盛り上がっていたのですが、ちょうど新型コロナウイルスの感染が広がり始めてしまって。当時は「アジアが危険だ」と言われていたこと、また奥様が妊娠しているデリケートな時期だったこともあり、来日を見合わせることになりました。落胆しているファンの皆様のために、YouTubeチャンネルでエドさんを招いてのZoom飲み会なども配信したのですが、やはり見たいのはサバイバルであって。そこで何かしらアクションを起こす必要があるけれど、エドさんは動けないし、大規模な撮影も難しい。それなら、日本でサバイバルコンテンツを作ってしまおう、という発想に行き着いたんです。


――そこから人選が進んでいったんですね。

アリー:そうですね。最初はタレントさんの起用も考えたのですが、それをディスカバリーチャンネルでやる意味はあるのか、視聴者の方々に響くのか、という疑問が生じて。その点、私は身近な疑問を深掘りする番組『Dbox』に出演していましたし、チャンネルの視聴者の方に顔と名前くらいは分かっていただけているだろうと。この時期に誰かにサバイバルに行ってもらうのは申し訳ない、という気持ちもありましたし、また地上波のサバイバルコンテンツも素晴らしいのですが、ディスカバリーチャンネルではよりリアルで、厳しいチャレンジをすることになりますから、それなら全責任を負える私がやってしまった方がいいのではないかと考えました(笑)。

――すごい決断ですね。不安はありませんでしたか?

アリー:不安はありましたが、それは番組が成功するか失敗するかではなく、前向きに挑戦できるかどうかが重要だと思いました。エドさんの姿を見ていると、何事も前向きにやり遂げるという精神だけを大事にすれば、視聴者の方々はきっとよろこんでくれるのではないかと。

【無人島OL素人サバイバル】WILD Allie | Ep.1「上陸」 (ディスカバリーチャンネル)

「辛い経験も含めて、すべて楽しかった」

――なるほど。その“前向きさ”は初日の夜、多くのことがうまくいかないなかでも、アリーさんが星の美しさに感動していたり、また終盤に“無人島メイク”にトライしていたり、というところからしっかり感じられました。

アリー:幼少期からわりとポジティブな性格なのですが、この番組に関しては、私に求められているのはサバイバルスキルではない、ということを自覚していましたし、どんな過酷な状況でも明るい要素を探して、“楽しさ”を伝えることだと考えたんです。その意識はずっとありましたね。

――辛い環境でもまったく悲壮感がなく、結果として、視聴者が純粋に応援できる番組になっていたと思います。サバイバルには「ファイヤー(火)、ウォーター(水)、シェルター(住居)、フード(食糧)」の4つが重要だ、ということですが、道具を使わずに火を起こすことがこんなに大変なんだ、という当然のことにあらためて気づかされました。サバイバルで一番辛かったのは、どんなことですか?

アリー:火起こしも大変でしたが、「辛かった」というより「難しかった」という感覚で、夜が氷点下で本当に寒かったことを思い出します。あとは、3日目になるまで水が飲めなかったのも厳しかったですね。思考能力がどんどん低下しているのがわかって、呂律が回らず言葉が出てこないし、判断力もなくなっているな、ということは2日目くらいから自覚していて。その場でじっとしていたわけでなく、常に動き回っているなかで水が飲めなかったので、これまで経験したことがなかった、強い脱水症状になってしまったんですよね。

――逆に、一番楽しかったのはどんなことでしょう?

アリー:振り返ってみると、辛い経験も含めてすべて楽しかったですね。すみません、答えになっていなくて(笑)。


――無人島での生活はシンプルなものかと思いきや、生存のためのタスクが非常に多く、体もそうですが頭もフル回転させなければいけない、ということもあらためて伝わってきました。

アリー:そうなんです。ディスカバリーチャンネルでは基本的にプロフェッショナルがサバイバル企画に挑んでおり、簡単そうに見せるのが彼らの仕事ですし、『WILD Allie』は「それを見ていただけの素人」が挑戦するとどうなるのか、という検証の意味もあって。より感情移入していただいたり、「自分だったらどうなるか」ということをリアルに想像していただける内容にできたのかなと思います。エドさんも、同じくイギリス出身の人気冒険家、ベア・グリルスさんも、簡単に飲み水を見つけますが、実際には難しいですし、泥水を濾過したものも、やはり飲むのは抵抗があります。でも、脱水症状になると、「飲める!」という気持ちになる。そういう考え方の変化も楽しんでいただける要素のひとつなのかなと。

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