『Virtua Fighter esports』に託されたバトン くすぶる国内eスポーツ市場で求められる役割は
6月1日、『Virtua Fighter esports』がセガより配信開始となった。
対戦格闘の草分けとして、黎明期からジャンルを牽引してきた『バーチャファイター』シリーズ。今回リリースされた最新作は、ゲーム業界にどのような影響を与えていくのだろうか。
“3D対戦格闘の草分け”『バーチャファイター』シリーズから11年ぶりの新作が登場
『Virtua Fighter esports』は、3D対戦格闘の人気シリーズ『バーチャファイター』より11年ぶりに登場した最新タイトル。2010年より稼働した前作『Virtua Fighter 5 Final Showdown』のフルリメイク作品だ。本作にはグラフィックの進化にくわえ、オンライン対戦モードの充実や観戦機能の実装など、さまざまなパワーアップが盛り込まれた。タイトル名どおり、“シリーズのeスポーツ化”を見据えた1作で、発売元であるセガは今後、公式のeスポーツ大会『Virtua Fighter esports SEASON_0』を開催する予定だという。価格は3,300円(税込)となっているが、現在はPlayStation Plus・PlayStation Now加入者(※)限定で無料配信されている。6月2日からはアーケード版も展開された。
※PlayStation Plus加入者は2021年8月2日まで、PlayStation Now加入者は終了日未定
くすぶる国内eスポーツ市場。 『Virtua Fighter esports』に求められる役割
「eスポーツ」という言葉が日本で浸透し始めたのは、2018年ごろのこと。以前は、ゲームカルチャーに造詣の深い識者・フリークの間でしか聞かれなかったこの言葉が、メディアでも頻繁に扱われるようになり、より一般的なものとなった。
KADOKAWAグループでゲームメディア事業などを手掛ける株式会社KADOKAWA Game Linkage(2019年9月30日以前は株式会社Gzブレイン)が発表したデータによると、2017年の日本のeスポーツ市場規模は3億7,000万円だったが、翌年の2018年には、前年比13倍超の48.3億円となった。当時は、『Fortnite』や『荒野行動』、『PlayerUnknown's Battlegrounds』といったタイトルがリリースされた時期である。これらがトレンド化を牽引してきたバトルロイヤルの分野は近年、eスポーツを代表するジャンルのひとつとして台頭を見せる。2017年末には国際オリンピック委員会(IOC)において、eスポーツを五輪競技として採用する議論が本格的に始まった。
株式会社KADOKAWA Game Linkageは、同市場の拡大が今後も続いていくと予測する。しかし、その代表ジャンルは、黎明期を支えた「対戦格闘」から「シューティング」へと移り変わりつつある現状だ。
そのような時勢のなかでリリースされる『Virtua Fighter esports』には、市場拡大・eスポーツ定着に向けての役割と同時に、対戦格闘ジャンルの復権に対する役割も求められていくだろう。6月11日には、同様にジャンルの人気を牽引してきた『ギルティギア』シリーズより、最新作『GUILTY GEAR -STRIVE-』もリリースされる。かつて国内eスポーツの代名詞だった対戦格闘が、2021年に迎えるターニングポイント。同ジャンルの復権なしに、国内におけるeスポーツの定着はありえないのかもしれない。『バーチャファイター』シリーズ最新作には、さまざまなバトンが託されていると言えそうだ。
■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro
<参考>
http://gzbrain.jp/pdf/release181211.pdf
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000008428.000007006.html
https://www.asahi.com/articles/ASKBY22W2KBYUTQP009.html