認知症を患ったAIとの会話で看護スタッフの負担を軽減……世界初のAIアバター誕生の背景を探る

 オーストラリアの認知症関連団体「デメンティア・オーストラリア」は5日、認知症患者の没入体験を可能とする世界初のAIアバターをローンチしたと発表した。

 認知症を患ったAIアバター「Ted」との会話の中で、実際の認知症患者とのコミュニケーションスキルを培っていくことが最大の狙いだ。認知症患者とのコミュニケーションについては介護のプロでさえも手を煩わせる分野であり、介護施設のスタッフの身体的および精神的負荷の軽減に重きを置いた画期的なアイテムであるといえよう。

 今回、世界初のAIアバター「Ted」の開発に携わったデメンティア・オーストラリアのCEOを務めるマリー・マッケイブ氏は「介護施設のスタッフはより安全な環境の中で、ミステイクから学習しながら、認知症患者とのコミュニケーションにとって最善の方法を習得することができる。これは介護施設のスタッフのスキルアップ、ひいては認知症患者のQOL向上にも繋がる革新的なヴァーチャルツールである」とコメントしている。

 オーストラリアといえば、世界でも指折りの長寿国として知られる。2036年には65歳以上の人口が全体の24パーセントに達し、さらに認知症患者に限定すれば2058年までにその数は約110万人にものぼるともいわれている。

 また、今回のデメンティア・オーストラリアの知見は、共感や理解を促すうえでアバターをどのように活用していくべきかを示す良い事例となり得るとも捉えている。

 一言に認知症関連テックと言っても、認知症の診断・治療を助けるものから、認知症患者および家族の生活をサポートするものまで実に幅広い。認知症の診断を助けるものについては国内外において互いに競い合うように続々登場しているが、国内では今年初め、東京大学医学部附属病院老年病科の秋下雅弘教授が国立研究開発法人日本医療研究開発機構による支援のもと、東京都健康長寿医療センターと共同で、顔だけで認知症かどうかを即座に判定可能なAIを開発している。老化現象は全身に現れるわけだが、特に顔は余命のほか、加齢とともに進行する動脈硬化や骨粗鬆症の発症の有無を判定するうえで重要な意味を持つ。また、顔から判断される見た目年齢が実際の年齢よりも認知機能との強い相関を示していることはすでに実施した研究を通じて明らかにされたが、基本的に時間もお金もかからない非侵襲的な手法だ。

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