連載:クリス・ブロードの「ガイドブックに載ってない日本」(第5回)

外国人YouTuberの僕から見た、“日本の変わるべき部分”

新型コロナウイルスが与えた影響

 とは言え、現在は海外に渡航するのは難しい状況です。COVID-19は、私のYouTube活動に様々な面で影響を与えました。

 まず、ステイホームによりYouTubeを楽しむ人が増え、私のチャンネルの登録者数も一気に増加しました。ただ、それに伴って広告収入も右肩上がりになったわけではなく、YouTubeで広告を展開する企業が減少したため、全体の広告収入は減りました。

 動画の内容は、屋外から室内撮影メインのものへと変化しました。私は旅動画を得意としていますが、新型コロナウイルスが蔓延している状況では、人に移動を勧めることは控えなくてはなりません。なので、外出自粛で自分自身2ヶ月ほどアパートに篭り、少ないアセットでも最大限のポテンシャルを活かせるようにとグリーンスクリーンの使い方を学び、自分の考えを語る動画にシフトしました。その時の勉強の成果が、自粛中にアップロードした「Why I DON’T Watch JAPANESE TV」です。

Why I DON'T Watch JAPANESE TV

 この時の動画はここ1〜2年に私が作ってきた動画の中で2番目に好評で、コメント欄が多いに盛り上がりました。1番人気の作品は「What Teaching English in Japan was REALLY Like」という、日本での英語教師時代の経験を語ったものです。どちらも慎重に脚本を書きましたし、画面の向こうのひとりひとりを意識しながら、友人に語りかけるように撮影しているので、視聴者に親近感を持ってもらえる動画にもなっていると思います。

 しかし、時間と労力を費やした大作よりも、考えをただ話すだけのこの動画の方が、喜ばれたというのは驚きました。

 私は屋外に出て難しい撮影に挑戦することに楽しみを見出しているので、そうした活動は今後も続けていきますが、今後は初心に戻ってトークメインの動画もバランスを見ながら増やしていこうと思いました。屋外に行って苦労して撮ったものだけが優秀なコンテンツと限らないということは認めなくてはなりません。

コロナ禍で撮った「What Driving in Japan is REALLY Like」

 新型コロナウイルスが猛威を奮い出した2020年の1月2〜月は、月に室内撮りの動画を3本ほどアップロードしましたが、その後はドローンの扱い方と車内撮影の方法を学びながら、日本で車を運転することがどういうことなのかを紹介した「What Driving in Japan is REALLY Like」を作りました。

日本でドライブすることの実際は?

 山形で英語教師をしていた頃は、学校が終わるとリラックスするために音楽を聴きながらひたすら車を走らせたものです。しかし、街中を運転することが好きではないので、仙台への引越しを期に手放してしまいました。

 最近になって改めて車を購入したのは、COVID-19も理由のひとつですが、これからはもっと田舎の方にも自由に足を伸ばしたいと考えたからです。車窓から見える日本の田舎の景色は、いつだって息を飲むほど美しく、心から魅せられます。都会が一番だと言う人もいますが、私は水田や山、神社といった田舎の風景に強く惹かれるんです。新型コロナウイルスで家から出られない人たちが少しでも開放的な気分になれるよう、外の景色を楽しめるようにと思いを込めて作りました。

 YouTube動画制作に時間がかかってしまい、アップロードの期間が空いてしまう際にはその穴埋めとして、ライブ配信を頻繁に行うようにしています。また、これはいつものことですが、自分がどんなプロジェクトを進行しているのか、クラウドファンディングのPatreonで舞台裏映像を公開し、サポートしてくれている人たちに進捗状況を把握してもらっていました。コロナ禍でも前向きに活動しているということを、支えてくれている人たちに知っていてほしいのです。

■Chris Broad(クリス・ブロード)
30歳、イギリス出身。YouTubeチャンネル「Abroad in Japan」を運営。登録者数250万人。日本を拠点に活動するトップ外国人YouTubeクリエーターとして200以上の動画を制作。東北地方太平洋沖地震に関するドキュメンタリーや、L’Arc-en-Cielのボーカルとして世界中にファンを持つHYDEのソロ活動密着動画など動画のジャンルは多岐にわたり、訪日インバウンド集客から実行まで行うTokyo Creativeと共に、日本各地の自治体や企業向けのコンテンツも制作している。2012年にALTとしてJETプログラムに参加し、英語教師として2,000時間以上を費やした後にフルタイムの動画クリエーターへ。夢はプロのフィルムメーカーになり、チョコレートでできた家を建てること。

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