プラダともコラボした「フラワーボックス」誕生秘話 気鋭のフラワーアーティストが語る新しい“サプライズの形”

一瞬の出来事でなく、心に残る“体験”や“サプライズ”が大切

 また、ニコライ・バーグマン氏ならではの感動を生み出すクリエイティブの考え方があるという。

 「色鮮やかに、おしゃれな場所で展示すれば、いわゆるフォトジェニックなものは創れるでしょう。でも『あ、綺麗でした』で終わってしまっては意味がないんです。『こんな表現があったんだ』というように、人の話に上がるような話題性やユニーク性がとても重要。それが口コミで広がっていき、ムーブメントとして広がっていくわけです。花は普遍的で、誰もが美しいというイメージを持っていると思いますが、そこにサプライズを込めることで、一瞬の出来事ではなく思い出として残っていく。いつまでも心に残るようなクリエイティブを創れるよう、常に考えていますね」

 そんな同氏にとって印象に残っているのは、2019年にハイブランドのプラダ(PRADA)とコラボレーションしたときだという。

 プラダの2020年リゾートコレクション「SEDITIOUS SIMPLICITY(扇動的なシンプルさ)」のテーマに合わせ、南青山のフラッグシップストアではコレクションのビジュアルをあしらった包装紙で包んだブーケを店先や店内の壁一面に装飾した。

 他方、プラダの青山店には期間限定のフラワースタンドを設置するなど、両店舗を連動させたコラボレーション企画は「今までにない発想で面白かった」と語る。

 「可憐で心躍るようなフラワーブーケを飾り、プラダの持つハイエンドな雰囲気やエレガントなビジュアルが引き立つよう工夫しました。インタラクティブな体験を通して、リゾートコレクションのキャンペーンを行うのは斬新でしたね」

自分を見つめ直し、今クリエイターとしてできることを見出す

 コロナ禍を契機にして、音楽やアートに携わるクリエイターひいてはエンタメ業界全体が、大きな転換を迫られている。

 社会状況が一変し、生活様式も新しくなっていく中、これからの創作活動においてどのような指針を持てばいいのか。

 ニコライ・バーグマン氏は「コロナ禍のせいにはいくらでもできる。そうではなく、どうやってクリエイションを生み出していけるかが重要」とし、次のように話す。

 「私は常にポジティブ思考で、日頃のライフスタイルを送っています。いっときコロナ禍で苦境に立たされた際も、目の前の状況にどうのこうの文句をつけるのではなく、どうすれば自分の基軸を持ってクリエイティブな活動を継続できるか思案したんです。今までと比べて自分の時間が持てるようになり、どういう風に時間を使えばいいのか。こうした中でたどり着いたのが、長年チャレンジしたかった“絵画”でした。日々忙しすぎて、着手できていなかった絵画をやろうと思ったのも、コロナ禍で時間ができたことでアーティストとしての目線を変え、自分を見つめ直し、アプローチの仕方を変えたことで活路を見出せたんです。今できることは何かを考え、そして従来のやり方に固執せずにどんどん新しいことに挑戦するのがいいと思いますね」

 フラワーアレンジメントにとどまらず、自身の培ってきたクリエイティブをさらに追求し、新たなものづくりに挑む姿勢。

 ニコライ・バーグマン氏は、これからも人を感動させる「体験」や常識を覆すような「作品」を世に送り出すことだろう。

 最後に今後の展望について話を聞いた。

 「今回初めての個展『Pop Art in Bloom』では、幼少期から好きだったアンディ・ウォーホルやキース・ヘリングに感化され、ポップアートを作りました。フォトショップなどの画像編集ツールを使ってグラフィカルな表現を行うとともに、スプレーペイントや絵具などそのときインスピレーションが湧いた様々な画材で仕上げ、ミクストメディア作品として表現したんです。

 何度も『思った通りの作品ができない...』とアトリエで悩みましたが、ポップアートとして形にしていく制作プロセスは、今後のクリエイティブ活動において大きな意味を成すものでした。私の原点は花にありますが、これからもクリエイターとして表現の可能性を模索していきたいと思います。箱根に一から公園を作るプロジェクトや、アンバサダーに就任した『くまもと 花とみどりの博覧会 2022』など現在進行中のものも含めて、精力的に活動していきたいです」

■古田島大介
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、ライフスタイル、エンタメ、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。

Nicolai Bergmann Flowers & Design
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GALLERY nicolai bergmann
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