世界中の美術館をTikTokで体験 「GoToアート」はシーンの裾野を広げる一助になるか

世界中の美術館をTikTokで体験

 全国的な新型コロナウイルスの感染者増加や、緊急事態宣言の再発令により、実際に移動を伴わず、その土地に行ったつもりになるバーチャルトラベルは、この1年で大きく需要を伸ばしている。

 そんななか、昨年10月、海外旅行が難しい現状を鑑みて、ヨーロッパの歴史ある美術館がTikTokのライブストリーミング機能「TikTok LIVE」を用いて、日本のユーザーに向けて美術作品コレクションの数々を日本語で配信する「GoToアート〜TikTok LIVEで巡る5日間欧州アートの旅〜」を行った。

 スペインのプラド美術館や、イタリアのウフィツィ美術館、オランダのアムステルダム国立美術館、フランスのピカソ美術館、イスラエルのTel Aviv美術館と、錚々たる世界的な美術館がこの試みのためにボッティチェリやレオナルド、ベラスケスやボス、レンブラントやゴッホらの作品を配信し、海外アート好きの寂しさを満たしつつ、これまでアートへ触れてこなかった層にもリーチさせたことは記憶に新しい。

 12月には、海外だけでなく国内の往来も難しいことを踏まえ、東京のアーティゾン美術館と三菱一号館美術館、広島の広島県立美術館、宮城の宮城県美術館の4ヶ所において、同企画が実施された。こちらも、宮城県美術館では「奈良・中宮寺の国宝展」の展示の特色を活かして、国宝・菩薩半跏思惟像の周囲を360°回りながら60分かけてじっくりと解説し、アーティゾン美術館では「琳派と印象派」展として俵屋宗達の風神雷神図屛風やドガの彫刻などを紹介、三菱一号館美術館では「1894 Visions ルドン、ロートレック展」において、学芸員のリアルな解説とともに、ルドンやロートレックを中心とした作品を配信し、広島県立美術館では「北斎漫画展」に、質・量ともに世界一と評される北斎漫画コレクションを保有する浦上満氏を招き「北斎漫画」の魅力を存分に解説するという豪華な配信を行った。

 そこから年が明け、3月になった現在、いまだ毎日の新規感染者は3桁を超えている。日中の人出は増え、緊急事態宣言が3月21日に解除されるとはいえ、予断を許さない状況を踏まえると、入場人数制限があるとはいえ、なかなか美術館へ足が向かない人も多いだろう。そんな状況を加味してか、TikTokは3月19日と20日に、古美術・工芸から、日本画・近代美術・現代アートまで、幅広い作品のアートが展示される日本最大級の国際的なアートフェア『Art Fair Tokyo』とコラボしたTikTok LIVE『GoToアート〜TikTok LIVEで巡るアートフェア東京2021〜』を実施。アートに造詣の深い、和田彩花(元アンジュルム)・岡部麟(AKB48)をナビゲーターに迎え、アートフェア東京に出展されているアート作品の魅力を存分に紹介していく。

 美術館に足が出向かない理由の一つは、此度の新型コロナウイルスの感染者拡大も大きいところだが、筆者の周りで話を聞いてみると、子どもが産まれたことにより、静かに見ることが困難になったことから足が向かないなど、ライフステージの変化とともに足が遠のく人も少なくないようだ。音楽もオンラインライブの隆盛により、昔は足繁く通っていたアーティストのライブを再び見ることができるようになったなど、ポジティブな話題も少なくはない。アートもこの文脈で、再び需要の掘り起こしが生まれそうだ。

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