AAA、セカオワ、ヒゲダンらのライブ手がける石川淳氏に聞く“コロナ禍での混乱とその突破口” 「ライブへの間口を広げていきたい」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた昨年4月の緊急事態宣言で、ライブやフェスが軒並み中止に追い込まれ、世の中は配信ライブへとシフト。秋口から2021年にかけて、ようやく有観客でのライブが戻り始めたかに見えたが、先日4月25日から再び緊急事態宣言が発令されるなど、いまだ混乱の最中にあるライブ業界。AAA、SEKAI NO OWARI、ゆず、Official髭男dism、Eve、SKY-HIなど、人気アーティストのライブ制作を手がけてきた株式会社ショーデザインの石川淳氏も、その渦中で奮闘する一人だ。

 今回は石川氏がこれまで手がけてきた公演や、コロナ禍での変化について話を聞くとともに、直近の公演で実現させようとしている新たな試みについても話を聞いた。(編集部)

イメージするのは“ライブのその先” ライブハウスからドームに羽ばたいたAAA

株式会社ショーデザインの石川淳氏

ーーこれまで石川さんが手がけてきた公演で、印象的だったものを教えてください。

石川:僕が1番最初に手がけたアーティストはAAAなのですが、彼らの全国ツアー『AAA TOUR 2006 -1st ATTACK-』の初日が1番印象的でした。2006年1月に博多のライブハウスで行われた公演で、それまではライブ当日をどう乗り切るかを考えていたのですが、その公演で初めて、“これから先をどうデザインするか”という目線をもちました。ライブハウスから、どうやってアリーナ・ドームツアーまでもっていくかが、はっきりとイメージできたんです。

ーー先々のことを考えるようになったんですね。

石川:今いるお客さんが、どうすればまた来てくれるか、見た後にどう行動するかをイメージし始めました。ライブでお客さんを増やすのは地道な作業で、ダンスボーカルグループという同じような活動形態で、細々と全国を回ってる人たちがあまりいなかったんです。でも5年続けると、アリーナまで行けるということを、彼らが証明してくれました。

ーーそれ以降に印象的なライブはありますか?

石川:SEKAI NO OWARIが富士急で行ったライブ『炎と森のカーニバル in 2013』ですね。彼らは天才だと思いました。ステージに巨大な木を作る構想だったのですが、これが本当に大変で。無理とは言いたくないけど、風が吹いたら倒れちゃうし、と試行錯誤してかなりぎりぎりのところを攻めましたね。

ーーお客さん側から見ても、かなり印象的なライブでしたし、バンドの世界観をイメージづける公演となりました。ステージの構想は、メンバーが考えているのでしょうか?

石川:クリエイティブなところは、メンバーや彼らの周りのチームがやっています。僕らは、いかにその構想を現場に落とし込むかを考えましたね。誰もやったことがないことばかりで大変でした。

ーーこの経験が、以降の制作に活かされた場面はありますか?

石川:あの公演以降、「ああいうことをやりたい」とおっしゃる方が増えました。僕としても、何ができて、どうすればそれに近づけるかがだんだんわかるようになったのは、その後の糧になったと思います。

コロナ禍で増える配信ライブ 大事なのは「スケール感」と「ディテール」

ーーライブ制作において、石川さんの核になっている考え方はありますか?

石川:最初は、アーティストが叶えたいことを作っていこうと考えていたんですが、最近は、見に来てくれるお客さんがその日をどう過ごすかを重視するようになりました。

 ライブでの体験は、その人の一生を左右するくらいの影響力があると思うんです。なのでまだライブに来たことがない方に、その魅力を知ってほしいですね。ライブ会場に足を運ぶハードルをなるべく下げたいですし、来てくださった方に、楽しかったと思ってもらえるものを作りたいです。

ーーそのように考え方が変わったきっかけは何だったんですか?

石川:AAAのライブで地方を回っていた話に戻るのですが、地方は東京ほどライブイベントが多いわけではないので、「ライブがあるなら行ってみよう」という方も多いんです。そして足を運んでくれたご家族の方がすごく喜んで帰っていくのを見て、これはおもしろいぞと思いました。

ーーコロナ禍において、ライブが開催できない状況にもなりましたが、ご自身や周囲のライブ制作をめぐる状況はどう変化しましたか?

石川:現場がなくなったから暇になったかというと、実はそんなこともなくて、現場では、日程調整をしてはキャンセルになる、というサイクルを繰り返していました。なかなか結果が出せないことを続けていて、だいぶ疲弊していましたね。

 そんな中配信ライブをやる方が増えてきて、撮影チームとより密にコミュニケーションをとるようになりました。ステージの作り方としては、現場のお客さんとというよりは、カメラのフレームにおさめた画の中でどう伝えるかが大事になってきます。ライブDVDを撮るのとはまた違いますし、演出やパフォーマンスを臨機応変に変えていくという試行錯誤を長い時間行っていました。

ーーその中で何か突破口みたいなものはありましたか?

石川:大事だと思ったのは、スケール感とディテールですね。

 ライブ会場で起こることは、要約すると“お客さんと出演者のエネルギー交換”だと思うんです。でも映像でその熱量を伝えるとなると、演者さんは実際のライブでも配信でもフルパワーなことに変わりがありませんが、 僕らは収録する場所の規模に見合わないくらいのセットや照明をボリューミーにする必要があります。僕らにできることは、照明の量を増やし、セットを飾りつけることでした。

ーー対して、ディテールとはどういうものですか?

石川:客席とステージの距離感では捉えられないディテールを映像で届けることですね。演奏者の手元とか、あとはメンバー間のやりとりを、カメラの位置を工夫して両方収めるようにしたりとか。現場に行くと、ギターソロをやっている横で、ボーカルの人が汗を拭いたりしてるのが見られたりして、それもライブの楽しさの1つですからね。

 あとはステージ側から見た、メンバーの背中越しの客席の雰囲気とか、なるべく普段見れないものを画として作っていくようにしています。実際のライブ体験とは別のものになりますが、エンターテインメントの1つとして作り込んでいきたいです。

ーースケール感とディテールが、うまくミックスできたと感じた公演はありますか?

石川:ヒゲダン(Official髭男dism)のライブはそれを意識しましたね。昨年9月の『Official髭男dism ONLINE LIVE 2020 -Arena Travelers-』や、ファンクラブ限定の『Official髭男dism FC Tour Vol.2 – The Blooming Universe ONLINE -』の時もです。