世界的イリュージョニスト・HARAが語る“奇跡の理由” マジックとテクノロジーの融合は何をもたらすか

 世界を舞台に活躍するイリュージョニストのHARAが、2月19日~22日の4日間、「渋谷キャスト スペース」で体験型マジックイベント「CONNECT」を開催する。

 プロジェクションマッピングとマジックを融合させた独創的なスタイルで、世界中のオーディエンスを魅了するイリュージョニストのHARA。最新イベントとなる「CONNECT」は、渋谷キャスト スペースでマジックを行い、それをヒカリエ ホールAに配信して、離れた場所にいる観衆の手の中に“奇跡”を起こすチャレンジになるという。

 このほど、同イベントを開催するに至った経緯や思い、さらには、HARA自身のイリュージョニストとしてのルーツから、テクノロジーとイリュージョンの関係まで、じっくり話を聞いた。(こじへい)

【記事の最後にHARAさんのマジック動画あり】

「CONNECT」に世界のマジシャンたちも注目! その理由とは?

――はじめに、今回開催される体感型マジック「CONNECT」についてお聞かせください

HARA:今回のイベントは、マジック界において新しい試みとなります。僕が「渋谷キャスト」でショーを行い、その映像を4台の4Kカメラからリアルタイムで「ヒカリエホールA」に送って、離れた場所にいるお客様の手の中で奇跡を起こせるか、という挑戦です。

――思いついたきっかけは?

HARA:今までマジックといえば、目の前で「トランプを一枚選んでください」というように、観てくださる方と接触することが当たり前でしたよね。でも、新型コロナウイルスの影響で、距離を取らなければならなくなりました。僕自身、昨年ツアー回ってる最中に緊急事態宣言が発令され、「お客様の前でマジックができなくなるんじゃないか」と最初のうちはふさぎこんでいました。そんな時にたまたま、アフリカから「子どもたちにズーム越しでマジックやってくれないか」っていう依頼があって。「距離が離れた状態で喜んでくれるのか?」と半信半疑だったのですが、やってみたらものすごく喜んでくれたんです。「マジックって、目の前にお客さんがいなくてもできるんだ!」という発見になりました。

 そこからのステイホーム期間は、家でZoomをつなげて色々な人にマジックを見てもらいながら、新ネタを開発していく日々の始まりです。そんなふうにして非接触型のマジックをだんだんと進化させていき、最終的にはただ画面越しにマジックを見せるのではなく、離れたところにいる人の手の中でマジックを起こすことができるようになりました。今回の「CONNECT」では、その最新のマジックを体感していただけるようになっています。

――離れたところにいる人の手の中にマジックを起こす……想像もできないですね……!

HARA:世界的に見ても今までこういった試みは例がないので、海外のマジシャンたちがすごい気にしてるみたいです。これがうまくいけば、マジシャンたちが自分の部屋にいながらにして大きなアリーナにライブ中継することもでき、家から一歩も出ずに世界ツアーを開催することだって可能なわけですから。


――With コロナ時代を見据えたイベントになりそうですね。

HARA:まさにそうですね。この状況だからこそ生まれたイリュージョンがたくさんあるので、それらを披露できるイベントが開催できることに対して、すごいドキドキワクワクしてます、今。

――ちなみに、「CONNECT」というイベント名は、どんな想いから付けたのでしょうか?

HARA:Zoomを使ったマジックの時は、ショーの最初に「今、僕たちは離れているけど、繋がっているということをマジックを使って証明します」とアナウンスしているんです。実際にショーが終わると、みんなから「離れていてもマジックで繋がれた感じがしたよ」みたいな感想をたくさんいただいて。どれだけ離れていても、たとえばアフリカにいようが、ブラジルにいようが、デジタルとマジックが掛け合えば、新しい感動をみんなと共有できると信じています。なので今回も「Connect」のタイトル通り、マジックを通して繋がれたらいいなと思いますよね。

――もともとデジタルとマジックを融合するスタイルを志向されていたHARAさんならではのイベントですね。

HARA:いやほんと、Zoomの高い年間35万円もするプロアカウントを買った甲斐がありました(笑)。無料のやつだと30分ぐらいできれちゃって……。有料だと何時間でもできて、マックス500人くらい繋がれるので便利ですね。

――早くから自己投資をされていたと。

HARA:自腹切って、日々試行錯誤していましたね。最初のうちはタイムラグがあったり、しっかり言葉を使って強調しないと何が不思議なマジックなのか伝わりにくいってことがあったり、やっていくうちに離れてる方にウケるマジックもあったりして、新しい発見が常にありました。

初舞台は小学生の時。好きな女の子を振り向かせたくて……

――ここからはパーソナルな部分をお聞かせいただければと思います。HARAさんはどういった子供時代を過ごされていたのでしょうか?

世界遺産の「熊野」というエリアに生まれ、コンビニへ行くのに車で1時間以上かかるような山の中で育ちました。子どもの頃は、インターネットもなく、山の中で毎日マジックを研究してここまでやってきましたね。

――マジックに興味を持ったのは何歳の時でしたか?

HARA:はじめて興味を持ったのは5歳の時です。家族旅行で東京へ訪れ、井之頭公園に立ち寄った際、ピエロのお兄さんがシャボン玉を吹いて、掴むとガラス球に変わるというマジックやっていたんです。それを見た瞬間、「魔法なんじゃないか」と思い、同時にマジシャンという職種があることを知りました。

――いつからプロになろうと考えていたのでしょうか?

HARA:小3ぐらい時に、夕飯の席で親に「話がある」と言い、「将来、プロのマジシャンになるから、これから学校の勉強がおろそかになっても何も言わないでくれ」と決意表明したんです。そしたら親も「やりたいんだったらやってみなさい。ただし、お金は一円も出さないから、自分でやりたいようにやってみなさい」と許しを得ました。それくらいの頃から、学校に行くバスの中で、毎日マジック練習していましたね。

――マジックをやっていく中で初めての成功体験は?

HARA:小2の時、クラスのお楽しみ会があったんです。それがマジックを人前で披露した最初の機会で、いわば初舞台ですよね。その当時、クラスに好きな女の子がいました。その子をなんとか振り向かせたくて、前年度はお楽しみ会で歌を歌ったのですが、みんなポカンとしていて盛り上がらなくて。でも翌年、リベンジでマジックに挑戦したら、その女の子も友だちもすごく喜んでくれました。その出来事があった時に「歌よりもマジックのほうが手っ取り早いな」と(笑)。いまだにその成功体験の延長線上にいますね。


――プロのイリュージョニストとしてやっていけると確信したのはいつですか?

HARA:小学生の時、村のお祭りでマジックを披露したらすごくウケたので、きっと海外に出ても食べていけると思っていました。だから、一度もバイトをしたこともないですし、他の職に就いたこともありません。「マジシャンになる」と決めた瞬間から、マジックのことばかり考えて生きてきました。

――心の底からマジックが好きなのですね。

HARA:やっぱりマジックしてる時が一番楽しいです。開発している時も楽しいし、お客さんの前に立つのも楽しい。いまだに仕事をしている感覚はないですね。日々ワクワクしていて、色々な国に行って様々な出会いがあるので、すごく楽しいです。ほんとにマジックのことばかり考えすぎちゃって、夢でもマジックをしているんです(笑)。

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