PS5、デジタル・エディションは売れば売るほど赤字? ソニー業績報告を分析
製造部門より利益が大きいエンタメ部門
業績説明会資料では、各事業セグメントの2020年度業績見通しもまとめられている。その見通しによれば、ゲーム&ネットワークサービス事業の利益がもっとも大きく、その次に利益を出しているのが音楽事業である。同事業の売上見通しは9,000億円で、営業利益見通しは1,800億円と昨年の10月より上方修正している。
音楽事業が好調な要因として、音楽ユニット「YOASOBI」や「NiziU」の発掘、同事業部傘下のアニプレックスが製作・配給に関わる劇場版「鬼滅の刃」の大ヒット、LiSAが歌う楽曲の大ヒットが挙げられている。
ゲームと音楽とともにソニーのエンタメ部門を担う映画事業の見通しは、コロナ禍による映画公開延期が影響して10月より下方修正されて2020年度売上見通しが7,500億円である。営業利益見通しはマーケティング費用を先送りしてことによって改善が見られ、上方修正された720億円となる見込みだ。
ゲームと音楽、そして映画を合わせたエンタメ部門の2020年度売上見通しを合算すると、約4兆2,800億円になり、合算した営業利益見通しは5,920億円となる。この数字は、ソニーの製造部門を構成するテレビやスマホを販売するエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション事業とモバイル機器向けのイメージセンサーを販売するイメージング&センシング・ソリューション事業の売上見通しおよび営業利益見通しの合計より大きい。2020年度決算見通しにもとづけば、同社は「製造部門もあるエンタメ企業」なのだ。
2021年度にはPS5の普及が進み、ゲームタイトルからの利益が「ハードウェアでの戦略的な価格設定による損失計上」を上回る可能性がある。ゲーム市場はクラウドゲームの台頭により変革期を迎えているが、ソニーは同市場で引き続き大きな存在感を示すだろう。
トップ画像出典:PS5公式サイトより画像を抜粋
■吉本幸記
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。Twitter:@kohkiyoshi