『PUI PUI モルカー』ヒットの今だからこそ見たいコマ撮り作品 ナイキ創業者のスタジオやYOASOBIのMVも

『PUI PUI モルカー』ヒットの今だからこそ見たいコマ撮り作品 ナイキ創業者のスタジオやYOASOBIのMVも

 目下放送中の『PUI PUI モルカー』。その人気を受けて、様々なコマ撮り(ストップモーション)作品にまで関心が向いている人も少なからずいるだろう。ここでは、そうした作品について触れていきたい(本稿では極力、大作や巨匠の作品については他に譲ることにする)。

 コマ撮りというと「素材+アニメーション」の呼称もあることから、素材で作品がジャンル分けされているようにも見える。とはいえ、全てコマ撮りとしても差し支えはない。またアナログがメインでありつつも、使われている制作ソフトとしては、現在Dragonframeが定番になっている(トップ画像はDragonframe公式サイトより)。

 Dragonflameを入手していない場合は、撮影した画像を描いた絵と同様に、タイムラインのフレームに並べて動画で出力できるソフトであれば、制作は可能である(なおデジタルにおける作品のジャンル分けは3DCGか2Dくらいであるところ、Flashの扱いでは長らく混乱した)。

 そしてコマ撮りと聞くと、ヨーロッパの作品を思い出す人も多いかと思う。しかしゼロ年代以降、コマ撮りのみというのは厳しくなり、3DCG作品も増えていった。一方1月24日には、40周年記念として巡回中の「ピングー展」がTwitterのトレンドに入っていたが、その『ピングー』も最新作は3DCGである(制作は日本)。

立体、平面、はたまた実写? 先入観を揺るがす多様性

スタジオライカ(『コララインとボタンの魔女』など)

 大作は極力、他に譲るとは言ったものの、まずは『モルカー』の監督・見里朝希がコマ撮り制作を志すきっかけとなった長編作品を生み出しているスタジオから。3DCGを3Dプリンターで出力して制作に使っていることでも知られる(3DCGソフトはMaya)。ナイキの創業者(フィル・ナイト)が経営、息子(トラヴィス・ナイト)がCEO・監督というところでも有名。

『うさぎのモフィ』

 『モルカー』同様、モフモフ素材(フェルトではなく綿だが)ということでチョイス。『リラックマ』などでおなじみのコンドウアキがキャラクターデザインを行っており、イタリアのミッセーリスタジオが制作。この『モフィ』はNHKのEテレで放送されていたが、かつて総合および教育(現:Eテレ)で放送されていた『A.E.I.O.U.』(素材は砂)なども、同じ監督(フランチェスコ・ミッセーリ)の制作になる。

『パニック・イン・ザ・ビレッジ』(原題はフランス語)

 『モルカー』同様、ジオラマ人形が使われている。未見だとホラーかと思うタイトルだが、コメディー。ショートシリーズだけでなく、長編も制作された。もし可動部のある人形が使われていたとしたら、制作期間が延びていたことは容易に想像できるだろう。ちなみに監督2人(ヴァンサン・パタール、ステファン・オビエ)は、2Dの長編『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』でも制作を共にしている。

『オオカミとブタ(オオカミはブタを食べようと思った。)』

 『モルカー』同様、ピクシレーション(実写コマ撮り)事例として。ただ、こちらは撮った写真を出力してさらにコマ撮りするという凝った作品。当時話題となり、ニューヨーク・タイムズのブログでも紹介されるなどした。これを見たオリンパスヨーロッパが同様のアイデアでCM『The PEN Story』を制作して物議を醸すも、本家の監督(竹内泰人)を招いてCM『PEN Giant』を新規制作するという状況にまで派生した。

『BONNIE』

 こちらはピクシレーションでもカットアウト(切り絵)との合わせ技(カットアウトといえばキャラクターをパーツ分けした作品で馴染みがあるかと思う)。クレジットから分かるように東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の作品だが、本作は修了制作ではなく1年次制作。監督の岡本将徳は、武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科からの進学で、大学も大学院も見里の先輩に当たる。

『Candy.zip』

 見里が大学院の1年次に制作。修了制作の『マイリトルゴート』が立体であったのに対し、こちらは平面の作品。平面というとカットアウトのように、まず紙を素材にした作品を思い浮かべるかもしれないが、どんな素材であれ平たくして寝かせれば平面ということになる(素材そのものは半立体であったりする)。そもそも手描きやセルと呼ばれてきた作品や素材も、アナログなら平面かつコマ撮りになるはずだが、もはや意識されていない。

『パクシ』

 大学院の教授でもある山村浩二が監督。昨年Eテレで20余年ぶりに再放送された本作から、制作当時のメイキングを紹介する。粘土(クレイ)が素材というと立体のイメージが強いが、本作は見ると分かるように平面である。ところで先の『BONNIE』は作品としては平面に見えるものの、撮影時まで考慮すると、平面と立体どちらになるだろうか。『オオカミとブタ』とも比較してみても楽しい。

『群青』

 おまけとして「夜に駆ける」が大ヒットしたYOASOBIの楽曲から「群青」のMV。監督の牧野惇はMr. ChildrenのMV『ヒカリノアトリエ』などを制作してきた。このほか牧野が手がけたMVを見ていくと、コマ撮りではなく人形劇であるのが分かるだろう。これはバーチャルYouTuberなどでも同様で、キャラクターをリアルタイムで動かすこともアニメーションとすべきかどうか、といった議論とも共通していて面白い。

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