連載:ゴールデンボンバー歌広場淳の「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」
歌広場淳がオススメの“格ゲーマー配信者”を大紹介 どぐら・こくじん・立川、レジェンド梅原大吾まで
大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」。今回は、いま大きな盛り上がりを見せている、格闘ゲーマーのライブ配信をテーマにお届けする。おすすめの配信者から、格ゲーを知らなくても楽しめる配信企画まで、自身もYouTube/ミルダムで配信を行う歌広場淳が語り尽くした。(編集部)
まず最初におすすめしたい二人
いま格闘ゲーマーのライブ配信が大きな盛り上がりを見せています。新型コロナウイルスの感染拡大でリアルのエンタメが停滞してしまっていること、格ゲーの大会も開催が難しく、プレイヤーたちに時間が生まれていることなど、さまざまな要因が考えられますが、配信を通じてプレイヤーの個性や魅力が表現され、周知されるようになってきたのは、単純に素晴らしい。そこで今回は、歌広場淳がおすすめする格ゲーマー配信者、配信番組について語りたいと思います。
真っ先に思い浮かぶのが、CYCLOPS athlete gaming所属のプロゲーマー・どぐら選手。魅力が多すぎて語り尽くせないほどですが、僕は何より「バランス感覚」が素晴らしいと思っています。普段は関西弁の面白いお兄ちゃんで、刺激的な発言も飛び出しますが、人が集まれば一歩引いて、MCのようなポジションでトークを回すこともできる。明るく話が聞きやすく、わかりやすいプレイヤーネームまで備えた板橋ザンギエフ(DetonatioN Gaming)選手と並んで、地上波でも大活躍できるプロゲーマーだと思います。
前回もお話ししましたが、これまでプロゲーマーの仕事は、ゲームをストイックに、黙々とプレイすることだと捉えられがちでした。しかし、近年ではゲームをプレイしている姿を通して人を楽しませたり、元気づけたりすることがより重要になってきたように感じます。特に2020年は、ゲームがオンラインを通じて「みんなで楽しむもの」になり、つまり、ゲームを通じてみんなを巻き込んで楽しませることができるということが、プロゲーマーの新たな価値の一つになりました。その点、どぐら選手は活動の最初期から、常に人を楽しませようとし続けてきた。そこに時代が追いついた、という感覚です。
そして、外せないのが、最近ではそのどぐら選手とラジオ企画「どしたん話きこか?」もスタートさせた人気者、こくじんさん。僕が出場した格ゲーおじさんたちによる配信イベント「おじリーグ」の主催者でもありますが、いまのように配信ブームが訪れる以前から長くネットで活躍され、ニコニコ動画では『こくヌキ王国』『ゲームセンターK2』という番組を持つなど、ゲームをプレイするだけでなく、その姿をエンタメとして届けてきた第一人者のようなストリーマーです。当然、いまの配信ブームの中心にいて、「格ゲーマー界隈の面白い出来事の裏には必ずこくじんさんがいる」という気がします。
「格ゲーマー人狼」が面白すぎる
そして、いま大ブレイクしているのが、そのこくじんさんが立ち上げた「格ゲーマー人狼」という企画です。タイトルの通り格闘ゲーマーによる人狼ゲームで、格闘ゲームシーンを応援してきたファンが楽しむコンテンツというところから始まり、いまや人狼ゲーム好きが格ゲーマー人狼から格ゲープレイヤーを知り、格闘ゲームに興味を持つ人が出てきているほど。格闘ゲームシーンを追いかけている層と、人狼配信を見ている層は近いようで遠かったのですが、格ゲープレイヤーであり、人狼の上級者でもあるこくじんさんがそれを一発で結びつけて、大きなファンダムを作ってしまったんです。
人狼を専門にしている番組と比較すれば、プレイ自体のレベルは高くないのですが、ルールのなかでそれぞれが自分を表現しようとする格闘ゲーマーの面白さが爆発しています。僕も人狼ゲームをやり込んだのでわかるのですが、プレイヤーの多くは「普段とは違う自分のお利口な部分」を見せつけたい。しかし格ゲーマー人狼では、効率を求めてセオリーに則った”寒い”プレイに価値を置いておらず、ゲームを盛り上げ、その楽しさを伝えたプレイヤーが輝くんです。
僕はこの連載でも、ただゲームを強くなるより、「ゲームセンターの筐体の向こうで、100円を入れたくなるプレイヤー」になりたいし、なるべきだと語ってきました。格ゲーマー人狼ではまさにそういうことが称揚されているんです。役職等がすべて見える「神視点」の配信と、それぞれの配信者視点での個人配信が同時に走っているのも画期的で、この“戦国時代”に自分の配信を盛り上げたい参加者からすると、最高の顔見世興行になっています。
ちなみにこの格ゲーマー人狼には、プロゲーマーのレジェンド・梅原大吾選手がレギュラー的に出演しています。考えてみれば、2020年は梅原大吾という存在をあらためて強く認識させられた一年でした。「格ゲーはよくわからないが、ウメハラなら知ってる」「ウメハラの試合なら観たい」と、もともとシーンの外にも影響力のあるプレイヤーでしたが、多くの有名プレイヤーが個人配信を始め、タレントになってきたときに、そのカリスマ性が翳るかと思えば、ますます光り輝いていて、梅原選手のお墨付きがあるかないかで、コンテンツの魅力すら変わってしまう。
しかも、プレイヤーとしても成長も止めず、いまも世界最強の一角にどっしりと座っているのだから、否が応でも「ありがたや~」と崇めてしまうというもの。僕はゴールデンボンバーに加入して以来、「勝ち負けのないところに行くためには、勝ち続けなければいけない」というポリシーを持って活動していますが、梅原選手はすでにその領域にいて、競技シーンでも、エンタメに寄った配信シーンでも、あまりにも大きな影響力を持っている。それがどれだけすごいことか、あらためて感じているところです。
“秘密結社”としてのラジオ企画
さて、どぐら選手&こくじんさんの「どしたん話きこか?」の話もしましたが、梅原選手の「ウメハラジオ」を始め、格闘ゲーマーのラジオ配信も盛り上がっています。僕はもともとラジオっ子で、学生時代から深夜ラジオに親しんできました。自分の好きなものを理解してくれる人が周りに少なくて、仲間が欲しかった僕にとって、深夜ラジオのリスナー特有の絆みたいなものが、とても魅力的だったんです。言うなれば、楽しみを共有する秘密結社に入るようなもので、その感覚は、かつてのゲームセンターに近いものがあります。いまはゲーセンがオープンなものになり、eスポーツブームでゲームに光が当てられるなかで、当時のクローズドな楽しさが失われている部分もあって。そのなかで、格ゲーマーが秘密結社感のあるラジオを始めるというのは、自然な流れなのだろうと思います。
なかでも僕が注目したいのは、Burning Core所属のプロ格闘ゲーマー立川選手が、若手プレイヤーを招いて当ててトークを展開する「タチバナシ」。若手は活躍すれば大きな配信番組に出演することが増えますが、その多くが「先輩たちに呼ばれて話をしに行く」という立場になるため、プレイヤーとしての凄さ、魅力は伝えられても、人間性まで伝えるのはなかなか難しい。そのなかで、自身も23歳の若手で、親しみやすい立川選手がホストであれば、相手も遠慮せずにトークできる。上からフックアップするのではなく、下の世代から盛り上げるという新しい試みで、とても意義のあることだと思います。