Ado「うっせぇわ」は国民的楽曲になるか? ガチャピンの歌ってみた動画から“さらなるバズ”を展望

 18歳の歌い手・Adoのデビュー曲「うっせぇわ」の勢いが止まらない。ネット上でのバズを受け、1月22日には『MUSIC STATION』(テレビ朝日系)が初のインタビューを展開。現在、同番組のYouTubeチャンネルにて、未公開部分を含む完全版が期間限定で公開されている。

【Ado】うっせぇわ / 初TVインタビュー完全版

 「うっせぇわ」のヒットついては、昨年の音楽シーンを席巻したYOASOBI「夜に駆ける」との類似性が語られている。

 「うっせぇわ」を手掛けたsyudouも、YOASOBIのAyaseも、ボーカロイドシーン出身のクリエイターで、動画プラットフォームやSNSと親和性の高い、中毒性のある楽曲を生み出し続けている。また、Adoは暴力的なまでに楽曲で描かれた感情を表現し、YOASOBIのikura(幾田りら)はあえて感情を抑えることで余白を作り、楽曲の世界観を際立たせるという、一見対照的なアーティスト性を持っているが、ともに「こんなふうに歌えたら」という憧れを喚起する卓越したボーカリストで、実際に「歌ってみた」を中心とする二次創作を加速させてきた。

 「うっせぇわ」が「夜に駆ける」のバズに近づいていることは、YouTubeに投稿される関連動画を見ればよくわかる。まふまふ、天月、96猫、Geroなど、人気歌い手が歌ってみた動画を投稿。ここまでは「人気ボカロ曲」によく見られる傾向だが、ヒット曲の歌唱分析を行なってきた、ボイトレ系YouTuberのトップランナー「しらスタ」が同曲を取り上げ、ストリートピアノでの演奏動画、歌が得意でない人気YouTuberのチャレンジ動画、歌詞を使った「ガチギレドッキリ」動画など、「ボカロ界隈」を超えてネットミームのような広がりを見せてきた。

 そのなかで注目したいのは、あの「ガチャピン」による歌ってみた動画の投稿だ。

【Ado】うっせぇわ 歌ってみた covered by ガチャピン

 「夜に駆ける」においては、宇野実彩子(AAA)や龍玄とし(X JAPAN・Toshl)、手越祐也や愛内里菜(R)などのアーティストが歌ってみた動画を投稿しているほか、香取慎吾やクロちゃんなどのユニークな歌唱動画も見られる。「うっせぇわ」のバズがさらに上のフェーズに進むには、こうしたアーティスト/タレントを巻き込む展開に期待がかかるが、日常の閉塞感を叩き壊すような攻撃性のある同曲は、叙情的で美しい「夜に駆ける」(根底にあるメッセージはシリアスだが)と比較して、すでに多くのファンを抱え、確立したブランドを持ったタレントにとっては、歌唱のハードルが高いと考えられる。

 その意味で、国民的キャラクターであるガチャピンが不穏かつキュートに「うっせぇわ」を歌い上げた動画は、その潮目を変える可能性があるように思う。ガチャピンの口から、<はぁ?うっせぇうっせぇうっせぇわ くせぇ口塞げや限界です>といったフレーズが出てくるなんて想像したこともなかったが、視聴者からは好意的なコメントが相次いでおり、「イメージが崩れた」どころか、「新しい魅力が見つかった」とする声が大きい状況だ。子どもたちのヒーローであるガチャピンの歌唱がファンを楽しませているなら……と、人気アーティストが「歌ってみた」に参戦することに期待してしまう。



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