バイラルチャートの“課題”とBTSの不動ぶりーーBillboard「Social 50」チャート一時停止にあわせて振り返る

 昨年12月26日、米ビルボードがソーシャル・チャート「Social 50」を一時的に停止すると発表した。「Social 50」チャートは、2021年のできるだけ早い時期の復活を予定しているという。

 「Social 50」は音楽分析会社のネクスト・ビッグ・サウンドが追跡したデータに基づき、Facebook/Twitter/YouTube/Wikipediaで最も人気のあるアーティストをランク付けしたチャートだ。週ごとのフレンド/ファン/フォロワー追加数と、ページ・アクセス数、エンゲージメント数から算出されている。米ビルボードは一時停止の根本的な原因について言及していないが、チャート集計における「新しいデータパートナー」への移行が理由だとしている。ではなぜ、「新しいデータパートナー」への移行が必要になったのだろうか。

 現在「Social 50」首位のBTSは、チャートイン数が計219回、そして、2017年7月29日付のチャート以降3年以上1位をキープしている状態だ。「Social 50」チャート1位獲得数ランキングでは、1位がBTSの210週、2位がジャスティン・ビーバーの163週で、3位以降はテイラー・スウィフトが28週、マイリー・サイラスとリアーナが21週と一気に減少する。2016年の年末にBTSがビルボードの表彰式で「Top Social Artist」賞を受賞するまで、ジャスティンが6年連続でこの賞を受賞していたことも無視できない。さらに、記事執筆時点(12月28日)の「Social 50」のトップ3は、BTS、NCT、TRESUREと3組とも男性K-POPアーティストである。

 確かに、チャートは本来楽曲やアーティストの「人気」を示すためのものだ。そして、BTSやジャスティン・ビーバーに大勢の熱狂的なファンが付いていること、この数字が彼らの実力であることは確かなため、この結果が間違いだとはいえない。しかし、3年以上1位が変わらない音楽チャートというのは、楽曲やアーティストの“純粋な”かつ“瞬間の”注目度や音楽性などを示すものとはかけ離れてしまっているのも事実だ。「音楽チャートのランクインにここまでファンが介入してしまっていいのか」「もう少し音楽チャートとして業界に対する包括的な側面があるべきではないのか」ということも考えられる。このチャートが導入された2010年はまだ、SNSがここまでアーティストのマーケティング活動の核になるとは考えられていなかったのかもしれない。

 

 この発表をした米ビルボードのツイートに対し、BTSのファンの中でも熱心な人たちがコメント欄で「好きに停止してくれていいよ。どうせチャートが戻ってきたらまたBTSが1位を取るから」「何はともあれBTSは世界征服」(ともに英語ツイート)と、さらなるエンゲージメントの増加に向けて意気込んでいるが、これこそがビルボードが今回の一時停止で改変したい状況なのではないだろうか。

 「Social 50」のような「バイラルチャート」は、次世代の音楽チャートとして存在感も存在意義もあるだろう。ファンのエンゲージメントをきちんと数字で評価することは、アーティストにとっても重要な指標・目標になる。しかし、バイラルチャートがファンのエンゲージメントを必要以上に掻き立ててしまい、楽曲に対するリスナーの正確なリアクションを反映しにくくなっているのも事実だ。ファンが団結して行動しやすくなったいま、「バイラルチャート」は統計方法を考え直す必要に迫られているのかもしれない。

(画像はPixabayより)

参考文献
「Billboard to Temporarily Pause Social 50 Chart」
「BTS、米ビルボード・ソーシャル・チャートでの首位獲得数が200週に
「Social 50 Chart|Billboard」