『ダビスタ Switch』なぜ評価分かれる作品に? 解決できなかった伝統的課題とは
バランスの見直しで生まれた競走馬生産への没入感
上記のようなマイナスポイントがある一方で、『ダビスタ Switch』は、つい没頭してしまう面白さも内包している。“シンプルな遊びやすさ”と“リアルな馬主ライフ”を共存させている点だ。
『ダビスタ』シリーズは過去作から、破産によってゲームオーバーとなりやすい設計を持っていたが、その難易度は今作でよりシビアとなり、かつてからのファンもうなるものとなった。発売1週間以上が経った現在も、シリーズ経験者でも重賞馬を作り出すのにやっとという状況が続いており、その前時代的バランスの前に、プレイヤーの睡眠時間が次々捧げられている実態がある。同タイトルの定石となる配合理論を確立すべく、残りの資金とにらめっこしながら、毎夜試行錯誤を続けているプレイヤーも多くいるに違いない。カジュアルな印象と不釣り合いな、あまりにも本物志向すぎる難易度が、『ダビスタ Switch』の醍醐味と化しているのだ。
そのため、同タイトルの評価を巡っては、「ソフトとしての完成度」と「ゲームとしての面白さ」の2軸が同時に存在する事態が巻き起こっている。あるプレイヤーは、数ある欠点を理由に酷評するが、他方では、あるプレイヤーがその中毒性に夢中となり、称賛を贈っているというわけだ。
今後、直線での不利やロード時間、そのほか、本稿では触れなかった数あるバグについては、アップデートでフィックスされていくものと予想する。ひとりのシリーズファンとして、全プレイヤーが諸手を挙げて評価できるタイトルとなることを願うばかりだ。
■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro