『ダビスタ』新作が予感させる“競馬ゲーム”の復権 ファンに愛されてきた人気3シリーズを振り返る
Nintendo Switch専用ソフト『ダービースタリオン』の発売日が、2020年12月3日に決定した。
8月末に開発が発表され、続報が心待ちにされていた同タイトル。6年ぶりの最新作に胸を躍らせているファンは多いだろう。
本稿では、Nintendo Switch版『ダービースタリオン』の発売日決定を入り口に、競馬ゲームの歴史を彩ってきた人気シリーズを振り返る。同タイトル発売のその先に、競馬ゲームの再興はあるのだろうか。
競馬ゲームの金字塔『ダービースタリオン』シリーズとは
『ダービースタリオン』シリーズ(以下、シリーズ名として扱う場合は『ダビスタ』)は、サラブレッドのオーナーとなり、最強馬の育成を目指すシミュレーションゲームだ。1991年に発売された『ベスト競馬・ダービースタリオン』を第1作に、これまで10作以上がシリーズ作品としてリリースされている。今回発売となるNintendo Switch版『ダービースタリオン』は、2014年にニンテンドー3DSで発表された『ダービースタリオンGOLD』以来、6年ぶりの家庭用最新作となる。
『ダビスタ』では、2,000万円の資金と1頭の繁殖牝馬を持った状態からゲームがスタートする。限られた資金を元手に競走馬を生産し、国内の全G1レース(Jpn1を含む)と凱旋門賞を制覇すれば目標達成。晴れてエンディングを迎える設計だ(※1)。
しかし、同シリーズにおける本当の目標はエンディングを観ることではない。冒頭に書いた“最強馬の生産”を目指し、多くのプレイヤーがエンディング後もプレイを続けていく。ゲーム中には、生産・育成した競走馬同士を対戦させられる「ブリーダーズカップ」(※2)モードが用意されており、開催競馬場や距離といったレース条件を自由に設定しながら、その環境下でのNo.1を決められる。もちろん異なるプレイヤー間での対戦も可能で、これが『ダビスタ』における大きなやり込み要素となっている。
また同シリーズには、どれだけプレイを進めても、手に入れられる繁殖牝馬・種付けできる種牡馬が固定という特徴もある。そのため、(セリで同じ繁殖牝馬を手に入れられさえすれば)何度でも同じ配合を試すことが可能だ。これは、どのプレイヤーもゲームの進行状況に左右されることなく、同様の条件から生産をスタートできるということでもある。先に紹介した『ブリーダーズカップ』と合わせ、仲間内で楽しむことに特化した設計を持つのが『ダビスタ』なのだ。
※1…一部、異なったエンディング条件を持つシリーズ作品もある
※2…『ダービースタリオンGOLD』のみ完全に廃止され、『インターレース』モードに一本化されている
リアルなホースマン人生にこだわった『ウイニングポスト』シリーズ
一方、もうひとつの競走馬育成シミュレーションの王道が、『ウイニングポスト』シリーズだ。『ダビスタ』とほぼ同時期の1993年に、PCで第1作が発売となった同シリーズからは、これまで9つのナンバリングが発表されている。近年では、最新データに対応したアップグレード版が毎年リリースされており、リアルタイムの世代にとっては「競馬ゲーム=ウイニングポスト」といったイメージも強い。同シリーズが「競走馬育成シミュレーション」というジャンルを守ってこなければ、Nintendo Switch版『ダービースタリオン』の発売もなかったのではないだろうか。
『ウイニングポスト』は『ダビスタ』と違い、“流れる時間”に焦点を当てている。ゲームが進めば進むほど、人間関係や環境が構築され、プレイヤーのやれることが増えていく設計だ。それにともなって、種牡馬や繁殖牝馬の血統も、前の時代を受けたものへと書き換わっていく。ゲーム開始時は父世代だったディープインパクトが、年月を経るに連れ、父父世代、父父父世代と古い血になり、やがては血統表から消えていくのだ。そのため『ダビスタ』のように、何度も同じ配合を試すことはできない。対象の繁殖馬が引退してしまえばそれっきり。まさに一期一会だ。つまり『ウイニングポスト』は、よりリアリティのあるホースマン人生をシミュレートしたシリーズだと言える。これは、どちらが競馬ゲームとして優れているといった類の話ではない。シンプルなゲーム性を追求した『ダビスタ』とは異なる視点から「競走馬育成シミュレーション」を捉えたシリーズが、『ウイニングポスト』なのだ。