考察飛び交う『Project:;COLD』なぜ話題に? VTuber&ARGの視点から考える
「何気ない物事に違和感を覚え、ふと目をやると、そこには予想だにしない物語への落とし穴が口を開けて待っている」これはARG(Alternate Reality Game)と呼ばれるエンターテイメントのジャンルの手法だ。2001年に映画『A.I.』のプロモーションに活用されて話題に。以降、映画やゲームなどの世界観を参加者により深く伝える手段として利用されてきた。『Project:;COLD』の体験ギミックを担当するきださおりは『リアル脱出ゲーム』、謎解きを担当する眞形隆之は『マーダーミステリー』『アルティメット人狼』といったARGから発展した企画に携わっており、今回にもそのノウハウが生かされているといえる。(参考:5人の識者が語るARGの進化史と、ポスト真実の時代における“ゲームと物語のあり方” )
「アルティメット人狼」はもちろん、最近では「クトゥルフの呼び声」を筆頭にTRPGのプレイ配信も多くの視聴者を集めている。配信のチャット欄で探索者と共に謎を解き、ダイスの出目に一喜一憂し、グダグダな展開にツッコミを入れ、咄嗟のロールプレイに心を躍らせ、その興奮をSNSやDiscordなどに共有する。このような視聴スタイルは、長時間の配信が主な活動となったVTuberの視聴者にも当てはまる。そのような下地があったからこそ『Project:;COLD』の謎解きや推測がSNS上に溢れ、インターネットの話題となったのだろう。
このような形で多くの関心を集めた『Project:;COLD』だが、公式Twitterによればマネタイズのプランは今のところまったくないという。「単体でマネタイズすることが難しい」というARGの問題点を、『Project:;COLD』も同じく抱えている。SNSでリアルタイムに進行するという形式上、『Project:;COLD』は追い続けるのにとても苦労するエンターテイメントだ。同じ事件が長引けば、関心を集め続けることは難しい。であれば事件が解決したあとはどうなるのか。主人公が新たな事件に巻き込まれ続ける推理モノへ向けるような、いらぬ心配をしてしまう。登場人物たちの運命同様、『Project:;COLD』自体の今後の展開も融解班の行動が鍵を握っている、のかもしれない。
■ゆがみん
1990年生まれの地方在住。インターネットに青春時代を持っていかれた。VRとesportsが関心領域。最近はnoteを拠点に活動している。Twitter