山田裕貴演じる朝日の狙いとは? 『頼田朝日の方程式。』フライングで明かすドラマ本編のヒント 

山田裕貴が演じる『頼田朝日の方程式。』フライングで明かす本編のヒント 

 第2話で朝日が示した「友情=需要×供給」という方程式。「友情は人と人の需要と供給が重なったときにできる」と説く発言は、一見すると過激に見える。教師としては誰にも分け隔てなく接すべきで、友情は打算のない純粋なものとされる。一方で、嫌いな相手とは一緒にいたくないし、双方にメリットのある関係を望むのが現実。「どんなところにも需要と供給が成立する人がいる。それがその時必要な友だち」という朝日の考えは一概に間違いとは言えず、現実的な意見として賛同する人もいるだろう。

 朝日の授業は4Cを通して義経にも向けられている。義経の授業には「恋(人生-自分)=無様」や「賢いと思っている人×力=馬鹿」などの方程式が登場する。義経は、生徒たちの目を覚まさせるため、方程式を使って現実の問題を因数分解する。その結果、力や弓は自身の課題と向き合い、成長を遂げる。しかし、それは朝日にとって看過できない状況だ。朝日は、義経の方程式を打ち消すために新たに方程式を編み出す。

 『せんけす』第2話の「人生-友達=幸せ」。義経は方程式を通して、薙に「自分を捨ててまで必要な友達なんかいない」と訴える。前述した朝日の「友情=需要×供給」は、友情は需給関係でしかないと割り切る。友情に対する醒めた視線は共通しているが、前者が自分を大切にすることを強調しているのに対して、後者は友情をより即物的なものとして見ている。義経に4Cを切り崩されそうになった朝日は、協力体制を保つため、利害関係を「友情」として再定義しているのだ。同じ土俵で戦うのではなく、論点をずらして無効化すること。義経と朝日は、どこまでもわかりあえない関係なのかもしれない。

 生徒に「無様」や「馬鹿」という言葉を投げかける義経と朝日は似ている部分もある。決定的に違うのは教育に対するスタンスだ。義経の目的が生徒を立ち直らせるためである一方、朝日の目的は現実を見せつけることにある。そのために使えるものは何でも使うのが朝日の流儀。古今の偉人の言葉を引用しながら、言葉巧みに自説を補強する。トルストイ、デモクリトス、シェイクスピア……いずれも名言ぞろいだが、切り取り方が特徴的だ。「お金はばらまかないのであれば、肥やしと同じようなものだ」(フランシス・ベーコン)、「友人の成功を共感するには、素晴らしい人間性が必要」(オスカー・ワイルド)など、人間に対する洞察の中でも、皮肉の効いた部分を意図的にピックアップしているように見える。

 『せんけす』本編は「闇の義経、襲来編」に入った。立場が逆転した朝日が、次はどんな方程式を見せてくれるのか。超現実的なストーリー展開と合わせて注目だ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■ABEMA『頼田朝日の方程式。-最凶の授業-』 番組概要
第6話配信日時:2020年12月6日(日)深夜0時15分~
第5話配信URL:https://abema.tv/video/episode/87-388_s470_p205
※「ABEMAプレミアム」をご登録後、視聴可能。

『先生を消す方程式。』番組URL:https://abema.tv/video/title/87-388

 

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