「VRインタラクティブストーリーアクション」を実現した『ALTDEUS: Beyond Chronos』クリエイター陣の創意工夫

『アルトデウス:BC』制作陣インタビュー

 VRゲーム『ALTDEUS: Beyond Chronos(通称:アルトデウス: BC)』に迫る特集企画。第一回では本作の制作を手掛けるMyDearest代表取締役兼『アルトデウス: BC』総合プロデューサーの岸上健人氏に話を伺った。そして、第二回となる今回は制作・開発に携わるクリエイター陣に取材を実施。

 『アルトデウス: BC』の生みの親でありディレクターを務める柏倉晴樹氏、キャラクターアニメーションを担当したアニメーター兼演出の田村直彬氏、「マシンアクションパート」のインタラクション部分を担当したプログラマーの中地功貴氏の3名から本作の制作・開発について掘り下げてもらった。

 『アルトデウス: BC』が掲げる「VRインタラクティブストーリーアクション」とは何なのか、どのようなゲームデザインで「VRインタラクティブストーリーアクション」を実現しているのか話を聞くと、クリエイターとしての強いこだわりが見えてきた。(阿部裕華)

特集「国産VRゲームの最前線『ALTDEUS: Beyond Chronos-』誕生の軌跡」はこちら

「VRインタラクティブストーリーアクション」とは?

左から、柏倉晴樹氏、田村直彬氏、中地功貴氏。

ーーまず初めに「VRインタラクティブストーリーアクション」について聞かせてください。

柏倉晴樹(以下、柏倉):前作の『東京クロノス』はビジュアルノベルに近いストーリー要素重視のVRゲームでした。『アルトデウス: BC』は前作のストーリー要素に加え、インタラクション要素とバトル(アクション)要素があります。

 海外ではストーリーをインタラクティブに楽しむジャンルのゲームや映像作品が出ているものの、VRゲームでは競合するコンテンツがありません。なので、我々は「VRインタラクティブストーリーアクション」と名づけ、新しいジャンルとして打ち出しました。

『ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: BC)』PV02

ーー企画の段階から『アルトデウス: BC』を「インタラクティブストーリーアクション」と位置づけていたのでしょうか?

柏倉:企画の段階ではそこまで決めていませんでした。総合プロデューサーの岸上(健人)さんが『東京クロノス』の制作終盤あたりで新しい企画を求めていたため、試しに投げてみたのが「『東京クロノス』の世界でSFやメカを表現する」というもの。SFやメカが好きだから、とかなり自由な理由でした(笑)。

 あと、『東京クロノス』のテキスト表示がARみたいだと言われたことがあって。それを聞いて、VR世界の中でARの表現が可能なのではと思ったんです。”VR” “AR”それぞれを表現する作品はあるけど、"VRの中でAR"を表現した作品はない。VRゲームとして何を見せたらおもしろいかはずっと考えていたたので、『アルトデウス: BC』でそういった表現を取り入れられるのでは?というアイデアが生まれました。

柏倉晴樹氏

ーーVRが舞台装置となり、その中でARを表現するというのはおもしろい演出ですね。

柏倉:XR領域を分ける言葉として、VR・AR・MRなどの言葉がありますが、本来は同じ垣根ですよね。とはいえ、ARとMRは現実世界に非現実的な要素を透過させますが、VRは非現実的な世界の中にユーザーが入り込む。ということは、VRの世界だったらARを内包できるかもしれない、と思いついたんです。VRの世界は人がつくり上げるものなので、何をつくるにしてもコントロールができますからね。

『東京クロノス』以上の没入感を『アルトデウス: BC』で演出

ーー『アルトデウス: BC』と前作『東京クロノス』の違いについて教えてください。

柏倉:『アルトデウス: BC』ではセリフのバックログが見られないようになっています。プレイヤーは主人公のクロエになるので没入感を演出するためには、“読む”という要素を極力削りたかった。

 今回は地の文もないですし、ノベルやアドベンチャーから少し切り離したい思想がありました。それは僕がアニメ出身だからかもしません。アニメはバックログが見えるわけではないので。海外のレビューサイトにもテキスト表示すら必要ないと要望があったくらいでした。

中地功貴(以下、中地):海外のゲームもほとんどはフルボイスで字幕表示は多言語のときだけですしね。

柏倉:そうなんですよ。『アルトデウス: BC』も主人公のモノローグがメインになっているので、主人公のクロエ役を演じられた鬼頭明里さんのボイス量がハンパないです。無口なキャラクターの設定なのにセリフ数がかなり多いので、もはや無口なのか分からなくなるほど(笑)。

 バックログが見られない代わりに、条件付きで過去のシーンに戻れるジャンプ機能を追加しています。分岐の重要なシーンにのみ戻ることが可能なので、それを駆使してクリアまで目指していただければと思います。『東京クロノス』より『アルトデウス: BC』の方が最後まで辿り着くのが難しいので。

田村直彬(以下、田村):『東京クロノス』はストーリー上の分岐が片手で数えるくらいでしたけど、『アルトデウス: BC』はかなり多いですからね。

柏倉:今回は細かい分岐が増えています。バトル中(マシンアクションパート)も選択を強いられるんですよ。ただの分岐ではなく、プレイヤーの取った行動でストーリーも結末も見られるシーンも変わります。ストーリーの遊びごたえがかなりあるので、一つの分岐を何度も遊んでしまう人がいるかもしれません。

中地功貴氏

ーー『アルトデウス: BC』からは、手が使えるようになっていますよね。

中地:前作はコントローラーでカーソルを操作するだけでしたが、『アルトデウス: BC』はコントローラーは使うものの対象物を手で触ったり持ったりする動作が可能になり、インタラクションがかなり増やせましたよね。

柏倉:VR空間内での細かい手の動きは中地さんに調整して頂いています。

中地:物を掴む動作では掴む瞬間に自然と手が物を握り込むようにするとか、セリフのテキスト送りをするときは手が勝手に動かないようにするとか。状況に合わせて自然な手の位置や形に切り替えていく工夫をしています。

 また、「マシンアクションパート」では、プレイヤーがマキア(戦闘マシン)を操作していると感じてもらうことが重要です。操縦ボタンを押したときの画面上の反応を自然な流れにする、コントローラーを軽く振動させるなど細かく調整しました。

ーーマキアの操縦時に何回か「TOUCH」ボタンが表示されますが、押している感覚がしっかりあって「自分がマキアを操縦しているんだ!」という気持ちになりました。

田村:最初、「マシンアクションパート」を作成していて、あまりマシンに乗っている感覚がないという問題がありました。巨大なモノを扱う場合、何かしらのフィードバックがないと乗っている感覚を得られないんですよ。

 ただ、「画面を揺らすこと」でマシンが動いているのを表現するとすぐに酔ってしまう。なので、「コントローラーを振動させること」でマシンが動いているのを表現しました。例えば、マキアの腕が動いた際、歩いた際に振動を入れたり、被弾した際には強め・長めに振動を入れたり。マキアの挙動によって振動の差分をつけつつ、振動が違和感にならない主張し過ぎない塩梅で。そういった振動の調整は僕の方で行っていました。



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