セカオワ、BTS、RADWIMPS……『オオカミ』シリーズを彩る楽曲の特徴と変遷を辿る

 10代をはじめ20代女性を中心に絶大な人気を誇る、ABEMAの恋愛リアリティショー『オオカミ』シリーズ。

 真実の恋を探す男女の等身大の姿を追いつつ、メンバーの中にいる「好きでもないのに好きなフリをする嘘つき“オオカミ”」をめぐる心理戦を含んだ恋愛模様が展開する。シリーズによって『オオカミちゃん(女性)』か『オオカミくん(男性)』かは異なり、最新シリーズでは、“オオカミくん”が最低1人以上紛れ込んでいる、というものだ。

 そんな『オオカミ』シリーズでは、『太陽とオオカミくんには騙されない♥』から、2020年10月現在放送中の『オオカミくんには騙されない』まで、主題歌・挿入歌に決まったアーティストの曲が使用されてきた。使用された曲はその後、LINE MUSICなどの音楽ストリーミングサービスで急上昇リスト入りするなど、実際の人気上昇にもつながっている。そんな主題歌・挿入歌が、『オオカミ』シリーズの物語でどのような役割を果たすのか、シリーズごとに考察していきたい。

 まず、第4弾『太陽とオオカミくんには騙されない♥』では、SEKAI NO OWARIの「YOKOHAMA blues」が使用された。『オオカミ』シリーズでは基本的に、物語のラスト手前で音楽が使われることが多いが、本作では「揺れ動き出す恋」のシーンでの使用が多く見られた。

 印象的だったのは、第1話。メンバーが思い思いに話したい人とツーショットをし、会話が弾みお互い笑顔を見せ合うシーンで楽曲が使われる。横浜の海と夜景をバックに、ここから9人の恋が動き出していくのが感じられる演出となっている。その後、太陽LINEでのデートや、想いを寄せる相手との楽しかった思い出やキュンとした場面を思い返す回想シーン、すれ違っていたがお互いに想いを伝え合うシーン、視聴者による“オオカミくん投票”にて脱落メンバー決定後の最後のデートなど、切ない場面ももちろんあるが、「揺れ動き続ける恋心」にフォーカスされているように感じる。

 「YOKOHAMA blues」は、大人の恋愛を感じさせるメロディと別れを想像させるような切ない歌詞であるが、本作で使用されている「YOKOHAMA blues」は、舞台を横浜に合わせ、「恋の移ろい」のようなものを表現していたようにも感じた。

 アトリエで絵が完成したシーンや、恋が上手くいっているようなシーンでは、同アーティストSEKAI NO OWARIの「Dragon Night」や「眠り姫」と、シーンによって曲が使い分けられている。

 第5弾、『白雪とオオカミくんには騙されない♥』では、Aimerの「コイワズライ」が使用された。本作では、曲が物語と上手くマッチしており、1話1話の動画タイトルに、歌詞の一部分が使われている。

 さなりに想いを寄せるが、すずやmihoroの様子を伺うだけでなかなか積極的に動けないあいりや、こうすけに好意を寄せるも、“オオカミくん”だという疑いをかけてしまったり、まるとの進展がどうなっているか聞けないあやの、上手くいっていたはずなのに、突然まるに素っ気なく接してしまうえいとなど、恋に不器用なメンバーの様子が映し出されながら、曲が流れるシーンが多く見られた。本作は特にメンバーの想いが交差し、複雑に入り組んでおり、恋の寂しさや切なさにフォーカスされており、「寂しい恋こそ 切ない恋こそ 大事な物になるんだよ」という歌詞にピッタリと当てはまる。

 “オオカミくん投票”によるさなりの脱落後、あいりとの最後のデート前半では、Aimerの「六等星の夜」という、消えてしまうさなりを想うあいりの気持ちとリンクした曲や、デート後半では「いつまでも結ばれていたい、離れたくない」という願いとリンクしたAimerの「蝶々結び」が使われた。同作はより、寂しさや切なさに焦点が当たっている印象だ。

 『白雪とオオカミくんには騙されない♥』はさなりとあいりの切ない恋の行方に涙した、という声をよく聞いたが、その苦しさ、切なさを増幅させた「コイワズライ」の影響も少なくないだろう。

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