接触確認アプリは本当に有用なのか? 立ちはだかる差別助長やプライバシー問題の壁

接触確認アプリは本当に有用なのか?

 そして、接触確認アプリがもたらす弊害として最も危惧されているのが、マイノリティへの差別助長ツールへの発展の可能性である。マイノリティへの差別をめぐる問題については、接触確認アプリに限らず、顔認識システムやドローンの活用に際しても、たびたび槍玉にあがっている。濃厚接触に関する通知を受け取り、陽性患者を推定すると、陽性患者およびその家族への心理的拒否反応から差別感情が増幅される。もし陽性患者がマイノリティであることが判明した場合、そのマイノリティが属する集団を対象とした大規模排斥へと繋がる恐れがある。

 さらに、接触確認アプリに立ちはだかるのがプライバシーの問題だ。世界有数のIT企業を抱えるカリフォルニア州において接触確認アプリの開発が進まない背景には、プライバシーの問題での解決策がいまだ見出されない現状があるのは言うまでもない。感染症個人のプライバシー保護に関する嘆願書を2度提出しているが、いずれもカリフォルニア州上院歳出委員会により却下されている。GoogleやAppleは無償で協力するとの旨を示している。ただ、お金の問題ではない。無料で提供することを引き換えに、プライバシー面での対策が蔑ろとなり、個人情報の漏洩リスクへと繋がることを恐れているのだ。

 接触確認アプリは、60パーセント以上のユーザーが関与してこそ、効力を発揮することができる。接触確認アプリを無用の長物に終わらせないためにも、プライバシー面での対応が急務と言える。

■大澤法子
翻訳者、ライター。AI、eスポーツ、シビックテックを中心に動向を追っている。

〈Source〉
https://www.eff.org/deeplinks/2020/09/covid-19-tracking-technology-will-not-save-us

 

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