新型コロナ禍で話題の伝染病ゲーム『Plague.Inc.』 “シミュレーションゲームとしての面白さ”を解説

 緊急事態宣言も解除され、日本国内では一旦その勢いを落としている新型コロナウイルス。しかし、まだまだ迂闊な外出はできない。

 うんざりする自宅待機のお供に、ゲームを楽しむ人も増えているが、新型コロナウイルスの拡大に際し、注目を集めてきたのが“感染”を題材にしたシミュレーションゲーム『Plague.Inc. -伝染病株式会社-(以下Plague.Inc)』だ。

 開発元の『Ndemic Creations』は、「現実世界の深刻な問題をセンセーショナルなものとして扱うのではなく、リアルで有益なゲームになるよう設計した」としつつ、「科学的なモデルではなく、あくまでゲーム」だとして、現実と混同せず、新型コロナウイルスの拡大に際しては、保健機関から直接情報を取得することを推奨する声明を発表していた(参考:https://www.ndemiccreations.com/en/news/172-statement-on-the-current-coronavirus-outbreak)。

 「ウイルスを操り、感染を拡大させ、人類を滅亡させる」という本タイトルのクリア条件は、現在の状況からすると不謹慎に思われるかもしれないが、ゲームはゲーム。本稿ではあくまでシミュレーションゲームとしての出来のよさ、面白さにフォーカスして、その内容を解説したい。

たった1人に感染したウイルスから、人類を滅亡させる

 ゲームスタートと同時に表示される世界地図。プレイヤーはまず世界地図から好きな土地をタップして、「伝染病がはじめに発生する地域」を選ぶことになる。たとえば日本を選べば、日本に自らが操作することになる伝染病の感染者第1号が発生する。そして間もなく第一感染者が感染を拡大させ、徐々に感染者を増やしていく(ちなみに日本は衛生的な医療先進国として設定されており、初心者のスタート地点には向かない)。

 『Plague.Inc』では現実のウイルスと同様に、同じ大陸にいる人間はもちろん、船や飛行機による人の行き来によって伝染病が広まっていく。日本のような島国を選ぶと序盤はなかなか海外に感染が広がらないが、しばらく待っていれば、やがて他大陸にも感染者が発生する。

 そして、プレイ中に手に入るDNAポイントを使い伝染病をより強力なものに変異させていくと、感染スピードはより速くなり、現実の時間でものの十分程度で一千万人、一億人がウイルスの保持者となる。

 ゲームの勝利条件はシンプルで、ウイルスが全人類に感染し、かつ全人類がウイルスによって死亡すればクリア。逆にウイルスの治療方法が見つかったり、全人類にウイルスが感染しきる前に感染者全員が死亡して、人類を滅亡に追い込めなければゲームオーバーとなる。

指数関数的に増える感染者数には”気持ちよさ”すら覚える

 本作はパラメータの数や操作が必要なポイントの少ない作品で、シミュレーションゲームに慣れていないプレイヤーでも気軽に遊ぶことができる。

 プレイヤーがゲーム中に能動的に行なう操作は、時折マップ上に現れるDNAバブルをタップしてウイルスを変異させるためのポイントを得る行為と、得たポイントを使ってウイルスをどのように変異させるかを選ぶ行為ぐらいのもの。

 マップに表示される感染者数と死亡者数を見ながら、どうすればより多くの国に、多くの人間に感染を広げられるのかを考えて適正な方向にウイルスの変異を進めなければ、人類はウイルスを研究したり、渡航を制限したりして、感染を収束させてしまう。人類の勝利を喜びたいところだが、あえなくゲームオーバーだ。


 できること自体はそこまで多くないが、あえてウイルスの致死率を低くした状態で感染を広げ、ウイルスのキャリアを大量に増やしてから変異で一気にウイルスの致死性を上げたり、といった戦略的な変異の操作が求められるので、考えることは決して少なくない。無症状のうちに感染を拡大させる、という戦略が有効であり、こうした部分には現実の感染症の恐ろしさも感じるところだ。

 考えた戦略がうまくハマり、すさまじいスピードで増えていく感染者カウンターを眺めるのは、不謹慎ながら、単純にプレイフィールとしては快感と言うほかなく、その数字の増え方にはかのブラウザゲーム『クッキークリッカー』にも通じるものさえある。

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