すべての「かつて17歳だった人」へ 性のリアル描くドラマ『17.3』は、なぜ大人も“学べる”のか

 ABEMAが新たに画期的な取り組みを開始した。オリジナルドラマ『17.3 about sex』は、17歳の女子高生を主人公にリアルな恋愛事情・性事情が描かれる。と言うと、少し突っ込んだ内容の学園恋愛モノかと思われるかもしれないが、全く違う。ここで描かれるのは多様な性自認や恋愛指向についてだ。

 緊急避妊薬(アフターピル)のオンライン診療処方の導入を検討する会議で、医療の専門家から「若い女性は知識がない」「若い女性が悪用するかもしれない」というような全く筋違いの意見が飛び出すような日本において、本作が取り組もうとすることの意義は非常に大きい(参考:https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/658912/)。

 アラサーの筆者が中高生時代にこんな作品があったら良かったのにと忖度なく思える良質コンテンツだ。真摯に女子高生の性事情を扱いながらも、今っぽさから程遠く説教じみていて、かつ生殖の仕組みにばかりフォーカスする保健体育の教材とは全く異なる。きちんとこの作品には、悩める高校生の血が通っており、戸惑いや涙、焦燥感やコンプレックス、自己否定、幸福感などの日常が全て詰まっている。

 また、本作によって救われるのは何も年頃の女子中高生やその親世代だけではない。大多数の人が持つ考えや指向性を疑うことなく刷り込まれてきた人たち、あるいはその枠組みに息苦しさを感じている人たち、様々な今を生きる人にとっての救いが散りばめられている。

 それこそ本作のタイトルは、17歳と3ヶ月という世界的な“初体験の平均年齢”を意味しているが、恋愛やセックスという超個人的でプライベートな事象を平均に縛られて捉えなければいけないことほど窮屈なことはない。「恋愛してこそ人生が潤う」「好きな人に触れられることこそ幸せ」といった類の考えは、元々人間の本能的な欲求だと思われがちなところがあるが、これらは決して誰しもに当てはまる事象ではないのだ。

 第1話では、彼氏に初体験を迫られ、彼のことは好きだけれど、だからと言って男性主導で、男性の欲望を満たすだけの行為には疑問を感じ拒否する主人公の様子が描かれていた。また、第2話では「アセクシュアル」についても取り上げられている。他人に対して恋愛感情や性的欲求を抱くことがない人を指す。彼らは、何気ない日常的な恋バナや、世の中でいまだ持て囃されている恋愛至上主義的な風潮によって人知れず傷つけられてしまうこともあるのだろう。

 刷り込まれた“当たり前”があるということは、それが規範や基準となり、そこから少しでも外れてしまうことを必要以上に忌み嫌ってしまったり恐怖を感じたりすることにも繋がりかねない。「こうでなければならない」「こうあるべきだ」「こうしてはいけない」「こんな風に思ってしまう自分はおかしいのかもしれない」ーーそれは時として人格否定、偏見や軽蔑にも飛躍しかねない。

 潔癖で厳しくて、ラブシーンが映ったらすぐにテレビのチャンネルも変えてしまうような厳格な母親にも性欲があることを娘が受け入れていく第4話は、娘側だけでなく保護者側も特に必見の回ではないだろうか。

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