ソーシャルディスタンスが変えた創作のスタンダード:宮本道人×松永伸司が語り合う(前編)

「ディスタンス・アート」対談(前編)

日常をカジュアルに映像化する行為

松永:Zoomの普及による環境の変化として、誰かとのコミュニケーションをカジュアルに録画したり録音したりできるようになったこともあげられますね。これまでにもやろうと思えばできたことだけど、日常の会話の中で急にスマホを取り出して録音するなんて自然な行為ではありませんよね。それが誰でも手軽にできる環境になったことで、日常をカジュアルにコンテンツ化しやすくなったんじゃないでしょうか。

宮本:確かに何気ない会話をただ配信するだけみたいな、垂れ流し系コンテンツは圧倒的に増えましたね。それと、「Study with Me」とか「Get Ready with Me」のような配信はコロナ禍以前からありましたが、そのようにリスナーの日常の一コマに並走するタイプのコンテンツもさらに人気を増している気がします。 

 Zoom等のツールを用いて相手に自分の写真を撮ってもらう「リモートグラフィ」なんてものもありますね。あと、カメラの向こう側にいる美容師にアドバイスをもらいながら共同作業で自分の髪を切るなんて文化も生まれていたり。そういうレッスンとアートがひとつながりになった潮流も、コロナ禍の状況で加速しているようです。

松永:ある意味ですべてが映像というメディアに一元化されているのも大きな特徴なんでしょうね。現実空間が使えなくなったおかげでライブもつねに映像を経由することになっていますが、結果として、どこからどこまでがライブで、どこからどこまでがレコーディングなのかの見分けが原理的につかなくなっている。ライブという従来の文化に映像が持つ潜在的な欺瞞性がシームレスに結びつくことによって、これまでになかった表現が可能になっている面もあるんじゃないかと思います。

後編へ続く】

(画像=Pexelsより)

■Ritsuko Kawai / 河合律子
ライター・ジャーナリスト。カナダで青春時代を過ごし、現地の大学で応用数学を専攻。帰国後は塾講師やホステスなど様々な職業を経て、ゲームメディアの編集者を経験。その後、独立して業界やジャンルを問わずフリーランスとして活動。趣味は料理とPCゲーム。ストラテジーゲームとコーヒーが大好き。Twitter

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