『ラブライブ! スクスタ』ライブ演出で施した“現実と架空の表現を組み合わせた演出”の効率化と負荷低減
効率化・負荷軽減を目的としてオリジナルトラックを開発
『スクスタ』のライブ演出で使用しているUnityの標準トラックは、Activation Track、Animation Track、Control Trackの3点。Control Track以外のトラックでは、シーン上の特定のゲームオブジェクトに対してクリップを追加して制御を行っていく。例えばシーン上に配置されたスポットライトの動きを制御する場合は、スポットライトのゲームオブジェクトをトラックで設定し、アニメーションクリップを追加している。
ある程度Unityの標準トラックでも作ることができた一方、全てをアニメーションファイルだけの制御にしてしまうと、結局アニメーションファイルが大量にできてしまい、制作コストが高くなるという問題があった。また色味などを決め打ちすることになり、ゲームならではの条件をつけることも難しい。それらを解決するためにタイムラインを拡張し、『スクスタ』用のオリジナルトラックを開発することにした。
オリジナルトラックの開発では、ライブ演出をする際の細かい数値を設定できる専用のシェーダーを用意し、これらのパラメーターを直接タイムラインから設定できるようにした。これはアニメーションファイルを使わなくても、タイムライン上に直感的に効率よく制作することを目的としている。
また『ラブライブ!』にはメンバーそれぞれにイメージカラーというものがあるため、ライブ編成情報や楽曲の店舗情報を取得して演出に反映させるトラックも開発。これにより、ユーザーが編成したメンバーのカラーに合わせてライブ演出を変化させることで、より一体感が増し、実際のライブのような没入感のある表現が可能になった。
なおオリジナルトラックは、標準機能では使っていない不必要な機能を削っており、負荷軽減の対策にもなっている。『スクスタ』には演出を制作することに特化したオリジナルトラックが20個ほどあり、これらのトラックと標準トラックを組み合わせることで効率よく多くの表現をすることを可能にした。
先述のアニメーションファイルを使うと、マテリアルなどの項目を1つ1つアニメーションキーで制御する必要があり、数が増えると大変になる問題。こちらもオリジナルトラックが負荷軽減の役に立った。これらの項目をまとめたトラックにすることで簡単に制御することができ、視覚的にも分かりやすく、効率よく進めることが可能となっている。
■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「激変!アニメーション環境 平成30年史+1」(著書)など。
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