“フォートナイトの乱”の戦火は世界各地に飛び火 争点は「市場」の定義か?

 人気バトルロイヤルゲーム『フォートナイト』を開発するEpic Gamesが独占禁止法違反をめぐってAppleを訴えた”フォートナイトの乱”は、訴訟が行われているアメリカだけではなく、世界各国から注目を集めている。App Storeに対して法的措置の実行を検討している国もある。

ロシアとドイツで呼応した動き

 ロイター通信は2日、ロシアの下院(国家院)にApp StoreとGoogle Playのプラットフォーム使用料の上限を引き下げる法案が提出されたことを報じた。法案はFedot Tumusov議員によって提出されたのだが、その内容はふたつのアプリストアのプラットフォーム使用料を現在の30%から20%を上限にするように引き下げる、というものだ。

 以上の法案提出に関しては、Tumusov議員は自身のSNSに「手数料を下げてユーザーに製品を提供することは、IT開発者にとって成長のチャンス」と書いている。

 既報の通り、先日ロシアではAppleが独占禁止法に違反していると認定されたのだが、今回の法案の提出は、フォートナイトの乱を意識したものと見られる。

 また同じくロイター通信は2日、ドイツにおける市場独占を監視する政府機関である連邦カルテル庁がApp Storeのプラットフォーム使用料に関して調査を進めていることを報じた

 連邦カルテル庁のAndreas Mund長官は、フォートナイトの乱に関して「間違いなく私たちの興味を引いた」と述べ、この訴訟の行方を注視している姿勢を明らかにしている。同長官はApp StoreとGoogle Playについて「世界中でふたつしかない興味深い生息地」とも表現し、このふたつのアプリストアが世界のモバイルアプリ市場を寡占しているという認識を示唆した。

過去にもあった抗議

 実のところ、Appleはフォートナイトの乱以前にも独占禁止法違反の疑いで訴えられている。アメリカの大手経済メディアであるダウ・ジョーンズが運営する『MarketWatch』は3日、そんな訴訟事例を紹介する記事を公開した。

 イスラエル出身のVolach兄弟が立ち上げたアプリ開発企業Blix.Incは、2018年、同社が開発したメールアプリBlueMailにセキュリティを強化する機能を追加した。メールアドレスによるログインが求められた場合、使い捨てのメールアドレスを生成するという機能だ。この機能を使えば、個人情報を提供せずにログインすることが可能となる。

 2019年6月、Appleは開発者会議WWDC 2019においてBlueMailのセキュリティ強化機能と同様に動作する「Sign in With Apple(Appleでサインイン)」を発表した。この発表後、BlueMailはMac App Storeから削除されたのだ。

 以上の削除措置は、Volach兄弟にはAppleによる露骨な競合アプリ潰しにしか見えなかった。そこで、WWDC2019の数か月後、同兄弟は特許侵害と独占禁止法違反の疑いでAppleを訴えたのだ。

 Appleによる競合アプリの排除は、BlueMailの事例に留まらない。例えば、かつてApp Storeには懐中電灯アプリが多数あった。しかし、iPhoneに懐中電灯機能が標準実装されてからは、そうしたアプリは排除されていった。

 BlueMailの訴訟に関してMaeketWatchがAppleの広報担当者に問い合わせたところ、同アプリを削除したのは「セキュリティ上の懸念」のため、という回答が得られた。そして、同アプリがストアに復帰できるようにBlix社と協力しており、アプリ開発者には「公正で平等な競争の場」を提供している、とも述べた。

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