スヌープ・ドッグにツッコミながら遊ぶのが最良! ゲーマー・ラッパー視点から見た『Rap Empire』の面白さ

スヌープ手がける『Rap Empire』の面白さ

 ゲームをある程度すすめると、新しいレーベルを立ち上げることが出来るようになります。レーベルを立ち上げることでゲーム進行がリセットてしまいますが、その代わり強力なバフがつく「物件」を購入できるようになるため、惜しまずに定期的にレーベルを立ち上げてリセットしていくことが、攻略の基本になっています。クリッカー系のゲームでリセットはおなじみの要素ですが、(当たり前のことですが)実際の音楽活動ではレーベルを立ち上げたからといって、持ってる楽器がゼロになってしまうということは起こりません。

 ゲームは基本的に楽器を購入し、コンサートを行い、レーベルを立ち上げるという3つを永久に繰り返しながら進行していきます。正直なところヒップホップ要素の極めて薄い単なるクリッカーなのですが、コンサート成功回数に応じて節目節目でスヌープ・ドッグによるありがたいヒップホップ小話を聞けるパートが入ります。申し訳程度の要素ですが、会話内容はそれなりに興味深いため、彼のファンであればある程度は楽しめるかと思います。

 ヒップホップ感も宅録感も薄く、量産的に作られた印象も受ける本作ですが、肝心のクリッカーゲームとしてはそれなりに面白い内容だと思います。クルー(仲間)を増やすことでバフがかかったり、安い楽器もレベルを上げていくとコンサートで役立ったりなど、クリッカーゲームで退屈になりがちな点に改善が見られるのは良い点です。また、課金アイテムを全く用いずともなんの問題もなく進めるゲームバランスになっていて(「課金する人はいるのか?」と思えるほどです)、同ジャンルのファンであれば、なんだかんだ数時間ぐらいは暇せずにプレイできてしまいます。ただし広告閲覧によるブーストはかなり有用なものなので、サクサク進めたい場合はかなりのペースで広告動画を見させられることになります。選択式ですから。広告動画を見ないこともできるためある程度良心的ですが、広告によるマネタイズが目的のゲームではあると思います。

 ヒップホップファンや自宅録音経験者的なリアリティは皆無なので、ツッコみながら遊ぶのが正しいでしょう。コンサート場面でラップが流れるわけでもないため、なんだったら主人公がラッパーであるということを時折忘れてしまいそうになります。西海岸っぽい雰囲気を持ってはいるけれど絶妙にチャチなBGMもあって、ゲーム全体にB級感が漂う出来になっています。とはいえ先述の通りスヌープ・ドッグの面白い絵が沢山入っていますし、ときどき声がついていたりもするので、彼のファンならニヤリとできる部分も多いでしょう。

 ゲームを進めていけば、ちょっと信じられないような天文学的な金を稼ぐことも可能になる本作。ちょっと暇がある方、想像力が豊かな方、自分だけのラップ帝国を築き上げたいかたは、無料ですのでツッコみながら遊んでみるのがいいと思います! 余談ですが、筆者が本作プレイ中に流れてきた広告の中に「現金をもらえるゲーム」という非常に怪しいものがあり「こういう広告が流れてくるところはサグくてヒップホップっぽい」という嫌な納得感がありました。プレイされる方は重々お気をつけください!

■文章書く彦
ビデオゲームを専門とし主にインターネット上に生息するフリーライター。コンソールでの大作ゲームやSteam上にある海外ゲームなどが専門。「ワニウエイブ」名義ではラッパー/トラックメイカーとしても知られ、同人ゲームのサウンドトラックに楽曲を提供するなど多岐に渡るジャンルで節操なく活動している。 Twitter:@waniwave

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる