台湾が激化するテック戦争の新たな火種に? 半導体開発市場は米中関係の狭間で揺れる

台湾、テック戦争の新たな火種に?

 しかし、この動きが中国の反感を買うことは必至だ。台湾国内では、「TSMC」が数十億ドルの投資をしている南京と上海の製造工場を、中国が報復として国有化するのではないかという懸念が見られるという。しかし、コンサルティング会社「ユーラシア・グループ」のグローバル技術政策責任者ポール・トリオロ氏は、これを否定。同氏は、「買収の可能性はほとんどない。本業界にとって大きな打撃となる上、買収による中国側のメリットが明確でないからだ」と述べている。

 可能性があるとするならば、中国が本土に高度な半導体チップの製造工場を建設するよう「TSMC」に働きかけることだという。現在南京と上海の工場で製造されるチップは、それほど高度なものではないそう。同社の最先端チップの工場は台湾にあり、アリゾナは台湾国外で最初の高度な半導体チップの製造工場となる。トリオロ氏は「中国が、アリゾナと同じ技術レベルの工場建設を主張する可能性がある」と語った。

 長年にわたり、台湾は技術的ノウハウを中国と共有してきた。多くの台湾人エンジニアが中国本土へと渡り、中国国内の半導体事業の発展を支援しているという。しかし、多額の費用を投じているにも関わらず、同事業は依然として中国の技術的ボトルネックとなっている。トリオロ氏によれば、中国最大の半導体メーカー「セミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル(SMIC)」は、インテル、サムスン、「TSMC」から3〜5年の技術的遅れをとっているという。

 3社が7nmのチップの製造に成功し、次に5nm、最終的には3nmの開発に勤しんでいるのに対し、「SMIC」は現在10nmのチップを製造している。さらに、7nmのチップを製造するにはオランダの半導体製造装置メーカー「ASML」が設計した「極端紫外(EUV)リソグラフィ機」が必要となるが、米国がオランダに対し、「ASML」による「SMIC」へのEUV装置の輸出をやめるよう圧力をかけるという問題も抱えている。

 米国との関係悪化を受け、決して順調とは言えない中国の半導体事業において、今後ますます「TSMC」の動向、そして同社とのパートナーシップに注目が集まるだろう。

(画像=Pexelsより)

■堀口佐知
ガジェット初心者のWebライター兼イラストレーター(自称)。女性向けソーシャルゲームや男性声優関連の記事を多く執筆している。

〈Source〉
https://edition.cnn.com/2020/07/31/tech/tsmc-intel-semiconductors-hnk-intl/index.html
https://www.cnbc.com/2020/07/27/tsmc-shares-jump-as-intel-faces-next-generation-chip-delays.html
https://www.forbes.com/sites/russellflannery/2020/07/27/intel-dives-tsmc-soars-whats-next-in-tech-tumult/#135bf49e619a

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