虚構が現実を侵食するーー1930年代カートゥーンの悪夢描くゲーム『Bendy and the Ink Machine』をアニメーション史から紐解く
職場に残されたボイスログからは、スタジオのオーナーが何らかの“儀式”にのめり込んでいたことが語られる。それを裏付けるように部屋の奥で発見されるのは、磔にされ、胸骨をさらけ出したベンディの仲間キャラクターだ。「DREAMS COME TRUE」を標語にフィクションを届けていたスタジオが、だんだん”夢想を現実に”もたらす妄執に傾倒していたことが明かされてくる。この予感が頂点に達した第1章の最後、「ベンディ」はまさに“現実になって”プレイヤーの前に現れるのだ。
「アニメーション」という言葉はもともとラテン語の「アニマ(魂、生気)」に由来する。命がないはずの静止画に生命を吹き込み、動く絵画に仕立て上げるアニメーションはまさしく「夢と魔法」、あるいは「狂気と呪術」と紙一重の手管だ。本作のSteamページでは、「あなたはもう、二度と同じ目でカートゥーンを見ることはできない」と謳われる。まさしく『Bendy and the Ink Machine』は、アニメーションというテクノロジーの胡乱さを再確認するホラー作品なのである。
■Yuki Kurosawa
フリーライター。ゲーム系の記事を中心に執筆している。海外のインディー作品をよく好む。何度も死んで覚えるゲームが得意(一手先が読めないため)。
Twitter:@Yki_Krosawa
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