ストリーミング時代のファンによる金銭支援の意味ーーSpotify募金機能「Artist Fundraising Pick」から考える

Spotify募金機能の意義を考える

 また、Spotifyの募金機能でユニークなのは、アーティストが自身のためだけでなく、他の支援を必要とする人々のために寄付を募ることができる点だ。例えば、募金機能と提携しているGoFundMeやPaypalを使ってアーティスト以外にそのスタッフ、慈善団体のための募金を求めることができる。現在は、アーティスト支援という名目で作品の購入やストリーミングがファンによって呼びかけられることも少なくないが、ファンがアーティストを支える裏方を直接支援するシステムやプロジェクトは少ない。こういった業界の裏方にもスポットライトがあたる施策は、ここ最近までに関連サービスを通して、裏方支援も行なってきたSpotifyならではのものと言えるだろう。

 4月に公開された『The New York Times』のインタビュー記事では、アメリカ国内においてはカンファレンスやコンサート、スポーツイベントなどの大型イベントが復活するのは2021年の秋になるという見通しが語られており、エンタメ業界におけるライブイベントビジネスの苦境はさらに長期化する可能性がある。これに関してはコロナ禍の収束状況やそれに応じて発表されるであろうイベント開催のガイドラインによって、多少の状況の変化もあるとは思うが、このような見通しがある限り、アーティストやレーベルなど音楽業界の経済的な苦境もまたしばらくは続くはずだ。

 もちろん、どの業界でも新型コロナウイルス禍の影響を受けていることは言うまでもないが、早い段階でダイレクトに影響を受けたアーティストたちにとっては、ファンからの募金という形の経済的な支援が持続的な活動を支える有効な手段のひとつになることは間違いないだろう。

 Spotifyにとって、ファンによる直接的な金銭支援を行なえるサービスは、初めての取り組みとのことだが、これはアーティストの持続的な活動を支えるという点で考えれば、事態の収束後も求められる機能ではないだろうか。それだけに今後は、その継続にも注目が集まりそうだ。

■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69

〈Source〉
https://www.fujitv-view.jp/article/post-93529/
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/87357
https://daily.bandcamp.com/features/update-on-fridays-campaign-to-support-artists-during-the-covid-19-pandemic
https://www.nytimes.com/2020/04/10/magazine/coronavirus-economy-debate.html

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