ストリーミング時代のファンによる金銭支援の意味ーーSpotify募金機能「Artist Fundraising Pick」から考える

ストリーミング時代のファンによる金銭支援の意味ーーSpotify募金機能「Artist Fundraising Pick」から考える

 Spotifyが4月22日に、かねてから予告していたアーティストのための募金機能「Artist Fundraising Pick」を追加した。

 この機能は今年3月、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた音楽業界を支援するためにMusiCares、PRS Foundation、Help Musiciansと提携、最大1000万ドル規模の大規模な募金の呼びかけ、新型コロナ関連情報の提供をプラットフォーム内でユーザーに発信する「COVID-19 Music Relief Project」についての発表時に予告されていたものだ。

 「Artist Fundraising Pick」では、Cash App、GoFundMe、PayPal.meといった送金サービスとの提携が行われており、支援が必要なアーティストは「Spotify for Artists」のダッシュボードから、Fundraising Pickを提出することで専用のバナーを自分のプロフィールに追加できる仕組みになっている。このファンからの金銭的な直接支援として募金を受けられるサービスは、先述の送金サービスを利用することができる。

 現在、音楽プラットフォームは、Spotify以外にもアーティストや音楽レーベルを経済的に支援するための取り組みを多数行なっているが、ファンからの直接的なアーティスト個人への募金という点では、Spotifyに先駆けてSoundCloudが類似のサービスを採用したことが記憶に新しい。

 音楽・エンタメ業界は新型コロナ禍により、すでに莫大な損失を被っており、4月18日に放送されたニッポン放送の特別番組「いま、音楽にできること」では日本のスポーツとエンターテインメント業界合わせて3300億円の損失が出ていることが語られている。また日本よりも早くロックダウンが行われ、それが長期化している海外では、ライブ業界専門メディアのPollstarがチケット販売だけで89億ドル(約9600億円)の損失が生じるとの試算を示されており、近年、アーティストたちの主要な収益源となっていたライブ収入が現在のような状況で大きく落ち込み、苦境に立たされているのは火を見るより明らかだ。

 そうなってくるとアーティストが収入を確保するには音源、マーチャンダイズの販売、そして、ストリーミングからの収益に頼らざるを得ないわけだが、販売はさておき、ストリーミングからの収益は各種プラットフォームにより多少の単価の差はあれど、それなりの再生回数を確保する必要がある。そのため、誰もがすぐに手堅く収益を得るということは現状、困難だという課題を抱えている。

 その意味で、このような課題を解決するための糸口になるのが、今回のSpotifyによるアーティストへの募金機能だろう。3月に音楽販売プラットフォームのbandcampが1日限定で行なったアーティスト還元キャンペーンでは、音源とグッズの総売上が430万ドル(約4億7645万円)に達したことが報告されている。これもストリミーング収益同様にアーティストの人気がモノをいう部分と無関係ではないが、販売価格のうち、通常差し引かれる手数料も経済的な危機に陥っているアーティストに還元されるという、ファンからのサポートを促進させる背景があったことから、このような成功を収めたことは明らかだ。

 では、なぜファンはストリーミングで聴けるかもしれない音源をわざわざ購入したのだろうか?(bandcampのキャンペーン時にはこのプラットフォームで販売するための特別な秘蔵音源も数多くリリースされてたことは一旦置いておく)。それは一重にアーティストが経済的な課題を解決することで活動を継続できることを知っているからだ。自分が好きなアーティストが経済的にも安定すれば、継続的に作品が発表されるため、ファンのサポートは回り回ってファンに還元されるという図式が成り立つ。そういった関係性が改めて可視化されたのが、新型コロナ禍中の現在なのではないだろうか。

 ビジネスという観点でいえば、bandcampのキャンペーンは、商品を売ることで対価として金銭が支払われる。それが売り手の利益になるため、言ってみれば、ストレートな商売である。しかし、今のような状況においては、それは理想ではあるものの、寄付という形での支援は経済的にも即効性があると同時にファンが未来のアーティスト作品に望みを繋げるという意味で大きな意味を持つ。これは音源を販売しないストリーミングサービスだからこそ、このシステムを採用する意味があったのかもしれない。

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