バーチャルアーティスト・somuniaに訊く、創作活動の源泉と“音楽をやり続ける意味”

バーチャルアーティスト・somuniaに訊く、創作活動の源泉と“音楽をやり続ける意味”

「本を読んだような、映画を見たような感覚になるように書いています」

ーー音楽をやるという使命感から、作詞を始めたきっかけはなんだったんですか?

somunia:言いたいことがあったから……です。夢を見た時に感じたことを、自分の中で消化し切れないから形にした感じです。音楽をやっていく上で、どうせなら自分の持っている言葉で歌いたいなって。もちろん誰かに作詞してもらうこともあるんですけど、作曲ができない自分が、歌に対してどう表現をつけるかと考えた時に、「声と言葉」だなって。そこだけは頑張ろうと思って始めました。

ーー作詞をする上でのこだわりはありますか?

somunia:1曲ごとにちゃんと短編小説があるんです。それこそ、夢って一本のドラマというか、映画を観たのと同じじゃないですか。それを歌詞にしているような感覚です。例えば「summer leap」だったら、夏がループするっていう1つの物語のテーマ曲というか、主題歌のようなものになっています。物語とセットになるように、曲を最初から最後まで聴いた時に本を読んだような、映画を観たような感覚になるように書いています。

ーー先にテーマが決まっていた場合はどう書くんですか?

somunia:まさに「fable in sleep」がそうですね。これまでの作品は、こういう夢を見たからそれについての歌詞を書きたいっていうのが強かったんですが、「fable in sleep」からは、どっちかというと、トラックメイカーさんとコミュニケーションを取りながら書いています。トラックメーカーさんと「こういうテーマの曲を作りたいです」「じゃあこういう曲はどうですか」「こういう曲調ならこういう歌詞に変えていこう」みたいな作り方に方向がガラッと変わったんです。見た夢を歌詞にするのではなくて、自分が作った物語みたいなものを最初に作って、デモ音源をいただいてから、さらに頭に浮かんだ物語を曲にする、みたいなスタイルになりました。

ーー全体のテーマっていうのは、作詞する際にどこかで書き出したりするんですか? 頭の中で作り上げた短編小説の中から言葉を選んだり?

somunia:文章にしなくても単語みたいなものは記録しているんですけど、例えば「人魚姫」とか単純な言葉たちを頭の中に集めておいて、そこでいただいたデモ音源を聴いて補完していくみたいな感じです。その時に物語の芯がぶれないように心がけて組み立てています。例えば「backword」という曲は、“タイムマシンに乗って過去に行く”という物語の主軸があって、その上で“主人公はどういう感情を持ちながら旅をして行くんだろう”と頭の中で物語を再生して膨らませながら作詞しています。

ーー今まで作詞してきた中で特に印象的な歌詞や言葉はありますか?

somunia:必ずどの曲にもここはよく書けたなっていうキラーワードがあって、特に「Connected World」は、歌詞全体通してすごくよく書けたなと思っています。1番と2番で主観が変わる構成になっていて、1番は<眠れない夜にイヤホンをつけて君の元に行く>という人間側の視点で書いています。そして2番は<あなたのことを見てたんだよ>と、インターネット側の視点で書いていて。あと、「各駅停車」もよく書けたなって思っています。みんなからも「この歌詞好き」って言われることが1番多いです。

各駅停車 - somunia

ーー個人的には「放課後のダンスフロア」がすごく刺さります。あの短いフレーズで絶対自分の人生では体験できないような淡い青春がつまっていて……。

somunia:「放課後のダンスフロア」はそもそも言葉数が少なくて。デモをもらった時に、このメロディラインに何をどうはめ込もうと悩んで、本当よく書きたい内容を落とし込めたなと、今でも思います。少ない言葉でより抽象的に伝わるように。具体的に言えばもちろん伝わるんですけど、具体性を省いた時にどうやって相手に情景を浮かべてもらうかっていうのを1番クリアできた曲ですね。

放課後のダンスフロア - somunia

ーー活動を続けていく中で、言葉選びの変化はありましたか?

somunia:今までは自分で全部やらなきゃっていう意識が強かったんですが、割と人に相談するようになりました。トラックメーカーさんに「こういうフレーズで悩んでいて、こういう響きはどうですか?」とか、とにかく相談をするようになりました。

ーーsomuniaさん自身が、インターネットを使いこなせてきたという意味合いもあるんですかね。

somunia:そうですね。以前よりも人と交流するようになりました。今までは1人ぼっちで、友達もいませんし、ただパソコンを開けば人がたくさんいるっていう状況から、エルセちゃんやぽきさん、ヤカさんとか、音楽をやっている人たちと交流するようになってきて。今までは正直尖っていた部分があって、自分にはこういうやり方しかないって思ってたのが、こういう考え方もあるんだって、どんどん丸くなっていって、柔軟になりました。

ーー作詞家さんの詞と、自分が書いた詞では、歌う時に違いがありますか?

somunia:例えば「twinkle night feat. somunia」や「夏を待ちわびて feat. somunia」は、他の方の作詞なんですけど、知らない単語がたくさん出てきて驚きました。一通り理解をしてからじゃないと歌えないと思っていて、知らない単語が出る度にインターネットで調べました。歌っている時は、「somuniaだけどsomuniaじゃない」、アニメでいうところの配役を演じているみたいな気持ちで歌うのが大きな違いですね。「twinkle night」は、nyankoさん自身も言っているんですけど、一見意味がよく分からない歌詞が多くて、響きがいい言葉を集めた曲らしくて。私は作詞をする時に、どっちかというと歌詞を文章として捉えているんですが、彼らは音というか響きで選んだりしていて。特に衝撃的だったのが、ヤカさんが「曲を聴いていても歌詞が入ってこない」、「歌詞を音だと思って聴いてしまう」と言っていた時は、文化の違いを感じました(笑)。

twinkle night feat. somunia - nyankobrq & yaca

ーー今後、人から作詞をしてもらうことは増えていくんですか?

somunia:そうですね。今までは1人で作ることのこだわりが良くも悪くも強かったんですけど、こうやっていろんな人と触れ合うことで、自分に出せない言葉ってあるんだって気づくことができたので、今後は作詞してもらうことも増えていくんじゃないかと思っています。特にラップの歌詞とかまだまだ勉強不足で。「夏を待ちわびて」がそうですね。自分でラップの歌詞は書けないし、韻とかわからない、っていう相談をして書いてもらった節があるので、適材適所じゃないですけど、「この曲はこの人に書いてもらったほうがいいな」、「トラックメーカーさん本人に書いてもらったほうがいいな」って思う曲は柔軟にやっていけたらいいなと思っています。

ーー逆に人に歌詞を届けることはあるんですか?

somunia:それは自信がなくて……(笑)。自分で歌えば自分で責任が持てますけど、相手に歌ってもらうのは、また違った責任感があるなってすごく思ってしまいます。歌詞提供の依頼は今までなかったわけじゃないんですけど、なるべくお断りしていました。ただ、すごく関係性が深くて、人となりがお互い分かっている人だったらあるのかもしれないですね。例えば、エルセとさめのぽきやMarprilだったり仲のいい人たちだったら。

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