〈Ninja Tune〉による音楽アプリ『Jamm Pro』はなぜ”究極の電子楽器”なのか? 操作性と機能から考察

〈Ninja Tune〉による音楽アプリの凄さ

 古くからの音楽ファンにとっては、創始者であるJonathan MoreとMatt Blackによるユニット・Coldcutなどでよく知られているエレクトロニックミュージックの名門レーベル〈Ninja Tune〉。

 1990年に設立された同レーベルは当時からこれまでにかけて先鋭的な作品を多数リリースしており、最近では日本でも人気が高い韓国人アーティスト・Peggy Gouの「It Makes You Forget (Itgehane)」が世界的にヒットしたことで新たに若い世代からの注目を集めたことは記憶に新しい。

 そんな〈Ninja Tune〉が今年2月、開発に25年もの月日を費やしたという“究極の電子楽器”、iPad向け音楽アプリ『Jamm Pro』をリリースした。

Jamm Pro

 先述のMatt Blackが設計を手掛けた『Jamm Pro』は、以前、〈Ninja Tune〉がリリースしていたアプリ『Ninja Jamm』を発展させたような印象を受ける。

 『Ninja Jamm』は、レーベル所属アーティストの音源をユーザーがリミックスして遊びことをテーマにしたアプリで、ビート、ベース、シンセ、SEなどの4トラックで構成。それぞれのトラックにユーザーが好みのパターンを直感的にインポートし、楽曲を再構築していくものになっていたが、今回の『Jamm Pro』は簡単にいえば、『Ninja Jamm』の機能を踏襲しつつ、今度はリミックスではなくユーザーがオリジナル曲を制作できるものになっているのが特徴だ。

 『Jamm Pro』自体は、4チャンネル+マスターのシーケンス部と6つのモジュレーション、スライス、ピッチ/リバース/ドリル、ゲートの計9つのシーケンサーによるモジュレーション部の2つを軸に構成されており、最大64パッチ・2304シークエンスのパターン構築が可能。また『Ninja Jamm』同様にNinja Tuneが提供するサウンドパックを使用することができるため、ユーザーが音楽制作初心者でもサンプルループを組み合わせることで音楽制作、ライブパフォーマンスが可能だ。

 そんな『Jamm Pro』だが、なぜNinja Tuneはこのアプリを“究極の電子楽器”と位置付けたのだろうか?  その理由として考えられるのがまず、iPadならではの指による演奏的な操作だ。

 『Jamm Pro』は、iPad用アプリのため、DAWとは違い、基本的に指先でスクリーンをタッチすることで操作していくことが前提だ。例えばサンプルループの切り替えや一度に複数のエフェクト処理なども指先で行うのだが、それらの操作はわずかな指の動きにも反応するようになっていることから、指先で触れる操作を楽器を弾くイメージと重ねているように思える。またサンプルループでいえば、切り替え時に瞬時にテンポ、キーが同期するため、演奏時の発想を直感的に反映させられるこのような仕組みは楽器演奏のような即興性を感じる。

 そして、搭載されている機能のThe Coldcutterモジュールによるフレーズ変化も電子楽器の演奏に通じる部分だ。この機能はバッファーシャッフルとモジュレーションマトリックスを使用してサンプルループのフレーズに変化を加えるというものなのだが、これはモジュラーシンセのような即興的なフレーズ変化、演奏に通じる部分になっている。

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