音楽制作の”感覚的な操作と個性的な音作り”を学べる、Ableton『Learning Synths』のスゴさ

音楽制作の”感覚的な操作と個性的な音作り”を学べる、Ableton『Learning Synths』のスゴさ

 人気DAWソフトを開発販売するAbletonが、インタラクティヴにシンセについて学べるコンテンツ『Learning Synths』を公開した。同コンテンツは元々、昨年英語版が公開されており、一部の音楽クリエイターの間ではその存在が知られていたが、今回公開されたのはその日本語版だ。

 『Learning Synths』は、無料で利用できるウェブアプリでPC、スマホどちらでもアクセス可。アプリ内では、指示に従って所定の操作をしていくことで、実際にオシレーター、フィルター、エンベロープ、LFOなどシンセの主たる構成要素を操作していく仕組みになっている。

 この部分に関しては、指でスクリーンをタッチしながら操作するためだろうか、PC版に比べてスマホ版の方がよりインタラクティブに操作しているような気分にさせてくれるが、普段からDAWソフトに慣れ親しんでいる人は、PC版のほうが普段の制作環境に近い感覚でアプリを楽しめるかもしれない。また、ブラウザがChromeの場合に限り、MIDIコントローラーにもアプリが対応する、というのもなかなか面白い仕様だ。

 さて、最初に簡単に『Learning Synths』の基本情報に触れてみたが、このアプリが斬新かつ利便性を持つ点をまず1つ挙げるとすれば、無料で使用できるということだろう。

 無料という点でいえば、Abletonは過去にも音楽制作の基礎について学べる『Learning Music』というウェブアプリを過去に公開しているが、今回の『Learning Synths』は平たくいえばそれの“シンセの基礎を学べる版”。『Learning Music』はDAWを使用しての音楽制作の基本となるビートの打ち込みからコード、スケールの基礎知識をアプリ内で座学的に学び、それをブラウザ上にあるシーケンサーに打ち込んでいくことで学びと実践をインタラクティヴに行えるという点がウリであり、何よりそれだけの情報量をもったコンテンツが無料で公開されたことが斬新だった。

 そして、その学べる知識はAbleton製品に特化したものでなく、他社製品ユーザーでも応用できる、まさに”音楽制作”の基礎知識を学ぶためのものだったという点も、斬新かつ利便性を感じたし、『Learning Synths』もまたしかり。同じように今度は無料で”シンセ”の基礎を学び、実践できる仕組み、かつ、そこで得た知識は、例えばAbletonの内蔵シンセでもサードパーティのシンセでもハードウエアでも応用可能、という極めて汎用性が高いもので、そこにこのアプリの利便性がある。

 操作性の面でいっても、基本的にブラウザ上にあるモノラルシンセを、丸いポイントやスライダーで動かすというだけで、ややこしさは一切なし。これはまだDAWを触ったことがない初心者からしても単純明快にできる仕様だといえる。加えて、各項目の説明にも工夫が見られることにも注目したい。例えば、”シンセから音が鳴る仕組み”を説明する項目では、音が鳴る仕組みをキャッチーなイラストとともに、ハチの羽ばたき音で表現している。

 シンセから音が鳴る仕組みを解説しろといわれれば、DAW含む音楽制作をかじった人間からしても、なかなか難解なものだ。オシレーター、フィルター、エンベロープ、LFO。このような基本要素だけとっても、完全に理解しているという人はそんなには多くないはずだろう。ましてや初心者ならなおさらだ。そういった難解なものを先述のようなキャッチなーイメージに置き換えながら解説し、実際に音を鳴らして確認することは感覚的な理解につながる。このような試みがそこかしこに見られるのも『Learning Synths』の特徴だ。

 また、先述の”感覚的”というのは、Abletonが販売するDAWソフト『Live』をはじめ、近年の音楽制作機材のほとんどが掲げる”直感的に操作する”というテーマに通じる部分だ。現代の音楽機材は仮に音楽理論や制作に関する知識がなくともユーザーの”直感”を音楽制作環境に反映させることを重要視しているだけに、細かな知識がなくとも感覚的に機材を触っていれば、なんとなく音楽らしきものは作れてしまう、という利便性がある。そこには機材に触れることで音楽の作り方を覚えるという感覚的な学びがあるのだが、その経験から生まれる学びの部分を『Learning Synths』は教則アプリとして踏襲していることが最大の特徴だ。

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