『恋ステ』は映画『君の名は。』から構想を得た AbemaTV恋リア制作責任者鼎談【前編】

『今日好き』は“合コン”から“修学旅行”にテーマチェンジ

ーーまずは、それぞれの恋リアの制作に至るまでの経緯を教えてください。

杉山未帆(以下、杉山):AbemaTVで最初に制作された恋愛リアリティーショーが、『オオカミくんには騙されない♥』でした。開局当初、男性視聴者が多く、年齢層もいまの視聴者層より高かったため、10代の女性をターゲットにした企画を作りたいねというところから始まりました。その年代の女の子たちが、一番興味があることってなんだろう? と考えたとき、“恋愛”じゃないかと。そのキーワードから、恋愛リアリティーショーに絞って様々な案を出し合う中で、 “男の子の中に本気の恋をしない嘘つきオオカミくんが一人以上いる”というルールがある番組『オオカミ』シリーズを作ることになったんです。

杉山未帆氏

ーーそうなんですね。“嘘つきがいる”という設定は人狼ゲームを彷彿とさせます。

杉山:人狼ゲームを意識したわけではないのですが、人狼ゲームと似た面白さもあるなとは考えていました。ほかにも、当時少女漫画を原作にした映画が流行っていたので、少女漫画のようなキラキラとした世界観なども味わえるようにしたいよねという話をしていました。

ーー確かに『オオカミ』シリーズはゲーム性がありつつ、憧れも詰め込まれていますよね。

若村菜摘(以下、若村):『恋ステ』は、『オオカミくんには騙されない♥』がヒットしたことを受け、「続く恋リアを生み出していこう」というところから始まりました。当時『君の名は。』(2016年)が社会現象を巻き起こした直後だったので、実はそこからヒントを得ています。同作のストーリーや文脈を読んだとき、“会うはずのない二人の交換生活”や“制限がかかる状況の中で生み出されるもの”がヒットの法則なんじゃないか、と。そこから、限定された“週末だけ会える交換生活”がルールの『恋する♥週末ホームステイ』という企画が生まれました。

若村菜摘氏

ーーエッセンスが『君の名は。』は、まさかでした。

若村:『オオカミ』シリーズや『今日好き』などほかの恋リアは、“キラキラした憧れの世界”といった感じが強いと思うのですが、『恋ステ』は誰もが「こんな青春をしたかった」「こんな青春だったな」と思ってもらえるような身近な青春感を大切にしています。ほかの番組との差別化も考えて、親近感を意識していますね。

ーーなるほど。非現実の中にある現実感という意味でも『君の名は。』っぽいですね。

翁長朝弥(以下、翁長):『今日好き』も、『恋ステ』と前提は一緒です。ただ、『君の名は。』みたいなコンセプトはなくて。「AbemaTV」では開局当初、 “合コン生中継”のような番組も放送していました。そういう経緯もあったので、実は最初『今日好き』は、タイトルが『高校生合コン・ドキドキドキュメント 今日、好きになりました』だったんですよね。

翁長朝弥氏

若村:だから、タイトルが『今日好き』だったんですね(笑)。

翁長:はい(笑)。でも、第1弾を放送してみて、合コンという言葉は高校生との相性がよくないなとなり、“修学旅行”をベースに置き換えて、1泊2日や2泊3日の旅をパッケージにし、高校生の恋愛を描いていこうと始まりました。

ーー高校生は勢いがありますもんね。『今日好き』はハワイ編から継続制度が導入されました。どのような意図があるのでしょうか?

翁長:『今日好き』は、1泊2日ないし2泊3日で完結してしまうので、展開される恋愛模様以上に出演者に興味があって見てくださっている視聴者が多く、番組そのものファンがあまり固定されないというのが課題でした。そこで、ファンになってもらうことをコンセプトに、『あいのり』や『テラスハウス』のように、メンバーをある程度残していこうと、今年の4月からリニューアルしました。

ーー出演者はどのような基準で選ばれているのでしょうか?

若村:それぞれの番組のカラーを意識して、視聴者が一番憧れるであろうメンバーを選出させていただいています。『恋ステ』に関しては、ビジュアルはもちろんなのですが、それ以上にキャラクター性を重視しています。会う回数は6日間ですが、全体の撮影期間としては全16日間と比較的長めなので、味のある人材を求めていますね。高校生ならではの甘酸っぱい言動にプラスαで何か個性を出したり、その子自身を掘り下げたときにすごく良い表情をしたり、そういった可能性が期待できるかを見ています。あと、ほかの恋リアよりもコミカルな要素が強いのが『恋ステ』の魅力だと思うので、面白みがある子や、地方が舞台になるので、学校の中で一番かっこ良い/可愛い、クラスで一番モテるというような、“手の届く憧れ”を基準にキャスティングしています。

ーーキャラクターは、オーディションである程度わかるものなのでしょうか?

若村:決めるまでの過程でたくさんお話させていただいています。実際にその地方に足を運んで、ご本人だけでなく親御さんともお会いして、決めさせていただいています。あと、必ず一発芸をしてもらいますね(笑)。

杉山:私も以前『恋ステ』を担当していたのですが、オーディション参加者の中でたとえば歌が得意な子がいたら、その場で歌ってもらいます。筋肉が自慢という子であれば、実際に見せてもらったり腕立て伏せをしてもらったり(笑)、とにかく特技を目の前で披露してもらいます。

若村:そこで躊躇せずにできるか、度胸も大事ですよね。

ーーだから『恋ステ』は、番組内でも自己紹介を兼ねて特技を披露するシーンがあるんですね。

若村:そうなんです。“キャラクター推し”をすることで、出演者の人間性に興味を持ってもらって、視聴者にはファンになっていただきたいんです。だから、あえてちょっとぶっ飛んだことをしてもらっています。

杉山:『オオカミ』シリーズは、10代20代の憧れかつ個性豊かに、がポイントですね。

ーー毎回、モデルや歌手、スポーツ選手、インフルエンサーなど幅広いジャンルのメンバーが集まっていますよね。バランスとかも意識しているのでしょうか?

杉山:全体のバランスはもちろん意識していますが、固執するほどの縛りはないですね。

翁長:最初に『オオカミくんには騙されない♥』の案が出たとき、ぺこさんとりゅうちぇるさんのような、モデルやタレント同士が付き合う姿を追ったら面白いんじゃないかという意見があったんですよ。彼らのような若い世代のカリスマたちの恋愛模様をリアリティーショーにして、一種の流行を生み出したい、と。

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